2006年8月、私は妻と共に休暇で英国を訪れた。我々は、陽気なエジンバラの街にあるホテルから、数ブロック離れたイタリア料理店に向かって歩いていた。その途中で通りかかった店先に、週末に開催されるプレミアリーグのオッズが書かれた張り紙が掲げられていた。その店は、合法なスポーツブックメーカーだったのだ。
その１週間後、我々はロンドンの西にあるクレイヴン・コテージ・スタジアムでプレミアリーグの試合を観戦した。座席に向かう途中、高校フットボールの試合のチケットを売っているような、オンボロの小屋を通り過ぎた。実際には、その小屋でフラムFCとシェフィールド・ユナイテッドの試合の投票権が購入できるのだ。
アメリカのスポーツ賭博文化は20世紀のままだ。
アメリカでは1992年に、スポーツ賭博が連邦法で違法とされたが、米連邦最高裁判所は14日、これを違憲とした。アメリカの大半は何十年もの間、この分野で世界から後れを取っていたが、これでスポーツ賭博事業の運営を望む州では、すぐに認可が得られるだろう。
この45年間、基本的に快適かつ合法的にギャンブルを楽しむことができたのは、ネバダ州のみだった。しかし残り49州の当局は、アメリカ人がインターネットを通じて賭けを行う、海外のブックメーカーを追跡することはなかった。そして、驚くべきことに、健全なメディア組織も海外のブックメーカーからの広告を受け入れていた。
スポーツ賭博を禁止することが無意味で非生産的であることは、明らかだ。
ゲストがウエストゲート・ラスベガス・リゾート&カジノで行われた2018年の大学男子バスケットボールトーナメントの観戦パーティーに参加している（画像：Getty Images）
この政策がどれほどバカげていたのか、NBAやMLBの動きを見れば明白だ。今や、以前は先頭に立って合法化に反対していたNFLやNCAAと協力して、スポーツ賭博で生まれる利益の分け前にあずかろうと方向転換しているのだ。
スポーツ賭博が広く合法化されると、八百長の危険性が大きくなることが懸念される。
実際、そのようないかさま行為を検挙する警察の役割を果たすのはいつも、合法ブックメーカーなのだ。八百長をほのめかす、怪しげで不可解な動きに常に警戒している。1994年、アリゾナ州立大学のステヴィン・スミスが八百長で捕まった時、彼の異常な動きに気づき、当局に報告したのは、ネバダ州の合法ブックメーカーだった。
アメリカでは、非公式のスポーツ賭博で賭けられている金額は、ネバダ州の合法ブックメーカーの賭け金の10倍と推計されている。非公式のブックメーカーは、八百長の疑いのある試合の場合、賭け金の受け付けを拒否できるが、合法のブックメーカーと同じように、あるバスケの試合が怪しいとFBIに電話で通報することはできない。
賭けが合法だという理由だけで、スポーツの八百長行為がなくなることはない。テニスやサッカーなど、世界中で様々な事案がある。この国でも起こる可能性はある。ネバダ以外の州に合法のスポーツ賭博が広がっていけば、このような問題は少なくなるはずだ。
「スマートで効率的な規則を通じて、この新しい市場が消費者を守り、我々の愛するギャンブルの健全性を保ち、違法賭博と戦うために警察に権限を与えます。また、州やスポーツ団体、放送局やその他機関に利益をもたらします」米連邦最高裁判所の判決後に米国ゲーミング協会（AGA）のジェフ・フリーマン会長は述べた。「我々AGAは、州、部族、スポーツリーグ、警察など、全てのステークホルダーと協力していく準備が整っています。この機会を活用して、ファンを巻き込み地域経済を活性化する、新たな規制環境を作り出すのです」。
ステイプルズ・センターやリグレー・フィールドで、投票権売り場を見ることは今後もないだろうが、ニュージャージー州を皮切りに、他の州でもカジノでスポーツ賭博ができるようになる日は近い。
他の国より数十年の後れを取ってはいるが、やっとその時が来たようだ。
原文：America's bet against sports gambling was always a big loser
翻訳：Atsuko Sawada
