フェデラーの全米OP欠場にナダルも続く?…ジョコビッチの年間GS達成に追い風となるか、それとも重圧となるか

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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ATP世界シングルスランク9位のロジャー・フェデラー(スイス)が膝の手術を受けるため、8月30日開幕の全米オープン欠場を発表した。足の故障を抱える同4位のラファエル・ナダル(スペイン)も前哨戦を欠場して医師の診断を受けるべくスペインに帰国しており、全米OPを回避する可能性がある。年間グランドスラムの偉業達成を狙うノバク・ジョコビッチ(セルビア)にとっては追い風となりそうだが…。

フェデラーは、現地時間8月15日、自身のInstagramに動画を投稿し、3度目の膝の手術を受けることと全米オープン欠場を明らかにした。「長い休養が必要という診断で、膝の手術を受けることに決めた」と話した。長期間ツアーから離れている現状ながら、「健康でいるため、良い状態でツアーに戻るための希望を持っていたい」という理由から3度目の手術を決めたという。

「何週間も松葉杖をついて、何ヶ月もツアーを離れるだろう」。40歳という自身の年齢故に手術を受けることが難しい判断だったことを述べながらも、復帰への目標を持つことが今の危機を乗り越え、さらにその先の将来の生活に向けてベストな選択であることを強調している。フェデラーは今年のウィンブルドン選手権準々決勝敗退後、ツアーを離脱。東京オリンピックも辞退し、全米OP前哨戦もすべて欠場していた。

また、ビッグ3のもうひとりで、2019年の全米OP覇者であるナダルもまた左足に爆弾を抱え、不透明な状況にある。

8月の全仏OPの準決勝でジョコビッチに敗れた後、ナダルはウィンブルドンと東京五輪出場を欠場し、1ヶ月半ほどの療養・調整期間を経て、8月2日開幕のナショナルバンクOPに出場。1回戦で同192位のジャック・ソック(米国)に2-1で勝利するも、ロイド・ハリス(南アフリカ)との2回戦を棄権した。16日からのウエスタン&サザンOPも欠場している。

英国紙『Express』などによると、ナダルは全米OP出場可否を見極めるため、自国スペインに戻り、かかりつけの医師の診断を受けるという。2005年から左足のケガに悩まされていることを明かしているナダルだが、フランス通信社『AFP』によると、「この数ヶ月、この問題を抱えていたんだ」と明かしており、「最も重要なのはテニスを楽しむことだが、この痛みではそれができない」と話し、回復の道を探るためにスペインのマヨルカ島に戻ることを示唆していた。状況的に全米OPも欠場になる可能性が高いとされる。

フェデラー、ナダルと並ぶ、グランドスラム通算20回優勝のジョコビッチにとっては極論で言えば好材料だ。両者の欠場により、ビッグ3のなかで最初の通算21回到達、さらに男子では52年ぶり史上3人目の"年間グランドスラム(カレンダースラム)"達成への追い風となる。現在男子の世界ランキング1位在位期間の最長記録を更新し、女子と合わせても、史上2番目の長さを誇る。

しかし、その分、全米OP優勝へのプレッシャーは重くのしかかる。男子初の"ゴールデンスラム"を目指して出場した東京五輪では、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)との準決勝で逆転負けを喫し、3位決定戦でもパブロ・カレーニョ・ブスタ(スペイン)にも敗れ、メダルを逃した。東京の暑さもあったかもしれないが、偉業達成へのプレッシャーは超人的プレーヤーであるジョコビッチにも何らかの影響を与えたことは想像に難くない。"回復の必要性"を理由にジョコビッチもウエスタン&サザンOP出場を回避した。

ゴールデンスラムは逃したものの、52年前の1969年、ロッド・レーバー以来となる"年間グランドスラム"達成のうえで、全豪OP、全仏OP、ウィンブルドンをすでに制しているジョコビッチにとって、残すは全米OPのみ。ジョコビッチのキャリア最大の正念場といえる状況だ。懸念材料は己との戦いだけではない。

長らくビッグ3が君臨した男子シングルスにおいて、24歳のズベレフがジョコビッチを下して決勝に進み、金メダルを手にした事実は大きい。全米OPでもズベレフや、東京五輪銀メダルのカレン・ハチャノフに加え、ダニール・メドベージェフ(ともにロシア)、ステファノス・チチパス(ギリシャ)らの20代前半世代がジョコビッチの偉業達成を阻むかに注目が高まっている。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。