マイアミ・ヒートはNBAプレイオフ2023でイースタン・カンファレンスの上位5チーム中3チームを下してきた。次の挑戦は、ウェスタン・カンファレンスで最高成績を収めたデンバー・ナゲッツだ。
NBAファイナルでナゲッツと対戦するのは容易な任務ではない。ニコラ・ヨキッチ、ジャマール・マレーを筆頭に、ナゲッツは今プレイオフで支配的だった。そして球団初の優勝を果たそうとモチベーションが非常に高い。シリーズを前に、かなり有利と見られている。
だが、ヒートを疑うのは危険だ。エリック・スポールストラ・ヘッドコーチのチームにとって、アンダードッグとの評価はまったく目新しいことではない。そしてヒートはNBAファイナルに進出したというだけで満足はしていないだろう。
ボストン・セルティックスとの東地区決勝第7戦を制した試合後、ジミー・バトラーは「イーストを制覇するためだけに戦っているんじゃない」と話した。
「僕らはすべてを勝ち取るために戦っているんだ」
どうすれば第8シードのヒートは「すべてを勝ち取る」ことができるだろうか。6月1日(日本時間2日)に第1戦が行われるナゲッツとのシリーズに向けて必要なことを整理してみた。
ヒートがNBAファイナル2023で優勝する3つの理由
3ポイントショットが好調
2021-2022シーズンのヒートはリーグ最高の3ポイントショット成功率(37.9%)を記録したが、2022-2023シーズンは27位(34.4%)に落ちている。アトランタ・ホークス、シカゴ・ブルズと対戦したプレイイン・トーナメントでも、それぞれ32.4%と33.3%だった。
しかし、ミルウォーキー・バックスとのファーストラウンド、そしてセルティックスとのカンファレンス・ファイナルでは、ショットが好調だった。バックスを8%、セルティックスを13%も上回る3P成功率を記録したのだ。
(ニューヨーク・ニックスとのカンファレンス・セミファイナルでは苦しんだが、それでも対戦相手を上回る成功率だった)
ラウンド | 平均3P成功-試投 | 3P成功率 | 対戦相手の3P成功率 |
1回戦 | 15.4-34.2 | 45.0% | 37.0%(バックス) |
地区準決勝 | 11.7-38.2 | 30.6% | 29.9%(ニックス) |
地区決勝 | 12.7-29.3 | 43.4% | 30.3%(セルティックス) |
ポストシーズンを通じての3P成功率は39.0%と、ヒートはプレイオフに進出した他のすべてのチームを上回っている。ナゲッツはヒートに続く38.6%だ。
つまり、ヒートは再び3Pバトルを制することで、自分たちの流れにもってくることができるのだ。
ジミー・バトラーのプレイオフでの活躍
バトラー自身は「プレイオフ・ジミー」という呼び名を拒んでいるかもしれない。だが、スタッツが物語っている。プレイオフになると、彼はレベルを上げるのだ。プレイオフでは平均28.5得点、7.0リバウンド、5.7アシスト、2.1スティール、FG成功率48.3%、3P成功率35.6%、フリースロー成功率80.6%を記録している。
東地区決勝では、ケイレブ・マーティンが活躍した。彼抜きにヒートがセルティックスを倒すことはできなかっただろう。それでも、マーティンがバトラーと同じ重荷を背負うことはできない。
得点が必要な時、決めるのはバトラーだろう。相手のトップクラスのガードやウィングに対する守備でも、封じ込めるのはバトラーなはずだ。チームメイトのためにオープンなショットをつくるのも、ジミーだろう。
The reverse is basically true for Butler (48 of his 60 FGs were unassisted). Which means Butler was creating almost everything for himself AND helping to generate almost half of Martin’s open looks.
— Ben Rohrbach (@brohrbach) May 30, 2023
そこで疑問となるのは、ヨキッチがいるシリーズでバトラーがベストプレイヤーになれるかということだ。バトラーはアーロン・ゴードンやケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、ほかのタフなディフェンダーたちにマークされるだろう。だが、ドリュー・ホリデーにブルック・ロペスと、オールディフェンシブ・ファーストチーム選出の2人を擁するバックスをバトラーが苦しめたことを忘れてはいけない。
ゴードンはバトラーについて、「ジミーはすべてをやれるんだ。見えないことのすべてをね」と話している。
「彼は試合の中で試合をするんだよ」
バトラーは2020年のNBAファイナルで、実質的にひとりの力で2試合に勝った。今回は仕事を完成させられるだろうか?
エリック・スポールストラの天才的指導
ヒートが再びアップセットを演じるには、スポールストラHCが自分の持つ魔法のすべてを生かさなければならない。
2回の優勝を経験しているスポールストラHCは、常に完璧なタイミングで適切なボタンを押すことができる。『The Ringer』のケビン・オコナー記者が指摘するように、セルティックスとの第7戦では、それまでの対戦でほとんど使っていなかった戦略であるスイッチを解き放った。
ヨキッチが様々なスポットから攻撃を指揮するナゲッツを相手に、ヒートは2-3のゾーンディフェンスに頼ることができないかもしれない。アデバヨとヨキッチを孤立させるのは良い考えではないだろう。そしてNBA史上有数のパサーにダブルチームを仕掛けたら大変だ。
The Heat switched 40 of 58 pick-and-rolls by the Celtics in Game 7, holding them to a dismal 0.69 points per play.
— Kevin O'Connor (@KevinOConnorNBA) May 30, 2023
It was the first time all series Miami switched on more than half of Boston’s P&Rs, per @SecondSpectrum.
Erik Spoelstra didn’t lie when he said they’d get it done. pic.twitter.com/5N67SveNor
ナゲッツをスローダウンさせる唯一の方法は、様々なかたちをミックスさせ、おそらくはファシリエーターではなくスコアラーとしてのヨキッチに耐えることだろう。プレイオフでヨキッチが30得点超をあげた試合で、ナゲッツは4勝3敗という成績だ。だが、ヨキッチが30点未満の試合で、ナゲッツは8勝0敗を記録している。
方程式を解決できる人がいるならば、それはスポールストラHCだろう。
原文:Three reasons why the Heat will win the 2023 NBA Finals, including Jimmy Butler's playoff excellence(抄訳)