ウィンブルドン選手権のロシア・ベラルーシ選手排除にルブレフが「完全な差別」と批判


神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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現地時間4月20日、テニス4大大会のひとつ「ウィンブルドン選手権(英国ロンドン、芝、グランドスラム)」を主催するオールイングランド・ローンテニスクラブは、ロシアとベラルーシ選手の出場禁止を発表した。当事者となったロシア出身の男子シングルス世界ランキング8位のアンドレイ・ルブレフは「完全な差別」だとして非難した。

ウィンブルドン選手権(6月27日〜7月10日)の主催者オールドイングランドローンテニスクラブは、「不当かつ前例のない軍事的侵略の状況下において、ロシアやベラルーシの選手の参加による何らかの利益をロシア政権が得ることは容認できない」という声明のもと、ロシアとベラルーシの選手の2022年度大会の出場を認めないことを正式に発表した。

これまでテニス界では、ロシアとベラルーシ選手については、男子プロテニス協会(ATP)と女子テニス協会(WTA)はともに国旗、国歌の使用をせず、個人資格での参加を認める方針を採ってきた。ATPとWTAは、ウィンブルドン側の決定を非難する声明を出し、明確な差別行為であり、テニス界は、ウクライナへの人道的支援を行なったうえで、ロシアとベラルーシ選手個人の中立の立場を守るべきだと主張した。

WTAは何らかの措置を検討するとしているが、そもそもは英国政府のスポーツ庁がロシア選手に対して、プーチン政権への不支持を表明する覚書を書かせるという”踏み絵案”がベースにあった。このアイデアは当該選手やその家族をプーチン政権の標的にしかねず、ウィンブルドン主催者は一律に排除という選択を取ったとみられている。主催者は表向きこの案を示さなかったが、女子シングルス世界25位のエリーナ・スイトリナらウクライナ選手は両国の選手に対し、同様の質問書に回答することを要求している。

第二次世界大戦直後のドイツと日本の選手が排除されて以来となる国籍を理由にした出場禁止措置に対し、男子シングルス世界ランキング8位のアンドレイ・ルブレフは、ウィンブルドンの決定を「非論理的で完全な差別」と糾弾した。

「彼ら(主催者たち)が私たちに科した理由は意味がなく、とうてい論理的とはいえない。今起こっていることは、私たちに対する完全な差別です」

AFP通信の取材に対し、そう声をあげたルブレフのほかにも、トップ30までみても、男子シングルス世界2位のダニール・メドベージェフ(ロシア)、同26位のカレン・カチャノフ(ロシア)、女子シングルス世界ランク4位のアリナ・サバレンカ(ベラルーシ)、同15位のアナスタシア・パブリュチェンコワ(ロシア)、同18位のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、同26位のダリア・カサトキナ(ロシア)、同29位ベロニカ・クデルメトバ(ロシア)が排除の対象となる。

ウィンブルドン主催者の決定には、男子シングルス世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)も「クレイジーだ」と批判している。同じくチェコ出身でウィンブルドン9度制覇の元世界女王マルチナ・ナブラチロワも排除決定に対して懸念を表明した。

サバレンカら強豪女子選手を抱えるベラルーシテニス連盟は、国際的な法律事務所に法的な助言を求めており、何らかの法的そ手段にでる可能性がある。同連盟は、「国家ベースでの憎悪と不寛容を扇動する行為」だとして、ウィンブルドン主催者の決定に対して遺憾の意を示している。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu


神宮泰暁 Yasuaki Shingu Photo

日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。