【解説】プレミアリーグが導入を目指す『支出上限』とは? 投票結果・反対票を投じたクラブはどこ?

Dom Farrell

山下晴輝 Haruki Yamashita

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イングランドサッカーのプレミアリーグは、2025-2026年シーズンから適用される新たな財務規定の一部として、支出上限の導入に関する投票を実施した。

『The Athletic』が報じたところによると、支出上限は放映権料+商業的契約からの収入が最も低いクラブの金額を基準としてその数倍に設定される。昨年の構想の段階では4.5倍となっていたその倍数だが、各クラブからの反応が良くなかったため5倍に変更されるという。

『The Times』によると、4月29日(月)にロンドンのチャーチルホテルで行われた株主総会において、16クラブがこの提案に賛成票を投じたようだ。マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、アストン・ビラは反対、チェルシーは棄権している。

この提案は、7月に行われるプレミアリーグの年次総会で新たな人件費規定と共に最終決定される予定。なおこれらの新たな規定は、現行の『収益性と持続可能性に関する規則』(Profit and Sustainability Rules。以下PSR)に取って代わるものである。

プレミアリーグの支出上限:各クラブはいくらまで使える?

直近で終了したシーズンを例にとると、昨季サウサンプトンが得た収入1億360万ポンド(約197億円/1ポンド=190円換算。以下同)が基準となり、もしこの提案が承認されれば支出上限はその5倍の5億1800万ポンド(約984億円)となる。

2022-2023年シーズンでは、給与、償却移籍金、代理人手数料など合わせて5億3900万ポンド(約1024億円)を支出したチェルシーのみがこれを超過している。次に多かったのはマンチェスター・シティの5億100万ポンド(約952億円)で、もし仮に倍数を4.5倍とする場合でもチェルシーとシティの2チームのみが上限を超過したことになる計算だ。

UEFA(欧州サッカー連盟)主催の大会に出場するクラブは、これに加えてUEFAの財務規定も遵守する必要がある。現時点ではチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、ヨーロッパカンファレンスリーグに出場するチームは、収入の90%以上を人件費に使うことができない。またプレミアリーグの新規定が適用される2025-2026年シーズンには、この割合は70%まで低下する予定だ。

4月初旬、プレミアリーグのクラブは新たな人件費管理規定を全会一致で承認した。これが年次総会で採択されればUEFAの規定と足並みが揃い、UEFA主催の大会に出場するクラブは収入の70%、それ以外のクラブは収入の85%までの範囲で人件費を賄うことになる。

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マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、アストン・ビラはなぜ支出上限に反対しているのか?

マンチェスターの2チームがこの制度に反対する明白な理由は、彼らが最も多くの収入を得る2チームだからである。プレミアリーグ内の競争力の欠如に対する懸念の一方で、最も強力なクラブを規制することはリーグの世界的地位に悪影響を及ぼすという主張もある。

しかし伝統的なビッグ6(※)の半数を含む大多数のクラブがこの提案を圧倒的に支持しているということは、この論理がマンチェスターの外ではいかに薄っぺらく見えるかを示しているかもしれない。

※プレミアリーグの6大クラブとして知られるアーセナル、トッテナム、リバプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシーのこと。

近年で最高のシーズンを謳歌中の野心的なクラブであるアストン・ビラは、最も予想外の反対派である。しかしながら、もしウナイ・エメリがアストン・ビラをチャンピオンズリーグに導いた場合、アーセナル、マンチェスター・シティ、リバプールといったトップ3よりはるかに少ない収入で上述のUEFAの規定に従わなければならなくなる。これに厳しい支出上限という効果的な制度を加えれば、支出力が収入に事実上縛られる制約のもとさらなる成長の可能性が制限されるという結論に至ったのかもしれない。

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プレミアリーグの『収益性と持続可能性に関する規則』(PSR)とは?

今回のプレミアリーグの投票は、現行の『収益性と持続可能性に関する規則』(PSR)に支配された今シーズンを背景に行われた。エバートンとノッティンガム・フォレストはそれぞれPSR違反で勝ち点剥奪処分を受けている。

最も簡潔に言えば、PSRは、各クラブ3シーズンを通して1億500万ポンド(約200億円)、1シーズンで3500万ポンド(約67億円)までの損失を許容するというものだ。

これは、融資の代わりに株式を買い増すなど、9000万ポンド(約171億円)をオーナーからの確実な資金調達で賄うという条件付きで、このような保証がない場合の3年間の損失許容額は1500万ポンド(約29億円)となる。

これらの計算には、ユース育成やインフラ事業など免除対象の支出は含まれない。さらに、2019-2020年シーズンと2020-2021年シーズンは新型コロナウイルスの流行に大きく影響されたため、プレミアリーグはパンデミックに起因する損失を帳消しにする措置をとった。

PSRはクラブに重い説明責任を課したが、同時にシーズン最後の試合が終わった後でも降格の可能性があるという混乱をもたらした。プレミアリーグの各クラブが今回の財務規定の改正に賛成した背景には、競争力に対する懸念と共に、より単純で明確な制度を求める願望があるのだ。

原文:Premier League spending cap: New 'anchoring' rules, which clubs voted against salary and transfer limits explained
翻訳:山下晴輝(スポーティングニュース日本版)

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Dom is the senior content producer for Sporting News UK. He previously worked as fan brands editor for Manchester City at Reach Plc. Prior to that, he built more than a decade of experience in the sports journalism industry, primarily for the Stats Perform and Press Association news agencies. Dom has covered major football events on location, including the entirety of Euro 2016 and the 2018 World Cup in Paris and St Petersburg respectively, along with numerous high-profile Premier League, Champions League and England international matches. Cricket and boxing are his other major sporting passions and he has covered the likes of Anthony Joshua, Tyson Fury, Wladimir Klitschko, Gennadiy Golovkin and Vasyl Lomachenko live from ringside.

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スポーティングニュース日本版アシスタントエディター