【SNが選ぶ2010年代最高の選手】男子サッカー編:リオネル・メッシ

Mike DeCourcy

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リオネル・メッシが偉大であることは2010年代が始める前からわかっていた。その時点で既にメッシは世界最高のサッカー選手に贈られるバロンドールの投票で3位以内に3度入っており、2009年には大差で同賞を獲得していたのだ。

だが、この時点ではメッシのキャリアはまだ人間の域にあったともいえる。

2008-09シーズンのFCバルセロナが戦った全試合を通して、メッシは合計で38得点を挙げた。それにはラ・リーガ・リーグの31試合で挙げた23得点も含まれる。素晴らしい数字ではあるが、突出した人間の誰かが毎年のように挙げることが可能な数字でもある。過去10年間でプレミア・リーグのゴールデン・ブーツ賞を受賞した選手の年間平均得点数は30得点だ。最多はモハメド・サラーの32得点(2018年)、最小はカルロス・テベスとディミタール・ベルバトフの20得点(2011年)だ。

2010年代に入ってからのメッシの成績は、かつて誰も近づくことさえ考えもしなかったようなレベルにある。それはあたかもスパイダーマンに変身する前の(冴えない)ピーター・パーカーとの違いのようなものだ。

  • 2010年のメッシの得点数: 47
  • 2011年のメッシの得点数: 53
  • 2012年のメッシの得点数: 73

バルセロナとアルゼンチンのチームメイトとして長年メッシを知るミッドフィルダーのハビエル・マスチェラーノはメッシを評して、こんなことを言っている。

「メッシは人間じゃないかもしれないよ。だけどメッシ自身は自分が人間だと思っているのは喜ばしいことだ」

実際のところ、メッシがやっていたことは彼が地上に現れる前には誰も想像すらできなかったようなことだ。ニューヨーク・ヤンキースのベーブルースが1921年に54本のホームランを記録したとき、それ以前の最多記録は29本だった(しかもそれもベーブルースが記録したものだ)。メッシが2010年代初頭の数年で挙げた数字はそれと同じぐらい圧倒的だった。英語にはこのような記録を表現する単語に”Ruthian”がある。“ルースのような“と言う意味で、必ずしもすべての辞書には載っていないが、スポーツニュースでは度々目にすることがあるだろう。

メッシが2010年代の10年間で記録した年間平均得点数は52.3得点だ。これは言うまでもなく驚異的なものだ。シーズン平均で最大のライバルであるクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード、のちにユヴェントスFCへ移籍)より4点多い。アシスト数になると、メッシの平均は20で、ロナウドは13だ。メッシはまたこの10年間で5回バロンドールを受賞し、ここでもロナウドより1回多い。

メッシの得点とアシストのおかげで、バルセロナはラ・リーガ優勝を7回、コパ・デル・レイ優勝を5回、そしてUEFAチャンピオンズリーグ優勝を2回飾っている。バルセロナはまたFIFAクラブワールドカップにも2回出場し、ここでも優勝を飾っている。

メッシの偉大さを示す尺度として、バルセロナが最後にチャンピオン・リーグで優勝してから既に5年が経ったことが驚きをもって捉えられることが挙げられる。もっとも国内リーグでは5年のうち4回優勝しているのであるが。

もう1つメッシの偉大さを示す尺度は、アルゼンチンが3つの世界メジャー大会(2014年ワールドカップ、2015年コパ・アメリカ、2016年コパ・アメリカ・センテナリオ)で優勝できなかったことが批判の的になることも挙げられる。

メッシはそれほどまでに自身に向けられる期待値を上げてしまったのだ。

元イングランド代表でチェルシーのディフェンダーだったジョーン・テリーが現役時代にこんな言葉を残している。

「メッシは間違いなく史上最高のサッカー選手だ。そのメッシに挑戦できることは大きな喜びだよ。引退した後は史上最高の選手に挑んだことを誇りに思うだろうね」

数字で見るリオネル・メッシ

  • 2014年から2019年にかけてのリーグ得点数: 166
  • 2014年から2019年にかけてのリーグアシスト数: 68
  • 2014年から2019年にかけてのバルセロナの得点数: 527
  • メッシがバルセロナの得点に絡んだ確率: 46.2%

他からの評価

「もしメッシの右足、左足、そして頭を貰ったとしてもメッシにはなれない。メッシは攻撃と防御の両方に優れている。速く、ドリブルが巧みで、パスもさらに優れている。もちろんゴールを決める能力もね」― シャビ(元FCバルセロナに所属したミッドフィルダー)が2010-11年シーズン中に発言。

次の10年を担うのはキリアン・エムバペ

キリアン・エムバペはまだ10代のときにワールドカップ優勝を経験し、21歳になったばかりだ。エムバペはこの世代においてもっともダイナミックなフォワードであり、そのスピードとボール・コントロールに比肩できる選手は少ない。2017年にパリ・サンジェルマンFCへ移籍して以来、67試合に出場して55得点を挙げている。そこにはチャンピオンズリーグの21試合で挙げた13得点も含まれる。

だが、エムバペがパリに留まる限り、クラブ同士の戦いでは大きな勝利を得るのは難しいかもしれない。パリ・サンジェルマンFCはエムバペが加入してからチャンピオンズリーグでベスト16より上に進出したことがない。ネイマールとエディンソン・カバーニがチームメイトにいるにもかかわらずだ。

パリ・サンジェルマンFCはフランスのリーグ・アンにおいては最強クラブではあるが、エムバペがいることを考えれば、さらに上を目指すべきだろうし、そうでなければ、エムバペは英国、スペイン、あるいはイタリアへ移籍し、サッカー界におけるもっと大きな勲章を得るチャンスを探すべきではないだろうか。

(翻訳:角谷剛)

Mike DeCourcy

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Mike DeCourcy has been the college basketball columnist at The Sporting News since 1995. Starting with newspapers in Pittsburgh, Memphis and Cincinnati, he has written about the game for 35 years and covered 32 Final Fours. He is a member of the United States Basketball Writers Hall of Fame and is a studio analyst at the Big Ten Network and NCAA Tournament Bracket analyst for Fox Sports. He also writes frequently for TSN about soccer and the NFL. Mike was born in Pittsburgh, raised there during the City of Champions decade and graduated from Point Park University.