12月13日、バンタム級の4団体統一という日本人初の偉業に臨む井上尚弥。すでに各方面の最強ランキング『パウンド・フォー・パウンド』で上位に君臨するようになった井上だが、今後さらにその順位をあげることが予想される。
PFP上位のライバルたちの動向も含めて、本誌格闘技エキスパートのダニエル・ヤノフスキー(Daniel Yanofsky)記者が考察する。
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パウンド・フォー・パウンド上位で語られる井上尚弥
「世界最高のボクサーは誰か?」
これはボクシングを知る者にとっては、シンプルに答えの無い質問だろう。古くからの議論の元になっているパウンド・フォー・パウンドのランキングは、最も権威のある『The Ring』誌のものだけではなく、さまざまなメディアや機関によって設定され、その議論は何時間も続くことがあり、同じ答えにたどり着くことはそうそうない。
特定のファイターには明確なヒエラルキーが存在する。カネロ・アルバレス、テレンス・クロフォード、オレクサンドル・ウシクに傾倒するファンもいて、常に混戦模様だ。その上位グループに新たに加わったのが、2022年6月のノニト・ドネアとの第2戦後に、『The Ring』誌の総合パウンド・フォー・パウンド・ランキングで日本人初の1位となった、WBAスーパー・WBC・IBF世界バンタム級王者、井上尚弥だ。
欧米でも井上尚弥の実力を知る人が増えている。米最大手プロモーター『トップランク』と米スポーツ放送局『ESPN』との契約のおかげでもある。しかし、その一方で、まだ井上が納得のいく実績を挙げたとは認めない人々もいるだろう。
井上は12月13日にWBO王者ポール・バトラーと対戦し、バンタム級初の4団体統一の『Undisputed Champion(比類なき王者、誰もが認める王者、絶対王者)』になることを目指す。このまま井上が勝てば、人々はそれ以上の証拠を必要とするのだろうか? もし、井上への思い入れが拡大せず、井上のスケジュールが不透明のままなら議論は続くことになる。
では、2022年から2023年にかけてカレンダーがめくられたとき、井上はその疑念を払拭できるだろうか? それは来るべきライバル候補たちのおかげでそうなる可能性が高い。
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井上尚弥、スーパーバンタム級転向が最強証明への道筋?
支配力を証明する最善の方法は、階級を移動することだ。井上は3階級の制覇でそれを証明してきた。もしバトラーに勝てば、井上は4つ目の階級となるスーパーバンタム級に転向し、WBC・WBO同級王者スティーブン・フルトンと対戦するかもしれない。そこからWBA・IBF王者ムロジョン・アフマダリエフと激突する青写真も描けるだろう。
「122ポンド(スーパーバンタム級)でも、もっと動けるし、自分の強さをさらに発揮できると思う」と井上自身は『The Ring』に語り、こうも続けている。
「ただ、それは僕がよりよく動けるようになった(そしてよりアクティブになった)だけのことです。(実際に)自分より大きな相手に、どれだけのダメージを与えることができるかはわかりません。そこは未知の世界でしょうね」
井上が未知の世界に挑むことが実現した場合、PFPライバルたちの動向が気になってくるだろう。
ほかのパウンド・フォー・パウンド上位陣の動向は?
カネロ・アルバレス
まずはカネロから。2021年に11か月足らずで『比類なき』4団体統一スーパーミドル級王者になったあと、2022年5月、WBA世界ライト級スーパー王者ドミトリー・ビボルに敗れると、9月のゲンナジー・ゴロフキンとのトリロジー決着戦に勝利し、長きにわたるライバル関係に終止符を打った。
カネロは現在、手首の手術を経て療養中で、2023年5月頃に復帰する予定だ。ビボルとの再戦(アルトゥール・ベテルビエフと対戦しない場合)またはジョン・ライダーとの戦いが検討されているという。 とはいえカネロには不透明な状況が続くため、井上は自身に適した試合をこなせば、カネロよりも先に大きな成果を得ることができるだろう。
テレンス・クロフォード
クロフォードについては、現状を考えると途方に暮れるしかない。クロフォードは、エロール・スペンス・ジュニアとのウェルター級4団体統一戦を計画しているが、業界に強い影響力を持つ『トップランク』から離れたこともあり、それがいつに実現するのか定かではない。クロフォード自身は、12月10日にデビッド・アバネシアンと対戦予定だが、スペンスはクロフォードの前にほかの誰かと戦うことが噂されている。両者が激突することになるまで、ボクシングファンはあとどれくらい待たなければならないのだろうか?
オレクサンドル・ウシク
ウシクは、2月のロシアの軍事侵攻後に入隊していた母国ウクライナ軍から一旦離れてボクシングに復帰。8月にアンソニー・ジョシュアとのダイレクトリマッチを制して、WBAスーパー・IBF・WBOの3本のベルトを守った。若干流動的だが、『比類なき』ヘビー級チャンピオンの座をめぐって、WBC王者タイソン・フューリーと拳を交えることが予想されている。フューリーの交渉スタイルを考えると、決定まで長い場外戦を演じることになりそうだ。
ただ、両者30代半ばで(自身や家族の考えから)キャリアの終え方を意識する状況でもあるため、すぐに試合が実現する可能性もあり、井上にとっては、ウシクが最も身近なPFPライバルと言えるかもしれない。井上陣営には対戦相手を賢く選ぶ目利きの力があるが、この先の大きな試合の実現には、『トップランク』が交渉に協力してくれればの話になって来るだろう。
2023年は、『モンスター』が実際にボクシング界を席巻する年になるかもしれない。井上はすでにあなたのリストのトップにいるだろうか? そのリストを確認するために、まず、12月13日のバトラー戦を見届ける必要がありそうだ。
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