米下院議員が彭帥失踪事件の調査を求めバイデン大統領に書簡

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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中国政府高官との不倫を告白以降、消息不明となっている著名女子テニス選手・彭帥(ポン・シュアイ)さんについて、米国の下院議員ジム・バンクスが、ジョー・バイデン大統領に政府として人権保護のため、中国に圧力をかけることを求める書簡を送ったと明かした。

中国の国際的テニスプレーヤーの失踪事件が、米国議会にも飛び火したようだ。

女子テニスダブルス元世界1位の彭帥さんは、11月2日の中国SNS『Weibo』上で、中国の元副首相である張高麗氏との不倫関係と性的被害を訴えた直後から消息不明に。以降、テニス界のトップスターたちが彭帥さんの安否を案じてSNSで声を挙げた。

WTAのスティーブ・サイモン会長は公的な調査を要求し、彭帥さんの身柄の確認を急いだが、本人とは接触できず、18日になってサイモン会長宛の本人のものとされるメールテキストが中国メディアから突如リークされた。

しかし、「不倫告発は嘘で、自分は安全で家で休んでいるだけ」というその内容に対し、サイモン会長は本人のものとは疑わしいと判断。改めて彭帥さんの身柄の安全と調査を求める声明を出していた。

この事件に関連してWTAサイモン会長の中国市場撤退発言などが取りざたされるなか、19日、米インディアナ州のジム・バンクス共和党下院議員が、彭帥失踪事件に関して、ジョー・バイデン大統領へ書簡を送ったとしてTwitter上にその全文を公開した。

バンクス議員は、彭帥さん事件の詳細とともに、人権をないがしろにする中国側に米政府として公的な調査と対応を求めるべきと主張した。

「彭帥さんの安全に関する問い合わせに中国が満足のいく回答をするまで、中国との対話を一時停止して頂きたい。また、彭帥さんの身柄や性的被害について適切に処理されない場合、北京五輪を主催する中国に悪影響を及ぼし、国際的なボイコット運動を悪化させるだけだと、中国当局に警告することをお勧めします」

バンクス議員は保守派の急先鋒のひとりで、共和党の中国タスクフォースメンバーだ。また、前大統領ドナルド・トランプ氏のシンパとして知られており、この書簡もどちらかといえば「共和党議員による民主党のバイデン大統領への政治的圧力」の側面が強い。

このバンクス議員の書簡公表まもなく、元世界女王セリーナ・ウィリアムズも彭帥さんの消息不明を案じる投稿を自身のSNSで公開した。

「彭帥のニュースを聞いて、私は打ちのめされ、ショックを受けました。彼女が無事で、できるだけ早く見つかることを願っています。この件は調査する必要があり、私たちは黙っていてはいけない出来事です」

セリーナは大坂なおみ同様、#whereispengshuaiのハッシュタグを加え、事件解決を訴えた。中国国内ではこの失踪事件は報じられておらず、いわば「なかったこと」にされている。英紙『Express』によると、彭帥さんの『Weibo』の告発は投稿の20分後に削除され、ネット上で話題になり始めると、中国政府が「テニス」を含むキーワードをブロックして封殺されたという。

一部メディアはセリーナの投稿は、バンクス議員の書簡に触発されたためではないかという推論を伝えたが、セリーナは過去に「トランプ氏に投票しない」と明言したことがあり、たまたまのタイミングだった可能性が高い。テニス界スーパースターたちの働きかけが状況を変えるのか続報が待たれる。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。