ESPN危機、一時解雇で8000万ドルのコスト削減か(前編)

Michael McCarthy

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大手スポーツメディアESPNは、ここ数週間以内に人員削減を計り、8000万ドルのコストカットを実現すると見られている。

ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下である当スポーツメディアは、ここ2年間で3度目となる一時解雇を行うと予想されている。11月下旬から12月初旬にかけて最大60人が解雇される見込みだと、Sporting Newsが初めて報道した。後にSports Illustratedのリチャード・ドイチュは、その影響が100人にまで及ぶ可能性があると伝えている。

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4月にもESPNはジョン・クレイトン、トレント・ディルファー、ブリット・マクヘンリーら馴染みのキャスター、レポーター、ホスト100人を一時解雇した。2015年10月には、ガス・ラムジーやゲリー・マタロンら評判の良かった重役を含む従業員300人が一時解雇された。

それでもESPNの圧倒的な存在感には刃向かえない。これまでで最大の成功を収めているスポーツケーブルネットワークは、FS1などのニューカマーを萎縮させる。対立を深めるNFLのロジャー・グッデル・コミッショナーとダラス・カウボーイズのオーナー、ジェリー・ジョーンズの戦いを伝えるドン・バン・ナッタ・ジュニアとセス・ウィカーシャムなど、次々にニュースを伝えるワールドクラスの記者たちもそろっている。

若い消費者と繋がるため、写真共有アプリ「Snapchat」で看板番組である「SportsCenter」を配信し始めた。ホストを務めるのはケイティ・ノラン、エル・ダンカン、カシディ・ハバースだ。最も個性豊かな深夜枠の「SportsCenters」のキャスターを務める、スコット・バン・ペルトとは再契約を結んだところである。それに、奮闘しているメディア業界でESPNだけが人員削減に踏み切っているわけではないのだ。

ただし、数字は嘘をつかない。

『SportsBusiness Journal(SBJ)』によると、ESPNはたった6年で1300万人の契約者が解約し、10億ドルもの収益減をもたらした。NFLの「Monday Night Football」に19億ドル、NBAに14億ドルと、中継権獲得のために投資をしずぎたというのが業界関係者ら共通の見解だ。SBJは更に、ゴールデンタイムにおけるESPNの視聴率が2016年に19%落ちたと伝えている。ウォルト・ディズニーの利益向上どころか、ESPNが足を引っ張り、ウォール・ストリートのアナリストたちもヒヤヒヤしているのが現状だ。

一方、ESPNはここ数年、複数の有能なキャスター、アナリスト、リポーターらの給与を上げ、FS1などの競合他社に社員を持っていかれないようにした。今春、その高い給料を失った人たちもいた。ただしESPNは彼らの新しい仕事が見つかるまで、給料全額を払い続けなければならないという窮地に立たされている。実現には至っていないというのが現実だ。『Awful Announcing』は、会社の負担を考えると、将来的にも実現は難しいのではないかとしている。

ESPNは3つの点で計算違いをしてしまった。計画よりも契約者数が少なかったこと。見込みよりも出費が多かったこと。望んでいたより視聴率が低かったこと。

本社ブリストルで働く従業員たちに一抹の不安がよぎる。「ESPNのために働くのではない、ESPNと結婚するのだ」という言い習わしがある。多くの従業員はコネチカット州で夜も週末も働き続けるため、結婚する相手も同じくESPNの従業員であり、子供の遊び相手も同僚の子供になる。履歴書に傷がつく、つかないという単純な問題ではないのだ。

後編につづく)

Michael McCarthy

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Michael McCarthy is an award-winning journalist who covers Sports Meda, Business and Marketing for Sporting News. McCarthy’s work has appeared in The New York Times, Sports Illustrated, The Wall Street Journal, CNBC.com, Newsday, USA TODAY and Adweek.