9月3日(火)、井上尚弥がスーパーバンタム級4団体統一王座、2度目の防衛戦としてアイルランドの伏兵TJ・ドヘニーを迎え撃つ。日本が誇る『モンスター』井上尚弥の経歴、戦績、獲得タイトル、全試合リストを紹介する。
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■悪童ネリを東京ドームで成敗なるか
「日本人ボクサー最高傑作」として現代ボクシング界で世界的な評価を得る『モンスター』井上尚弥。
軽量級のフレームながら、巧みなカウンタースキルとその破壊的なハードパンチャーぶりから、名門誌『The Ring』(リングマガジン)をはじめとする各メディアのパウンド・フォー・パウンド(無差別級最強ランキング)リストのトップファイターとして君臨し、世界4階級制覇だけでなく、日本人としてもアジア人としても初となる2階級4団体王座統一を成し遂げた。
5階級目のフェザー級転向の期待もあるなか、スーパーバンタム級に留まることを明言した井上。5月には東京ドームという大舞台で、日本ボクシング界の不倶戴天の敵『悪童』ルイス・ネリにキャリア初のダウンを喫するも、6回TKOで完全撃破した。
日本ボクシングファンの溜飲を下げてくれた井上だが、9月の次戦相手選びでは思わぬトラブルに見舞われた。ネリ戦直後に対戦を約束する握手をかわしていたはずのIBF指名挑戦者のサム・グッドマンが9月対戦から急遽撤退。代わりにネリ戦時のリザーバーだったTJ・ドヘニーが抜擢された。
WBA指名挑戦者ムロジョン・アフマダリエフとの対戦や、フェザー級早期転向を求める国内外のファンから否定的な声も届くことになったが、当の井上陣営は、伏兵ドヘニーをネリ以上の怖さを持つ挑戦者として警戒している。その理由は、過去のスーパーバンタム級契約の試合で、計量後の「+12kg」の体重戻しからの初回KO勝ちをスコアしていることだ。
規格外のリカバリーとネリ級の強打が融合爆発すれば、『モンスター』井上でも耐えられないかもしれない…。これが単なるマスコミ向けの営業文句なのか、それとも本当に現実となってしまうのか、当日の試合を見るまではわからないだろう。
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スポーティングニュースでは、日本人ボクサーとして世界の常識を覆し続ける井上尚弥のこれまでのキャリアを紹介する。
■井上尚弥の経歴:世界を席巻するモンスターに成長
井上尚弥は、1993年4月10日、神奈川県座間市に生まれると、アマチュア選手だった父・真吾氏の指導の元、小学1年時からボクサー人生をスタートさせた。弟の拓真も兄に続くにようにボクシングを始めている。
小学高学年時からその才能の片鱗を見せ始め、年上相手にも勝利するようになっていた。新磯高校(相模原青陵高校に改称、現在は相模原弥栄高校)初年度からインターハイ・国体・選抜の三冠を記録すると、国際大会、全国選手権での優勝などを経て、3年時までに高校生でのアマ7冠を達成した。
この高校時代には、のちのWBAスーパー・WBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗や、2020年東京五輪52kg(フライ)級銅メダリストの田中亮明に対する勝利も含まれる。
高校卒業後の2012年4月、当時開催が迫るロンドン五輪を目指し、予選を兼ねるアジア選手権(カザフスタン・アスタナ)ライトフライ級部門に出場したが、決勝で判定負け。五輪切符は手にできなかった。
同年中にプロ転向に切り替え、大橋ジムに入門。メディアから「アマチュアの怪物」と喧伝されるなか、10月2日、クリソン・オヤマオを4回KOで撃破し快勝デビューを飾ると、4戦目に日本ライトフライ級王座、5戦目にOPBF東洋太平洋ライトフライ級王座を獲得。6戦目にはWBC世界ライトフライ級王座挑戦となり、王者アドリアン・エルナンデスを6回TKOに下し、当時日本人男子最速の世界タイトル獲得を果たした。
8戦目には2つ上のスーパーフライ級に転向。2014年12月、当時無敵を誇ったWBO同級世界王者オマール・ナルバエスを2回KOに沈め、2階級制覇。しかし、この試合で右拳を負傷し、翌年3月に手術を行うなど、以降、右拳のコンディションに度々悩まされることになる。
WBOスーパーフライ級王座を7度防衛後、2018年5月、WBA世界バンタム級(レギュラー)王者ジェイミー・マクドネルに挑戦。1回TKO勝ちで3階級制覇を決めた。同年7月には井上のバンタム時代をさらに加速させる『ワールドボクシングスーパーシリーズ』(WBSS)同級トーナメント参戦が発表され、10月にファン・カルロス・パヤノとの1回戦に出場。元WBA同級スーパー王者をまたしても1回KOで粉砕する。
2019年5月の準決勝ではエマヌエル・ロドリゲスを2回TKOで退け、IBF王座と『The Ring』誌認定王座を獲得。そして2019年11月の決勝では、WBA同級スーパー王者ノニト・ドネアとの激闘を演じた。プロでは3度目の判定決着となったが3−0で勝利。大会優勝を飾った一方、鼻と右目眼窩底骨折の代償を負った。
2020年に入ると井上は次の目標としてバンタム級4団体王座統一を視野に、当時の対抗王者たちとのマッチアップを模索。WBO王者ジョンリール・カシメロ(のちに王座剥奪)との統一戦が4月開催で決まるもコロナ禍の影響で中止となったが、ジェイソン・モロニー、マイケル・ダスマリナス、ケンナコーン・ルアンカイモックを相手に防衛を重ねると、WBC王者になっていたノニト・ドネアとの再戦が決まった。
2022年6月、ドネアとの第2戦は、初戦とは全く違う展開となり、初回から井上の猛打が爆発。2回TKOで日本人初の3団体統一に成功した。4団体統一戦実現ならバンタム級にとどまるというプランを示唆していた通り、同年12月にWBO王者ポール・バトラーとの対戦が決まる。試合ではバトラーの超消極的戦法に手間取るも、11回KOでねじ伏せ、4団体時代になってからは日本人・アジア人初のアンディスピューテッド王者となった。
2023年1月、バンタム級全王座を返上し、4階級目となるスーパーバンタム級転向を発表。のちにWBC・WBO世界同級王者スティーブン・フルトンとの対戦が決定した。当初5月7日に横浜アリーナで開催予定だったが、井上の拳の負傷により7月25日に延期、会場も有明アリーナに変更となった。
フィジカル面やクレバーなテクニックなどから過去最強のライバルと目されたフルトンだったが、井上の強打とカウンターに手が出ず、8回TKOで決着。井上は転向初戦で2つのベルトを獲得した。井上はフルトン撃破直後にWBA・IBF王者マーロン・タパレスと4団体統一戦との約束を交わした。
タパレスとの4団体統一戦は、同年12月23日に対戦決定。事前情報とは違うタパレスのディフェンシブな戦術に時間はかかったものの、じっくりとパンチを当て続け、10ラウンドKO勝ち。テレンス・クロフォードに続く男子史上2人目の2階級4団体統一に成功した。
その試合直後、井上は噂される2024年5月の試合についてファンに後押しを要請した。それは、WBC世界バンタム王座を巡る山中慎介への「2度の悪行」により、日本ボクシング界から事実上永久追放処分を受けている『悪童』ルイス・ネリとの対戦を示唆していた。
国内での実現が難しいとされる中、舞台が東京ドームに内定したことで、JBCもネリが厳格な薬物および体重検査を受け入れたこともあって処分解除へ。
2024年5月6日、日本ボクシング界34年ぶりとなる東京ドーム興行で、井上vsネリが実現した。井上はまさかのキャリア初ダウンを喫し、4万3,000人の観衆がどよめくも、すぐに修正。一転して防戦一方となったネリを6回TKOでねじ伏せた。
■井上尚弥の最新試合:伏兵ドヘニーに完全KO勝ちなるか
悪童ネリもあっさり成敗した井上の次戦は、TJ・ドヘニー。当初予定されていたサム・グッドマンに次ぐWBO2位のベテランとして世界王者復帰を目指してきた。世間からは消化試合と揶揄されているが、規格外のリカバリー能力で試合当日12kg超えの戻しからの初回KO勝ちを記録しており、特に左のボディやオーバーハンドは、一発の怖さを持っている。
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■井上尚弥のプロフィール・戦績
- 本名:井上尚弥
- ニックネーム:モンスター(The Monster)
- 出身地:神奈川県座間市
- 生年月日:1993年4月10日(31歳)
- 身長:165cm
- リーチ:171cm
- スタイル:オーソドックス
- 階級:スーパーバンタム級
- アマ戦績:81戦75勝(48KO / RSC含む)6敗
- プロ戦績:27戦27勝(24KO)0敗
■井上尚弥が獲得したプロ・アマタイトル
井上尚弥は、アマチュア時代から「怪物」と称され、ライトフライ級の賞レースを席巻した。
中学3年時に第1回全国U-15ジュニアボクシング大会で優秀選手賞に輝くと、新磯高校(在籍時に相模原青陵高校に改称)1年時に全国高等学校総合体育大会(インターハイ)、国民体育大会(国体)、全国高等学校ボクシング選抜大会の三冠、アジアユース選手権3位入賞を果たす。
2年時には国体を連覇し、全日本アマチュア選手権準優勝。3年時になると、自身初の国際大会となったインドネシア大統領杯を制したが、世界選手権フライ級部門ではベスト16に終わった。その後2度目のインターハイ優勝に加え、全日本アマ選手権を初制覇したことで、高校生初のアマチュア7冠を成し遂げた。
プロ転向以降は、2013年8月25日に第36代日本ライトフライ級王座を獲得。同年12月6日には、空位のOPBF東洋太平洋ライトフライ級王座決定戦にて同王座を勝ち取った。
2014年4月6日のキャリア初の世界戦以降は、12の世界タイトル獲得とひとつのトーナメント優勝を飾っている。
▼プロ世界タイトル歴(日付は初獲得時)
- 2014年4月6日:WBC世界ライトフライ級王座(防衛1)
- 2014年12月30日:WBO世界スーパーフライ級王座(防衛7)
- 2018年5月25日:WBA世界バンタム級王座(防衛8、内2019年11月のドネア戦以降スーパー王座として5)
- 2019年5月18日:IBF世界バンタム級王座(防衛6)
- 2019年5月18日:『The Ring』誌(リングマガジン)認定世界バンタム級王座
- 2019年11月7日:ワールドボクシングスーパーシリーズ・バンタム級トーナメント優勝(2019年)
- 2022年6月7日:WBC世界バンタム級王座(防衛1)
- 2022年12月13日:WBO世界バンタム級王座(防衛0、スーパー王座に認定)
- 2023年7月25日:WBC世界スーパーバンタム級王座(防衛2、現王者)
- 2023年7月25日:WBO世界スーパーバンタム級王座(防衛2、現王者)
- 2023年12月23日:WBA世界スーパーバンタム級スーパー王座(防衛1、現王者)
- 2023年12月23日:IBF世界スーパーバンタム級王座(防衛1、現王者)
- 2023年12月23日:『The Ring』誌(リングマガジン)認定世界スーパーバンタム級王座(現王者)
■井上尚弥のプロ全試合リスト
戦数 | 試合日 | 対戦相手 | 時間 | 補足情報 |
1 | 2012年10月2日 | クリソン・オマヤオ(フィリピン) | 4R 2:04 KO勝ち | A級ライセンス認定(8回戦)でのプロデビュー戦 |
2 | 2013年1月5日 | ガオプラチャン・チュワタナ( タイ) | 1R 1:50 KO勝ち | |
3 | 2013年4月16日 | 佐野友樹(松田) | 10R 1:09 TKO勝ち | |
4 | 2013年8月25日 | 田口良一(ワタナベ、日本フライ級王者) | 10R 判定3-0勝ち | 日本ライトフライ級王座獲得 |
5 | 2013年12月6日 | ヘルソン・マンシオ(フィリピン) | 5R 2:51 TKO勝ち | 王座決定戦でOPBF東洋太平洋ライトフライ級王座獲得 |
6 | 2014年4月6日 | アドリアン・エルナンデス(メキシコ、WBC世界ライトフライ級王者) | 6R 2:54 TKO勝ち | WBC世界ライトフライ級王座獲得 |
7 | 2014年9月5日 | サマートレック・ゴーキャットジム(タイ) | 11R 1:08 TKO勝ち | WBC世界ライトフライ級王座防衛1 |
8 | 2014年12月30日 | オマール・ナルバエス(アルゼンチン、WBO世界スーパーフライ級王者) | 2R 3:01 TKO勝ち | WBO世界スーパーフライ級王座獲得 |
9 | 2015年12月29日 | ワーリト・パレナス(フィリピン) | 2R 1:20 TKO勝ち | WBO世界スーパーフライ(以下SF)級王座防衛1 |
10 | 2016年5月8日 | デビッド・カルモナ(メキシコ) | 12R 判定3-0勝ち | WBO世界SF級王座防衛2 |
11 | 2016年9月4日 | ペッバーンボーン・ゴーキャットジム(タイ) | 10R 3:03 KO勝ち | WBO世界SF級王座防衛3 |
12 | 2016年12月30日 | 河野公平(ワタナベ) | 6R 1:01 TKO勝ち | WBO世界SF級王座防衛4 |
13 | 2017年5月21日 | リカルド・ロドリゲス(米国) | 3R 1:08 KO勝ち | WBO世界SF級王座防衛5 |
14 | 2017年9月9日 | アントニオ・ニエベス(米国) | 6R 終了 TKO勝ち | WBO世界SF級王座防衛6 |
15 | 2017年12月30日 | ヨアン・ボワイヨ(フランス) | 3R 1:40 TKO勝ち | WBO世界SF級王座防衛7 |
16 | 2018年5月25日 | ジェイミー・マクドネル(英国、WBA世界バンタム級レギュラー王者) | 1R 1:52 TKO勝ち | WBA世界バンタム級レギュラー王座獲得 |
17 | 2018年10月7日 | ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ) | 1R 1:10 KO勝ち | WBSS1回戦、WBA世界バンタム級防衛1 |
18 | 2019年5月18日 | エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ、IBF世界バンタム級王者) | 2R 1:19 TKO勝ち | WBSS準決勝およびWBA・IBF世界バンタム級王座統一戦 WBA防衛2、IBF・The Ring誌世界バンタム級王座獲得 |
19 | 2019年11月7日 | ノニト・ドネア(フィリピン、WBA世界バンタム級スーパー王者) | 12R 判定3-0勝ち | WBSS決勝およびWBA世界バンタム級スーパー王座と同レギュラー王座・IBF王座との統一戦 WBA防衛3、IBF防衛1 |
20 | 2020年10月31日 | ジェイソン・モロニー(オーストラリア) | 7R 2:59 KO勝ち | WBA防衛4、IBF防衛2 |
21 | 2021年6月19日 | マイケル・ダスマリナス(フィリピン) | 3R 2:45 TKO勝ち | WBA防衛5、IBF防衛3 |
22 | 2021年12月14日 | アラン・ディパエン(タイ) | 8R 2:34 TKO勝ち | WBA防衛6、IBF防衛4 |
23 | 2022年6月7日 | ノニト・ドネア(フィリピン、WBC世界バンタム級王者) | 2R 1:24 TKO勝ち | WBA・WBC・IBF世界バンタム級王座統一戦 WBA防衛7、IBF防衛5、WBC獲得 |
24 | 2022年12月13日 | ポール・バトラー(英国) | 11R 1:09 KO勝ち | WBA・WBC・IBF・WBO世界バンタム級王座統一戦 WBA防衛8、IBF防衛6、WBC防衛1、WBO獲得 |
25 | 2023年7月25日 | スティーブン・フルトン(米国) | 8R 1:14 TKO | WBC/WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ |
26 | 2023年12月23日 | マーロン・タパレス(フィリピン) | 10R 1:02 KO | WBA/WBC/IBF/WBO世界スーパーバンタム級王座統一戦 WBC/WBO防衛1 WBAスーパー/IBF/The Ring誌王座獲得 |
27 | 2024年5月6日 | ルイス・ネリ(メキシコ) | 6R TKO | WBA/WBC/IBF/WBO世界スーパーバンタム級王座統一戦 WBC/WBO防衛2 WBAスーパー/IBF防衛1 |
28 | 2024年9月3日 | TJ・ドヘニー(アイルランド) | 試合前 | WBA/WBC/IBF/WBO世界スーパーバンタム級王座統一戦 |
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