IOCバッハ会長が彭帥さんとビデオ電話で無事を確認と公表

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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現地時間11月21日、中国高官との不倫告白以来、消息不明となった著名テニス選手の彭帥さんと、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長がオンラインビデオ通話を行ったとIOC(スイス・ローザンヌ)公式サイトが伝えた。

同2日の告発後から消息を絶った彭帥さんに、スティーブ・サイモン会長ら女子テニス協会(WTA)関係者が直接コンタクトを取ろうとしていたなか、同18日、中国の国営メディアが中国ではほとんど使われないTwitterに、本人のものとするEメールのテキスト画像を公開した。メールの宛先とされたサイモンWTA会長は「本人のものとは疑わしい」と懸念を表明。事態解決が見られないなら、WTAの中国市場撤退も有り得るとして強固な姿勢を見せていた。

ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、大坂なおみ、セリーナ・ウィリアムズ(米国)らテニス界のトップスターたちもSNSを使って彭帥さんの安否を懸念し、解決を求める声も挙げ始めた。

タイミング的にも来年2月開催予定の北京冬季五輪に関連して国際的な懸念が表明されるなか、保守派の下院議員から彭帥さんの身柄と公的な調査について中国側に圧力をかけるべきという書簡がジョー・バイデン米大統領に送られるというニュースもあれば、国連人権高等弁務官事務所の報道官が、「(中国側は彭帥さんが)どこにいるのか、無事なのか、はっきりさせることが重要」と指摘する事態にもなった。

こうした動きを受け、中国側は彭帥さんの身柄が安全であることを裏付けようと次々とアクションを起こした。

20日には彭帥さんが自室でぬいぐるみに囲まれて過ごす複数の写真が国家当局関係メディアの関係者によって公開された。さらに21日、中国国営メディア「環球時報」編集長・胡錫進(こ・しゃくしん)氏のTwitterアカウントに、彭帥さんが友人たちと食事をする動画を公開された。胡氏は「近く本人が登場する」というコメントを添えたが、同氏は"習近平のスポークスマン"とも呼ばれる人物だ。

このいつ撮られたのか分からない動画について、WTAのサイモン会長は「彭帥さん自身の安否の保証、また、検閲や強制なしメッセージを発信することに関する懸念の払拭はできていない」と引き続き懸念を表明した。

胡氏の予告通り、国内のテニス・ジュニア大会のゲストとして彭帥さんが公に来場したとして、大会主催者が中国のチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」の公式ページで写真を公開した。前述の胡氏のTwitterアカウントにも動画が投稿された。

そして日本時間22日の未明、今度はIOCのトーマス・バッハ委員長が彭帥さんとオンラインビデオ電話で30分間会話をしたとIOCは公表した。IOCは公式サイトでその模様を写真つきで公開し、無事であることを本人の口から聞けたと記した。

IOCの記事では、彭帥さん本人が「北京の自宅で安全で健やかに過ごしているが、現時点ではプライバシーを尊重してもらいたい」と話したとし、「彼女は今、友達や家族と過ごすことを優先している。今後もテニスに関与し続けるでしょう」と説明した。

しかし、ここまで公開された情報は、彭帥さん本人のSNSや公式サイトではなくすべて外部からの発表であるため、サイモン会長の"検閲なしのメッセージ発信"への懸念を裏付ける格好になっている。英国国営メディア『BBC』では、米ニューヨークで開催されたフェミニストのイベント参加者らの声として、「彼女は真に自由ではない」「彼女は(彼女自身や家族が)安全な状況でいるため、言いたいことを何も言うことができない」というコメントを伝えた。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

神宮泰暁 Yasuaki Shingu Photo

日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。