過去4年、戦列を離れていた時間が長かったダラス・マーベリックスのクリスタプス・ポルジンギスは、現在フレッシュさを取り戻したようだ。
『NBA.com』のインタビューで、ポルジンギスは「素晴らしい気分だよ」と話してくれた。
「すごく久しぶりに、肉体が最高の状態だと感じている」。
殿堂入りの元ポイントガード、今季から指揮を執るジェイソン・キッド・ヘッドコーチの下でプレイすることにも興奮しているようだ。ポルジンギスは「今のコーチングスタッフと彼らの僕に対する見方は、自分が考えていることによりフィットしている」と述べた。
「みんなが僕のベストを引き出そうとしてくれるんだ」。
これまで3年一緒だったチームのスター、ルカ・ドンチッチとのコンビには自信をうかがわせている。ポルジンギスは「僕たちはリーグ有数のデュオになれると思う」と語った。
「本当に、僕はそう信じているんだ」。
トレードの可能性はなかった
マーベリックスが過去2シーズンのプレイオフでファーストラウンド敗退に終わり、負傷などもあったことから、昨年はポルジンギスにトレードの噂があった。だが、オーナーのマーク・キューバンは、そのような話はなかったと否定している。
キューバンはNBA.comに「事実じゃないよ。なぜ私がそんなことをしなきゃいけない?」と話した。
「スーパースターをトレードで放出しても、そこから最高の結果を得ることは決してないんだ」。
キューバンはトレードに動かなかったのは正しかったと考えているようで、ポルジンギスが「オールスターレベルのプレイをしている」と表現した。
「これこそユニコーン(ポルジンギスの愛称)だ。そして彼はますますユニコーンらしくなっている」。
11月23日(日本時間24日)のロサンゼルス・クリッパーズ戦を前に、ポルジンギスは平均20.3得点、8.3リバウンド、フィールドゴール成功率45.5%という数字だ。左ひざと左足首の負傷でドンチッチが欠場し、マーベリックスは3連敗を喫しているが、その3試合でポルジンギスはチームが競う助けとなってきた。
キューバンは「私はKP(ポルジンギス)がこれまで自分のベストが出せていなかったとずっと思っていた。そして今、我々が彼をトレードしなかった理由が分かるだろう」と話した。
「彼は素晴らしい選手だ。良いヤツなんだよ。彼との経験はずっとポジティブだった。ならば、なぜそのようなことをする? ツイッターでのNBAの話題なんてそういうものさ。どうせ今頃ルカをトレードさせようとしてるんじゃないかな」。
もちろん、マーベリックスにドンチッチをトレードする計画はない。だがキューバンは、強調するために大げさに話してもいる。現在のNBAでは、有望とされる選手でもすぐに傷物扱いされてしまう。
2年半前、マーベリックスはニューヨーク・ニックスとの複数選手トレードの目玉としてポルジンギスを獲得した。4か月後、彼らは4年1億5800万ドル(約182億円)のマックス延長契約を結ぶことで合意した。
ポルジンギスは「それがNBAだ。結局はビジネスなのさ」と話している。
「選手の手には負えないんだ。本当に僕はそういうことを気にしなかった。ただプレイを続けただけだ。ここだろうが、どこだろうが、自分にできる最高の仕事をすることに集中しようと努めてきた」。
健康を保てるか?
期待に応えられるかどうかは、健康によるところが大きいことをポルジンギスも自覚している。
左ひざ前十字靭帯の手術で2018-19シーズンを全休し、続く2019-20シーズンも主に両ひざに関する様々な問題で計18試合を欠場した。2020-21シーズンも同様だ。右ひざの手術からの回復で開幕からの9試合を欠場。その後も手術したひざや腰、左足首、右手首の理由で17試合を欠場した。
キューバンは「ケガをして、それを完全に忘れ去る人などいない」と話す。
「どんなことをしていても同じだ。病気になって、少し調子が悪いと感じたら、『また病気か?』と思うものだ」。
ポルジンギスもそう認めている。様々な負傷が彼のバランス、ショットの打ち方、バスケットにアタックする積極性に影響したと考えているのだ。26歳のビッグマンが7フィート3インチ(約221cm)、240ポンド(約109kg)という体格であることも助けにならなかった。
ポルジンギスは「ガードはボールをより多く持つから、もっと簡単だろう」と話している。
「ビッグマンにとっては、もう少し難しいんだ」。
だからこそ、ポルジンギスは今オフシーズンで「たくさんのフィジカルワーク」に励んだ。
確かに、今季も腰の痛みで5試合を欠場した。だがポルジンギスは、「制限はまったくない」状態を保ち、その後は完全に健康と感じている。オフシーズンの取り組みの詳細は明かさなかったが、ポルジンギスは欠場後の力強いプレイはそのおかげによるところが大きいとした。直近の8試合は平均23.1得点、9.1リバウンド、2.5アシスト、FG成功率50.4%を記録している。
ポルジンギスは「肉体が成熟したと感じている」と述べた。
「コートで力強さを感じるんだ。それがプレイに反映されているんだよ」。
キッドHCの指導
ただ、ポルジンギスの出来は健康だけによるものではない。リック・カーライル前HCの下での役割はやりやすくなかったと認めている。ポルジンギスは「ニックスでやっていた時と違ったんだ」と話した。
「慣れていたことと違った。ルカのような素晴らしい選手と一緒にやると、プレイが変わるものなんだ。ずっと適応しようとしていかなければいけなかった」。
カーライルはポルジンギスのスペーシングやアウトサイドショットを生かそうと、彼にポストアップをさせなかった。ロサンゼルス・クリッパーズに敗れた昨季のプレイオフ・ファーストラウンドで、ポルジンギスは平均13.1得点、FG成功率47.2%、3ポイントショット成功率29.6%に終わっている。
そのクリッパーズと対戦した21日(同22日)の試合で、マーベリックスがペイント内からあげた最後の8得点のうち、6得点はポルジンギスによるものだった。彼は、前回ロサンゼルスで戦った時から役割が大きく変わったと気づいている。
ポルジンギスは「チームメイトたちが僕を信頼してくれるんだ」と述べた。
「コーチングスタッフも信頼してくれている。そして僕が最もやりやすい状況にしてくれるんだ」。
キッドHCの選手との接し方も快適という。2011年のマーベリックス優勝に貢献し、リーグ歴代2位のアシスト(1万2091)を記録したキッドについて、ポルジンギスは選手に協力的で、コミュニケーションをとると明かした。
キューバンは「KPは本当にキッドのアプローチを生かして自信を深めた」と話している。
「選手は自信を持ち、自分らしくいられると感じれば、よりハードにプレイできるんだ」。
マーベリックスにとっては、驚きではない。今季が開幕する前に、彼らはそう予見していたのだ。
キッドHCはポルジンギスが「攻守両面で非常にうまくプレイしている」と述べた。
「序盤にケガをしたが、そこから戻ってきた。トレーニングキャンプでの状態を保っていると思う」。
ドンチッチとのケミストリー
それでも、ポルジンギスはさらに攻守両面で向上するために、より強いリズムを生み出す必要があると考えている。それがさらなる勝利につながるかもしれない。ただ、それはドンチッチ次第でもある。
ポルジンギスは「僕たちはもっとコミュニケーションをとっている。それは非常に重要なことだ」と、互いのベストを引き出すために、両者が大きく前進したと話している。
「僕たちは良いスタートを切った。ルカとのプレイは大好きだ。ああいうタイプのタレントと一緒にやる機会はなかなかない。彼はみんなのプレイをやりやすくさせてくれる。周囲の注意を引きつけてくれるんだ」。
コミュニケーションを深めることになったきっかけは何だったのか。ポルジンギスは「やらなきゃいけないというだけだ。誰かが最初の一歩を踏み出さなければいけない」と述べた。
「すべてはコミュニケーションにある。シンプルなことだ。コミュニケーションをとらないと問題が出てくる。そしてそのことを話さない。僕たちはそういうことを学んでいるところだ」。
ドンチッチがいるかどうかにかかわらず、チームメイトたちとコミュニケーションをとっているポルジンギスのリーダーシップを、マーベリックスは評価している。ドンチッチとの対話が増えたことで、ポルジンギスは「ピック&ロールやその他多くの状況で、僕たちは相手にとって守るのが最も難しいデュオのひとつになれる」と考えている。
キューバンは「彼らは互いを補完する」と話した。
「KPはスペースをつくれる。ルカがいない時は、バスケットにより近づき、得点をあげられる。守備でも彼はブロックを見せ、走ったり、カッティングしたりと見事な動きを見せている。だが私は、KPがまだ最高のバスケットボールをできていないと思っている。彼はまだやりやすさを感じているところなんだ」。
少なくとも、自分の健康やキッドHCの指導、ドンチッチとのケミストリー、マーベリックスのプレイオフでの幸運について、ポルジンギスは楽観できるようになった。
ポルジンギスは「とにかく懸命に働いているよ」と話している。
「本当に、本当にハードワークをしている。コートで感触が良くなり、健康だと感じられるようになれば、また喜びにつながるんだ。ゲームをもっと楽しめるようになるんだよ」。
原文:How Kristaps Porzingis is finally settling in and paying off for the Dallas Mavericks(抄訳)