野球の世界一を決めるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。2023年大会は3月8日に幕を開け、1次ラウンドは世界各地で熱戦が繰り広げられる。ここではアメリカ・アリゾナ開催となるプールCにフォーカスし、海外ブックメーカーのオッズとともに各チームの評価を紹介する。
■1次ラウンド予想・プールCオッズ一覧
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※3月7日時点
1次ラウンド突破チームのオッズ(上位2チーム)
アメリカ:1.03
メキシコ:1.33
カナダ:4.50
コロンビア:5.50
イギリス:41.00
首位チームのオッズ
アメリカ:1.22
メキシコ:4.50
カナダ:21.00
コロンビア:21.00
イギリス:101.00
■アメリカの予想・評価
ベースボールの本場、アメリカがこのプールをリードする存在だ。1次ラウンド突破、首位突破のオッズは最小。優勝チームのオッズでも「3.50」と、「3.00」のドミニカ共和国と日本に次ぐ3番手に予想されている。
連覇を狙う今大会は、史上最強との呼び声高い豪華な陣容を揃えてきた。主将を務めるマイク・トラウト(ロサンゼルス・エンゼルス)を筆頭に、ムーキー・ベッツ(ロサンゼルス・ドジャース)、ポール・ゴールドシュミット(セントルイス・カージナルス)とMVP受賞経験者が名を連ねた。
そのほかにも、MLBナンバーワン捕手と称されるJ.T.リアルミュート(フィラデルフィア・フィリーズ)、昨シーズンのナショナル・リーグ首位打者ジェフ・マクニール(ニューヨーク・メッツ)、10年連続ゴールデングラブ賞のノーラン・アレナド(カージナルス)、昨シーズン46本でナショナル・リーグのホームラン王に輝いたカイル・シュワーバー(フィリーズ)らがメンバー入り。まさにMLBのオールスターチームといった陣容だ。
豪華な野手陣と比較すると投手陣はやや見劣りしてしまうが、それでも世界最強クラスであることは間違いない。クレイトン・カーショウ(ドジャース)の出場辞退という残念のニュースもあったが、先発候補はMLB通算195勝のアダム・ウェインライト(カージナルス)やカイル・フリーランド(コロラド・ロッキーズ)、読売ジャイアンツで3年に渡って活躍したマイルズ・マイコラス(カージナルス)。その後ろにはデビン・ウィリアムズ(ミルウォーキー・ブリュワーズ)、ライアン・プレスリー(ヒューストン・アストロズ)といった強力な中継ぎ陣が控える。
■メキシコの予想・評価
躍進の可能性を大きく秘めているのがメキシコだ。WBCではこれまで一度も1次ラウンド突破がない。それでも、今大会のメンバーは投打ともにMLBの一線級がズラリ。1次ラウンド突破チームのオッズではアメリカに次ぐ「1.33」と、準々決勝進出が有力視されている。
すでに1次ラウンドの先発ローテーションが発表されており、投手の中心は開幕戦を務めるフリオ・ウリアス(ロサンゼルス・ドジャース)。昨シーズンにナショナル・リーグの最優秀防御率、リーグ2位の17勝を記録した左腕で、全チームを見渡しても彼以上の存在はいないだろう。
アメリカと対戦する2戦目を託されたパトリック・サンドバル(ロサンゼルス・エンゼルス)は、昨シーズン6勝9敗ながら防御率は2.91と安定した数字を残した。アメリカを牽引するマイク・トラウトとの同僚対決は、日本のファンにとっても楽しみな対戦だ。
野手ではランディ・アロサレーナ(タンパベイ・レイズ)、アレハンドロ・カーク(トロント・ブルージェイズ)、ロウディ・テレス(ミルウォーキー・ブリュワーズ)らが主役を張る。アロサレーナは2021年の新人王で、昨シーズンは89打点、20本塁打を記録している。カークは24歳の捕手。昨シーズンはオールスター入りを果たし、シルバースラッガー賞にも輝いた。テレスは昨シーズンに35本塁打を記録した長距離砲だ。
■カナダの予想・評価
アメリカ国外で唯一、MLB球団(トロント・ブルージェイズ)を持つカナダ。これまでの4大会はすべて1次ラウンド敗退を喫しているが、今大会でもメンバーにはMLBで活躍する選手が多数名を連ねている。
昨シーズン15勝、防御率3.38とキャリアハイの1年を送ったカル・クアントリル(クリーブランド・ガーディアンズ)、同じく自己最高の10勝を挙げたニック・ピベッタ(ボストン・レッドソックス)が投手陣の柱だ。
野手にも楽しみな逸材が揃っている。新型コロナウイルスの影響で短縮シーズンとなった2020年に打率.341、13本塁打、53打点を記録し、MVPに輝いたフレディ・フリーマン(ロサンゼルス・ドジャース)が主軸。2021年に34本塁打を放ったスラッガー、タイラー・オニールも得点源として期待される。
そして日本のファンにとっておなじみの、スコット・マシソンもカナダ代表に選出されている。読売ジャイアンツで8シーズンに渡って活躍し、2度の最優秀中継ぎ投手にも選ばれた。巨人退団後は現役引退し、東京オリンピック出場に向けて復帰もカナダは予選敗退。再び現役を退いていたが、サプライズで再び国際舞台に戻ってきた。39歳という年齢に加え、実戦からも遠ざかっているはずだが、どんな投球を見せてくれるのか楽しみな人も多いだろう。
■コロンビアの予想・評価
コロンビアはカナダとともに、3番手を狙う立ち位置と予想されている。1次ラウンド突破のオッズは4番目の「5.50」、首位突破のオッズはカナダと並ぶ「21.00」。アメリカ、メキシコの2強とどのような試合ができるかが肝となりそうだ。前回大会では優勝したアメリカと1次ラウンドで対戦し、延長までもつれこむ熱戦も見せた。
チームの指揮を執るのは福岡ソフトバンクホークスにも所属したホルベルト・カブレラ監督。日本とのつながりという点では、育成契約で埼玉西武ライオンズに所属している投手ジャシエル・ヘレラがメンバー入りしている。
そのほか、投手陣ではMLB通算89勝のホセ・キンタナ(ニューヨーク・メッツ)がエース格。中継ぎを中心に、通算101試合で登板したナビル・クリスマット(サンディエゴ・パドレス)もMLBで活躍する投手だ。
野手では2021年に18本塁打を記録したエリアス・ディアス(コロラド・ロッキーズ)が扇の要を務める。2022年11月に電撃トレードで大谷翔平が所属するロサンゼルス・エンゼルスに加入したジオ・ウルシェラは三塁手が本職ながら、複数のポジションを守れる万能型。打撃では昨シーズン、打率.285、64打点、13本塁打を記録している。
■イギリスの予想・評価
ヨーロッパから唯一、アメリカ大陸勢のプールに入ったのがイギリスだ。ヨーロッパ勢+南アフリカの6カ国で行われた予選で、フランス、ドイツ、スペインに3連勝を飾って初出場をつかんだ。
しかし、突破オッズ「41.00」が示すとおり、本大会では困難なチャレンジが待ち受けている。アメリカを筆頭に野球大国が集まる中で、まずは1勝を挙げることがターゲットになりそうだ。
メンバーはマイナーリーガー、アメリカ独立リーグの選手たちが中心。昨シーズンにサンディエゴ・パドレス、ロサンゼルス・ドジャースでプレーし、13本塁打を放ったトレイス・トンプソンが注目選手だ。
■プールC勢力図まとめ
オッズが示すとおり、実力を発揮すればアメリカ1強という形になるだろう。準々決勝進出のもう1枠を、メキシコやカナダ、コロンビアが争う展開となりそうだ。
先発ローテーションを発表したメキシコは、大会最高のピッチャーであるフリオ・ウリアスを2戦目のアメリカ戦ではなく、初戦で対戦するコロンビアにぶつけることを選択した。2位を争うライバルに勝ちきることで1次ラウンド突破を狙うのはもちろん、準々決勝以降の試合も計算しているだろう。1次ラウンド最終戦で行われるメキシコ対カナダは、2位を決めるエキサイティングな試合になりそうだ。
アメリカは初戦をイギリスと対戦するという、比較的恵まれたスケジュール。ここで試運転を終えた上で、メキシコ、カナダ、コロンビアと対戦していく流れだ。肝になるのはやはり、メキシコとカナダ、隣国のチームとの対戦だろう。ここで黒星を喫すると、プールは一気にカオスへ向かう可能性もある。
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