中国政府高官からの性的暴行被害を訴えた直後から消息が不明となっている国際的女子テニス選手、彭帥(ポン・シュアイ)さんについて、11月18日、進展があり、中国メディアが本人のメール文章をリークした。しかし、本当に本人のものであるのか疑わしいと、メールの宛先であるWTAのスティーブ・サイモン会長がより深刻な懸念を表明するなど、新たな問題となっている。
2013年のウィンブルドン選手権・2014年の全仏オープンの女子ダブルス覇者で同ランキング世界1位にもなった彭帥さんは、11月2日、中国共産党最高指導部メンバーだった張高麗元副首相と不倫関係にあったとSNSで告白。WTAのサイモン会長が中国側に公正な調査を求めるなど動きがあったが、その後から消息を絶っていた。告白間もなくの段階では、サイモン会長も中国テニス協会などから彭帥さんの身柄が安全であることを確認したと語っていた。
国際的にも知られたテニス選手が消息不明になったことで、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)や大坂なおみらが懸念と安否を案じるなど、大きな騒動となっていた。
そんななか、18日に中国メディア『中国国際テレビ(CGTN)』が、彭帥さんがWTAのサイモン会長に宛てたメールとする文面のスクリーンショットをTwitterで公開。「性的被害を含むWTAの発表は真実ではありません。私は行方不明ではなく、危険な状態でもありません。家で休んでいるだけで全て順調です」という文面だった。
しかし、メールの宛先とされるサイモン会長は、この文章が「本人が実際に書いた、あるいは(この文面に)本人の意思が関わっているものとは信じがたい」と疑いの目を向けた。不可解な中国国営メディアによるリークなどの点から、「彼女の安全と行方への懸念が高まっただけである」と断じた。
今回の中国側の一連の対応に大きな懸念を示したサイモン会長は、中国市場からのWTA撤退も示唆している。折しもチベット・ウイグル問題でボイコット論がくすぶる北京五輪を3か月後に控えたなか、米国が(選手は派遣する)外交的ボイコットを検討するという報道も出たばかりだ。彭帥さんの事件は北京五輪に飛び火し、国際的な問題に発展しかねない状況にある。
英国国営メディア『BBC』では、上海特派員記者が中国国内でこの事件について報道されていないと伝えている。また、リークされたテキスト画像内にカーソルがあることから(3行目の「and」の間にある)、誰がどこで撮ったものなのか疑問を呈した。カーソルは文章を編集できる状態でなければ表示されず、信ぴょう性は疑わしくなる。
Why is the cursor visible in this screenshot? Who’s taken that screenshot and when? Who sent it? #China #PengShuai #ZhangGaoli https://t.co/pUQaO4VC2H
— Stephen McDonell (@StephenMcDonell) November 17, 2021
「中国では時折著名人が消息を絶ちます。多くは億万長者のビジネスマンでした。アスリートでは例がありません」と指摘した。
過去に彭帥さんのケースと似た事件がある。2017年、投資会社「トゥモローグループ」のトップだった肖建華(Xiao Jianhua)さんは、香港のホテルで失踪後、香港紙『明報』で、自身が安全であることや誘拐されてはいないことを強調する声明を発表。だが、その後も消息不明のままになっているという。
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