豪から退去のジョコビッチ、今後のツアー参加にも暗雲か

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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現地時間1月16日、全豪オープン(17日開幕)に出場予定だったノバク・ジョコビッチ(セルビア)がオーストラリア政府による2度目のビザ取り消し撤回の裁判に敗れ、同国を退去した。ワクチン未接種である限り、今後も同様の事態が懸念されている。

全豪OP開幕の17日の前日となる16日日曜朝、豪政府の移民相アレックス・ホーク氏の裁量権によって発したジョコビッチのビザ再取り消しに対する法廷審問が行われ、3人の裁判官が全会一致でジョコビッチ側の上訴を退けた。

6日にオーストラリア入りしたジョコビッチは、当初、オーストラリアテニス協会と全豪OP主催者が指定した2つの独立した検査機関からワクチン接種義務の医学的免除を得ていた。だが、豪政府の国境警備隊は、この医学的免除の証拠が不十分だとしてビザを取り消し、ジョコビッチと関係者の身柄を拘束。移民用宿泊施設に移送した。

ジョコビッチ側は、昨年12月16日にセルビア国内でのPCR検査で陽性になったあと、22日に陰性となったことからワクチン接種ができなかったという証拠資料を提示。10日月曜日にビクトリア州裁判所によって一旦、ビザ取り消し命令は撤回された。自由の身となったジョコビッチはロッド・レーバー・アリーナで練習を開始していた。

しかし、ホーク移民相はビザの再取り消しを示唆。ジョコビッチの担当弁護士は再審理のため新たな証拠資料を提示したが、この間にジョコビッチが豪入国前の旅行についてしていないと回答していたにも関わらず、スペインに滞在していた虚偽申告が発覚したほか、セルビア国内で隔離期間を無視し、マスクなしでイベントや取材に応じていた事実が明るみになった。

虚偽申告は代理人の人為的ミスと自身の管理ミスを釈明したジョコビッチだが、旗色は悪く、豪の国民感情の沈静化に腐心するスコット・モリソン政権の政治的思惑もあり、ビザ再取り消しは濃厚とされた。14日の正式なビザ再取り消しを受け、ジョコビッチ側も再控訴の運びとなるも、16日の裁判でビザ再取り消しが確定。国外退去を命じられた。

憔悴した様子をみせたジョコビッチは、「ビザを取り消すという(ホーク)移民相の決定と、司法審査の申請を却下するという判決に酷く失望している。全豪OPに参加することができなくなった」と悔しさをにじませた。諦観したように「裁判所の判決を尊重し、国外退去に関して関係当局に協力します」と話し、16日中にオーストラリアから退去した。オーストラリアのスポーツキャスターがメルボルン空港を離れる直前のジョコビッチの姿を公開している。

17日の全豪OP開幕戦で、ジョコビッチと対戦予定だったミオミル・ケツマノビッチ(セルビア)の相手は、サルバトーレ・カルーソ(イタリア)が繰り上げ出場となった。

全豪4連覇・通算10度目の制覇を逃したジョコビッチには、今後も暗雲が立ち込める。全豪OP後には通常、米国におけるBNPパリバ・オープン(インディアンウェルス)、マイアミ・オープンというマスターズ1000大会が続くツアースケジュールとなるが、米国はワクチン接種を義務化している。さらに認可ワクチン接種から14日以上経過と3日以内のPCR検査での陰性証明が必要だ。

5月の全仏オープンのフランス(外国人は接種義務免除)、6月のウィンブルドン選手権の英国(未接種者は10日間の検疫)は比較的緩い入国条件だが、米国以外にも入国者へのワクチン接種を義務付けている国もある。今回同様に医学的免除を得る必要があり、無益に神経をすり減らすことになりかねない。

また、英国ではオミクロン株の爆発的感染状況から、社会活動優先のコロナ対策に変更が求められている。こうした動きが欧州全体に波及しかねず、各国の入国審査への影響は避けられないだろう。

全仏OPでグランドスラム通算優勝21回の記録更新が狙えるとしても、男子シングルス世界1位からの陥落は免れないかもしれない。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。