イースタン・カンファレンス・ファイナル第3戦でマイアミ・ヒートに敗れ、ボストン・セルティックスはNBAプレイオフにおいて歴史的に誰も抜け出すことのできなかった穴に陥った。
NBAの歴史において、プレイオフで0勝3敗となったチームが逆転してシリーズを制したことは、過去150回で一度もない。
追い詰められたセルティックスは、同じボストンを拠点とするレッドソックスに続こうとしている。レッドソックスは2004年、MLBの歴史で初めてプレイオフ0勝3敗からシリーズを制したチームだ。
マーカス・スマートはヒートとの第4戦の試合前、当時レッドソックスの一塁手だったケビン・ミラーが試合前に発した歴史的なフレーズを口にした。「今夜の僕たちを勝たせるな」。
そしてセルティックスは第4戦でヒートに17点差で勝利。さらに5月25日(日本時間26日)の第5戦も13点差で制し、マイアミでの第6戦に持ち込んだ。
第5戦の試合後、ジェイレン・ブラウンは「彼らは僕らに2勝させた。またもう1勝させるなよ」と自信たっぷりに話している。
セルティックスがシリーズの流れをひっくり返し、プレッシャーはヒートにかかっている。ホームで勝負を決めようとするヒートに対し、セルティックスはここ2勝で何を手に入れたのか。逆転を目指す上で鍵となるポイントを見ていこう。
セルティックがヒート相手に0勝3敗からシリーズを逆転できる3つの理由
守備の強度を高めたセルティックス
セルティックスの成功は守備から始まっている。NBAプレイオフ2023でセルティックスは相手に110点以上を許した試合で2勝8敗。逆に110点未満に抑えた場合は8勝0敗という成績だ。
セルティックスの守備は昨年、NBAファイナルまで勝ち進む要因となった。今季のレギュラーシーズンもディフェンシブレーティングはリーグ2位だ。だが、ポストシーズンに入ってセルティックスの守備は安定していなかった。
ヒートとの第4戦と第5戦でセルティックスはそれを取り戻した。守備の強度を高めてきたのだ。ここ2試合でセルティックスはヒートを100点未満に抑え、シリーズ2勝3敗と巻き返している。
セルティックスはヒートがハーフコートを越えるやいなや、ボールハンドラーにプレッシャーをかけ始め、ヒートのガードの層の薄さを突いた。特に、足首の負傷でゲイブ・ビンセントが欠場した第5戦で、セルティックスはさらにアグレッシブになり、パスレーンを阻み、ドライブを不正で、経験不足のプレイメーカーたちに決断を強いたのだ。
JB steal in #PhantomCam 💨
— NBA (@NBA) May 26, 2023
The Celtics have 13 steals with 8 minutes remaining in Game 5 on TNT! pic.twitter.com/rM2npgjedM
第4戦でセルティックスはヒートの15ターンオーバーから27得点をあげ、8ブロック、8スティールを記録している。第5戦ではさらに重圧を強め、16ターンオーバーから27得点をマーク。13スティール、4ブロックを記録した。
セルティックスはスイッチをし、守備のローテーションが連動している。5人全員が昨季のポストシーズンのようだ。結果、セルティックスはここ2試合連続でヒートのシューターたちの3ポイントショット成功を一桁に抑えている。
過去にこのチームで見てきたように、このレベルの守備は持続可能だ。歴史をつくる上で、彼らのアキレス腱となる。
ヒートのゾーンディフェンスに対するセルティックスのボールの動かし方
守備で相手を止めることにより、ここ2試合のセルティックスはより速いペースでプレイできた。ただ、ハーフコートオフェンスにも相乗効果が見られる。
今のセルティックスがベストの状態なのは、ペリメーターでボールが回っている時だ。常に最低4人のシューターをコートに立たせることでつくり上げたアドバンテージである。
第1戦から第3戦までのセルティックスは、ヒートのゾーンディフェンスに驚いたようで、ジェイソン・テイタムやジェイレン・ブラウンたちは、混雑な中をドリブル突破しようとした。まるで『TNT』が昨年のカンファレンス・ファイナルとNBAファイナルを再放送したみたいだ。この3試合のいずれもセルティックスはターンオーバーが15超で、オープンなかたちで3Pを打つことができなかった。
だが、第4戦と第5戦でセルティックスはボールを動かし、ヒートのゾーンディフェンスを打ち破った。ペリメーターから3Pを放ったり、ロブでペイント内の弱みを突いた。
PERSISTENCE PAYS!
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Tatum hits the three, Boston locked in for Game 5 on TNT 🔒 pic.twitter.com/KT1cpydXfj
第4戦でセルティックスは28アシストからフィールドゴール43本を沈めた。3Pは18本成功で成功率40%だ。第5戦は23アシストからFG40本成功。3Pは成功率41%で16本決めている。そしてどちらの試合もセルティックスのターンオーバーは10以下だった。
セルティックスはようやくヒートの特徴であるゾーンディフェンスに慣れてきたようだ。そして、3Pが決まっている時のセルティックスは危険なのだ。
プレッシャーがかかる時こそ強いセルティックス
最後になるが、追い詰められた時のセルティックスには何かがある。
第5戦を前に『スポーティングニュース』ではテイタムのエリミネーションゲームにおける成績を伝えていたが、チーム全体も同様だ。
NBAプレイオフ2022以降、セルティックスはエリミネーションゲームでの成績が7勝1敗。ロードでは4連勝中だ。これはマイアミでのヒートとの第6戦に向けて吉兆だろう。
ヒートとの第5戦はセルティックスにとって今ポストシーズンでエリミネーションゲームでの4勝目だった。その輝かしい歴史において、1シーズンのプレイオフでは球団最多の数字だ。
セルティックスはあと2勝し、シリーズ0勝3敗から逆転で勝利したNBA史上初のチームとなれるだろうか。