2024年シーズンまで、メジャーリーグのユニフォームをめぐって、これといった問題は生じたことはなかった。だが、MLBが手掛けた変更が今シーズン新たな問題を巻き起こしている。
パフォーマンスを向上させるための変更が、ここまではパフォーマンスとはまるで無関係の、ネガティブな反応を生んでいる。
最初はスプリングトレーニング中での出来事だった。ユニフォームのズボンが透けて、ファンからしたら推しの選手であっても見たくないものまで見えてしまっていた。この問題はひと段落したようだが、今季からユニフォームのデザインを担当しているナイキ社、そして製造を請け負っているファナティクス社は今また新たな問題に直面している。
汗のシミ、そしてユニフォームの色の違いだ。
2024年シーズンが開幕して1週間もすると、選手たちは新しいユニフォームに浮かぶ汗のシミやユニフォームの色味の違いに対して不満の声を上げ始めた。今季のユニフォームは「メジャーリーガーが身につけるユニフォームではない」と言う声まで出始めているのだ。
いったい何が問題となっているのか、ナイキやMLBが考える今後の対策も含めてまとめる。
新ユニフォームをめぐる騒動とは
スポーツをすれば汗をかくのは当たり前、むしろ必要なことだ。プレーの強度があがればなおのこと。それは遊びであっても、アマチュア選手、プロ選手でも変わらない。
競技レベルの差は置いておいて、着ているものに汗のシミが目立つかどうかはプロとアマの大きな違いだ。プロの選手たちの肌に汗が光ることはあっても、そのユニフォームに汗のシミが目立つようなことはそうない。
その点で、これまでMLBのユニフォームは優秀だった。ところが今シーズンになって、ナイキ社のデザインによるファナティクス社製造のユニフォームには大きな変化が見られている。
これまで気にもかけてこなかった汗のシミが、やけに目立つようになったのだ。それも、穏やかな天候、インドアの試合でもである。特にグレーのユニフォームではくっきりと目立っている。
ニューヨーク・ヤンキースを迎えたヒューストン・アストロズのホームゲーム。試合が行われたのはインドアのミニッツメイド・パークだったが、その試合でのアーロン・ジャッジとジョナタン・ロアイシガのユニフォームには汗のシミがしっかり浮かび上がっていた。
汗を吸ったユニフォームは決して重くは感じられなかったと言いながらも、ヤンキースの投手、マーカス・ストローマンは次のように付け加えた。
「見た目には、実際よりもずっと濡れているように見えたかもね。水分を発散するどころか、逆に吸収しているように感じられたよ」
If you were wondering how bad the fanatics jerseys are, the guys are literally sweating right through them. pic.twitter.com/QKsiYfphnA
— joe (@BurdenBurner) March 28, 2024
Fanatics' new MLB jerseys went viral again on Opening Day, with fans calling out that players had sweat through them. pic.twitter.com/1PSDCd7HYU
— Front Office Sports (@FOS) March 29, 2024
その汗のシミはまるで、私たちがジムでバスケットボールをした帰り道のような姿だった。決して不自然でないし、悪いと言うわけではないものの、プロらしからぬ姿に選手たちは不満を隠せない。
デトロイト・タイガースの投手アンドリュー・チェイフィンはこれまで4チームでプレーしてきた経験からスポーツニュースサイト「The Athletic」の取材で「悪いユニフォームじゃないけどね。個人的意見を言わせてもらえば、メジャーリーガーの着るユニフォームじゃないと思うね」と語っている。
「普通っていうかな」とチャフィン。「特別感がないんだ。(メジャーリーガーにとって)ユニフォームっていうのは、派手な王冠とどでかいマントを身にまとうような感覚じゃないとダメ。わかるだろう?」
不満を口にしているのはチェイフィンだけではない。ミネソタ・ツインズの投手ブロック・スチュワートは新しいユニフィームは「レベルが下がった」と言い、父親にはユニフォームの上下でグレーの色味が違っていることと指摘されたと言っている。
タイガースのマーク・カナも同様にグレーのユニフォームの色味が上下でマッチしていないと指摘している。上のジャージには光沢感がある一方、ズボンの方は光沢感がない。これはユニフォームの上下を異なった会社が納品しているためだった。
様々なスポーツのユニフォームに関する情報を報じているウェブサイト「Uni Watch」のポール・ルーカス記者によれば、ユニフォームのズボンの製造業社は去年から変わっていないが、ジャージについては業者が変わったのだと言う。去年までは上下ともに同じ工場で製造されていた。
ナイキとMLBの今後の対応策は?
新しいユニフォームについて様々な声が上がっているものの、いまのところ、これと言った変更が加えられる予定はない。
「The Athletic」によればMLBは現地4月4日、ファナティクス社の製品はナイキ社の仕様に沿ったものだとしてその製造プロセスを擁護する声明を発表した。
ユニフォームに使用されている文字サイズ、生地についてはナイキ社が選択したものです。ファナティクス社は、ナイキ社から提供された仕様に沿って、素晴らしい製造作業を行っています。今回の大幅な変更に伴い、ナイキ社は引き続き、MLBのチーム、選手たちの要望に応えるべく、ユニフォームへの必要な対応を続けていきます
また、ナイキ社は「The Athletic」の取材に対し、「水分によって色味が変わるのを抑えるべく、様々な選択肢をテストしているところ」と答えている。
現時点でユニフォームに関してMLBが想定しているのはここまでで、ナイキ社は状況を「矮小化」しようとしている。シーズンが始まってしまった今、大幅な変更というのは考えにくいだろう。
なお、上下の色味のミスマッチについては、ファナティクス社はこのオフの間にナイキ社と話し合いをしており、「ナイキ社の想定範囲内」として今の状況になったと報じられている。
※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集:石山修二
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