ナイキのパリ五輪用女子米国代表陸上ユニフォームに非難の声…なぜ選手や関係者から批判されているのか

Edward Sutelan

石山修二 Shuji Ishiyama

ナイキのパリ五輪用女子米国代表陸上ユニフォームに非難の声…なぜ選手や関係者から批判されているのか image

ナイキ社にまたしても、逆風が吹き付けている。

今シーズンのMLBのユニフォームをめぐる騒動に続き、今度は2024年のパリ・オリンピックでアメリカ代表の女子陸上選手たちが着用する予定のユニフォームが批判の的となっているのだ。

[AD] Amazonで陸上グッズをチェック!

米三大ネットワークのCBSが報じたのは陸上、バスケットボール、サッカー、スケートボードでアメリカ代表選手たちが着用するユニフォームで、ナイキ・スポーツ・リサーチ・ラボが手掛けたこれらのユニフォームはアスリートのデータに基づいてデザインされているという。

「(今回のユニフォームが)アパレルとして革新的なのは、アスリートから得られるインサイトとデータを元に、これまでなし得なかったレベルの特異性、忠実性、そして正確性を実現していることです」と、ナイキ社のアパレル・イノベーション部門でバイスプレジデントを務めるジャネット・ニコル氏はCBSスポーツの取材に答えている。

アスリートに完璧にフィットするユニフォームを制作するため、ナイキはボディスキャニングとモーションキャプチャーを活用したと報じられている。また、陸上競技用のユニフォームに関しては大会に出場する選手専用で用意、生地には躍動する選手の姿を現したデジタルプリントを施している。

しかしながら、機能面に関しては科学的に最適なデザインを施したかもしれないユニフォームが、違った観点から批判に晒されることとなった。というのも、女子陸上選手用のユニフォームの露出度が高すぎるのではないかと、アメリカのアスリートを筆頭に問題視されているのだ。

[AD] 年間プランが断然オトク! DAZNスタンダードでスポーツをもっと楽しもう

ナイキによる女子米国代表の陸上ユニフォームの問題点は?

ランニング関連のニュースを報じる『Citius Mag』がそのInstagramのアカウントに新しいユニフォームの写真を投稿したところ、即座にコメントが集まってきた。その中には、批判的なファンだけではなく、実際にそのユニフォームを着用するかもしれない選手たちからの意見も含まれていた。

多くの人が指摘したのは、ユニフォームの下半身部分が不具合を起こすのではないかということだ。

「私の『ワー』が飛び出しちゃう」と、走り幅跳びのタラ・デイビス=ウッドホールはコメントしている。

オリンピック候補のハードル選手、ブリトン・ウィルソンは、ユニフォームに使われているフォント(書体)について聞かれると、不人気で知られる『コミック・サンズ』にそっくりだとコメントした。

ハードル/短距離の元オリンピック選手、クイーン・ハリソン・クレイ氏は、冗談ながらに(しかし鋭く)このユニフォームを着る選手たちの広告契約の可能性を示唆した。

「@europeanwax (米脱毛サロン大手チェーン)さん、来るべきオリンピックでチームUSAをスポンサーしませんか? お願いします」とコメントを書き込んでいる。

そして、ランニングコーチのキャサリン・ウーステンフェルド氏、アリソン・ステイプルズ氏の2人もまた、このユニフォームの露出度について批判している。

ステイプルズ氏は「動かないマネキンに着せた状態ですら陰唇が出てしまうなら、動いたらどうなってしまうのか」と、ウーステンフェルド氏は「誰もこのユニフォームについて、女性の意見を聞かなかったのだろうか?」とコメントしている。

[AD] 年間プランが断然オトク! DAZNスタンダードでスポーツをもっと楽しもう

ナイキの競合他社もSNSで非難の流れに便乗? 元陸上選手も批判

コメントを残しているのは選手、コーチだけでない。ナイキの競合にあたるアンダーアーマー社はこの騒動を認識していると意図するためか、「コメントを見にきました」と書き込んだ。女性向けのランニング用アパレルを展開する『Oiselle』社は「男子選手用のユニフォームをデザインした後で生地が足りなくなったのか…」とコメントしている。

5000メートルで2度の全米王者に輝いているローレン・フレッシュマン氏は、このユニフォームに対する不満の長文を投稿した。WNBA(女子バスケット)やNWSL(女子サッカー)ではこうしたユニフォームは支持されないはずであり、ダブルスタンダードだと指摘し、アスリートはユニフォームの不具合に不安を感じたり、自分の体のデリケートな部分が露出することを心配するべきではないとしている。

さらに「もし本当にパフォーマンスにプラスなのであれば、男子選手も着用するのではないか」と付け加え、ナイキ社、チームUSA、全米陸上競技連盟に再考を訴えかけている。

「これは、陸上選手向けの優れたユニフォームとは言えないものです。男性社会の力関係によって生み出されたコスチュームで、もはや女子スポーツに注目を集めるために歓迎されるものでもなければ、必要なものでもない。私自身はクイアだし、女性の身体に魅力を感じます。それでも、女子・男子を問わず、自分の仕事場で自意識と葛藤しなくてはならない状況に置かれたアスリートを見たくはないですし、それが楽しいとも思いません。それはアスリートに求められるものではないからです」

「自分の選手経験から言わせてもらうとすれば、自意識から解き放たれ、自由になって、動作と本能のみを形にできたときに素晴らしいパフォーマンスが生まれるもの。人口の半分を占める人たちの状況をわざわざ難しくしないでください」

パリ五輪は2024年7月26日、フランスのパリで開幕する。

※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集:石山修二

本サイトに掲載されているリンクから商品の購入やサービスの契約をされた場合、本サイトが収益を得ることがあります。

Edward Sutelan

Edward Sutelan Photo

Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.

石山修二 Shuji Ishiyama

石山修二 Shuji Ishiyama Photo

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター