渡邊雄太の来季所属チームはどこになる? 元グリズリーズ幹部が分析

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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渡邊雄太をよく知る人物が移籍先を予想

NBAでの5年目となった2022~23シーズン、ブルックリン・ネッツの一員として渡邊雄太は充実したシーズンを過ごした。出場試合数、プレイタイム、平均得点、FG成功率、3ポイント成功率といった主要スタッツでは軒並みキャリアハイ。特に前半戦では波乱の多かったネッツを支える功労者となり、ケビン・デュラント、カイリー・アービングという2人のスーパースターの信頼を勝ち取ったことは記憶に新しい。

その2大スターがトレードでチームを去った後半戦ではプレイ機会が減ったものの、今季にこれほど躍進できた理由はどこにあったのか。そして、再びフリーエージェント(FA)になる今オフ、渡邊にはどのチームがフィットするのか。それらを読み解くべく、NBAファイナル期間中の6月8日、元メンフィス・グリズリーズのバスケットボール部門副社長のジョン・ホリンジャーに独占インタビューを行った。

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ホリンジャーはかつて『ESPN.com』で8年に渡ってライターを務め、その分析力を買われて2012年12月にグリズリーズのフロント入りした変わり種。渡邊がグリズリーズに入団した際、チーム編成担当を務めており、獲得に直接関わった人物だ。

2018-2019シーズン限りでグリズリーズを離れたホリンジャーは現在、『The Athletic』のコラムニストとして健筆を振るっている。渡邊の長所、特徴をよく知る元エグゼクティブは、今季の成長の要因、さらなる伸びしろ、そして来季以降にフィットするチームについてじっくりと語ってくれた。

雄太の努力は称賛されてしかるべき

John Hollinger
(Daisuke Sugiura)

今季の雄太は自己最高のシーズンを過ごした。そのプレイを見て少し驚いた部分があったとすれば、3Pシューターとして大きく成長したところだ。グリズリーズ時代の雄太は15~18フィートの距離からはとてもいいシューターだったが、3Pショットの安定感という面で苦しんでいた。それが今季は3Pの精度が向上し、素晴らしい数字を叩き出したことに関して、雄太の努力は称賛されてしかるべきだと思う。

3P以外のディフェンス、走力といった能力はジョージ・ワシントン大、グリズリーズでプレイしていた頃からすでに示していたものだった。付け加えるならば、より自信をつけ、主体的にプレイできるようになったのが大きかった。雄太はNBAの中での自身の立ち位置を理解し、堂々とプレイできるようになった印象がある。

これまでの雄太はナイスガイすぎるところがあったのかもしれない。もっとセルフィッシュ、アグレッシブにプレイしてほしいと感じたことがあった。グリズリーズに在籍していた頃にしても、特にGリーグでプレイした際には相手を圧倒できるだけの能力があった。そうするには至らなかったのは、メンタリティーに起因していたように思う。雄太は常に負けず嫌いの選手ではあったが、遠慮がちなところは日本のカルチャーに基づいたものでもあったのかもしれない。

以前よりも自信をつけた今、雄太はレフェリーの判定に抗議するようになった。そんな姿はかつての彼では考えられなかったことだ。より自信をつけ、NBAに慣れ、感情を表に出す雄太の姿が見れたのは嬉しいことだった。

また、今季前半に関しては、デュラント、アービングのようなスーパースターと一緒にプレイしたことが雄太の助けになったのは事実だったと思う。雄太は自らのドリブルでクリエイトしていくタイプではない。その一方で、シュート力、走力があり、常に適切なポジショニングができ、正しいプレイの方法が分かっている。大変なナイスガイでもある。そういった彼の特徴が、スター選手たちと一緒にプレイする際に生きてくるものであることは明白だ。

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グリズリーズ時代に渡邊雄太と契約した理由

私がグリズリーズのチーム編成担当を務めていた2018年オフ、ドラフト指名されなかった雄太と2ウェイ契約を結んだ。もともと私は雄太がジョージ・ワシントン大に所属していた頃、ハワイで行われたトーナメントでのプレイを見て、サイズがあり、動きもよく、スキルを備えた好選手だと感心させられていた。カレッジレベルでは彼のように6-8(203cm)、6-9(206cm)の身長があり、ガードのように動ける選手はそれほど多くはない。

2018年の夏、ブルックリン・ネッツの一員として出場したサマーリーグでも彼は良いプレイをしていた。その時点で、ディフェンス面ではおそらくNBAでも通用すると感じることができた。当時のグリズリーズは守備中心のチームを作っていきたいと考えられていて、そんな方向性にフィットする雄太に契約をオファーするに至ったんだ。

あれから時間が経ち、雄太ももう28歳になった。年齢的に見ても、恐らくもう彼は持っている力の上限に近づいていると思う。まだ向上できる部分があるとすれば、オフボールムーブメントからのシューティングだろう。今ではほとんどのシュート機会がキャッチ&シュートだが、クレイ・トンプソンがやるように、スクリーンを上手く使い、動きながらボールをもらい、ショットを高確率で決められるようになれば大きいはずだ。

渡邊雄太の移籍先として相性がいいのは…

今季の雄太はネッツとのミニマム契約でプレイしたが、来季はそれよりも良い契約を手にできると思う。またミニマム契約に落ち着く可能性もあるが、少し上のバイアニュアル例外条項を使った契約くらいだと予想する。クレイジーな金額ではないにしても、これまでより良い条件を受け取るのではないか。

雄太がフィットすると思えるチームを模索したとき、彼と似たタイプの選手が数多く揃ったネッツはその中には含まれない。フェニックス・サンズが今オフの補強にどれだけの金額を費やせるかにもよるが、雄太がサンズに行ってまたデュラントのチームメイトになることは考えられる。

もう1チームを挙げておくとするなら、フィラデルフィア・76ersとは相性が良いと見ている。特にプレイヤーズオプションでFAになる権利を持つジェームズ・ハーデンが76ersズに残ることになったとすれば、フィットの良さはより明白になる。76ersはサイズに恵まれたウイングが不足している。雄太のことをラプターズ時代から見てきたニック・ナースが新ヘッドコーチになったことも忘れてはいけない。

このようにいろいろと推測はできるが、実際にどのチームに属することになるかはもちろんわからない。どんな方向に進もうと、私も雄太の今後のキャリアがどうなっていくかを楽しみにしているよ。

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杉浦大介 Daisuke Sugiura

杉浦大介 Daisuke Sugiura Photo

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。