なぜクロップは遠藤航を獲得したのか リバプールにぴったりのスタッツ?

Ben Miller

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この移籍市場でどう動くか最も注目されていたひとつは、今夏中盤のファビーニョ、ナビ・ケイタ、ジョーダン・ヘンダーソン、ジェームズ・ミルナーが全員退団したリバプールだった。

ユルゲン・クロップ監督が守備的MFの補強を望んでいたことは、2023-2024シーズンの最初から明らかだった。だが、ターゲットだったモイセス・カイセドとロメオ・ラビアは、いずれもチェルシーへの移籍を望んだ。

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そのリバプールが獲得したのが、日本代表キャプテンを務める30歳の遠藤航だ。シュトゥットガルトと合意した移籍金は、約1620万ポンド(約29億9700万円/1ドル=185円換算)。遠藤は「長期契約」でリバプールに加わることになった。

なぜリバプールは遠藤を獲得したのか? その理由や遠藤のスタッツなどをまとめる。

なぜリバプールは遠藤航を獲得した?

敵地スタンフォード・ブリッジでのチェルシーとのプレミアリーグ開幕戦の2日前となる8月11日(現地時間)、リバプールはカイセド獲得でブライトンとイギリス史上最高額となる1億1100万ポンド(約205億3500万円)で合意。補強を実現させたかに思われた。

だが数時間後、カイセド本人がチェルシーへの移籍を希望とのニュースが飛び込んだ。

そしてカイセドの希望はかなえられた。夏を通じて動いてきたチェルシーが、リバプールとの開幕戦を1-1で終えた翌日、提示額を当初の1億ポンドから1億1500万ポンド(約212億7500万円)に上げて獲得に成功したのだ。

一方で、ラビアに関しても同じような状況となった。カイセドの獲得が失敗に終わり、リバプールは6000万ポンド(約111億円)でサウサンプトンと合意。しかし、選手本人がカイセドと同じ道を選んだのである。

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Chelsea

特に中盤3枚の底で攻守両面にわたり要だったファビーニョを筆頭とする主力たちの退団で、リバプールは中盤を再び活性化させ、不本意だった2022-2023シーズン以前の強靭さを取り戻す必要が増していた。

ヘンダーソン同様にサウジアラビアリーグへと去ったファビーニョは、昨季のリバプールでトレント・アレクサンダー=アーノルドに続くインターセプト(37)を記録した選手だ。タックル数もアレクサンダー=アーノルドと2差の36回。その他のチームメイトたちより12回も多い。

デュエル勝利(126)もフィルジル・ファン・ダイクに次ぐ数字で、ボール奪還は180回。アレクサンダー=アーノルドに続き、アンドリュー・ロバートソンに6差のチーム2位だ。それでも、ファビーニョは良いシーズンではなかったという声があったほどだった。

チェルシーとの2023-24シーズン開幕戦で、リバプールはアレクシス・マカリステルを守備的MFに起用した。

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Getty Images

3500万ポンド(約64億7500万円)で加入したマカリステルは、ロバートソンの11回に次ぐチーム2位の10回というボール奪還を記録。デュエル勝利はイブラヒマ・コナテと並ぶ7回だった。これは試合最多タイの数字だ。

粘り強さやパス能力でマカリステルは低い位置で活躍できる。だが、クロップ監督はワールドカップ優勝メンバーの彼がもっと攻撃的な役割を担うことを、少なくとも守備の責任にもっと制限されないことを望んでいるだろう。

中盤はマカリステルのほかにドミニク・ソボスライとコディ・ガクポだったが、6000万ポンドでRBライプツィヒから加わったソボスライは、ドイツで主に右ウィングだった。12月に3500万ポンドでPSVから加入したガクポは、オランダのエールディビジで当時リーグ最多の得点とアシストを記録していた選手で、移籍してからもリバプールでは主に攻撃陣で起用されてきた。

オープンな試合となった開幕戦について、データサイト『Opta』は「カイセドなら埋められる穴が両チームの中盤に目立った」と評している。

クロップも試合後、「見てのとおり、カバーすべきスペース、埋めるべきギャップがたくさんあった。それがこの試合における我々の問題だった」と話した。

そこで、遠藤の出番だ。

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遠藤航のスタッツ:なぜリバプールにとって完璧なのか?

2020年のブンデスリーガデビュー以降、遠藤はデュエル回数(1,274)が最多、ボール奪還(706)とタックル(207)で2位を記録している。

クロップは中盤のベテランを信頼してきた。昨季のプレミアリーグでファビーニョが出場しなかったのは2試合のみ。ヘンダーソンは3試合だ。ミルナーはほぼすべての試合に出場しており、公式戦で6試合を負傷欠場したのみだった。

遠藤も信頼できる選手だ。ブンデスリーガデビュー以降、リーグで最長となる出場時間(8,783)を記録。昨季もリーグ戦で出場しなかったのは、脳震とうの規定で欠場した1試合のほかは43分間だけだ。

遠藤はセンターバックとしてもプレイできる。そして、リバプールのスポーツディレクターであるヨルグ・シュマトケドイツは、22年にわたって4つのクラブで国外移籍を手がけてきただけに、遠藤のことをよく知っているだろう。

得点力のある選手ではないが、遠藤はシュトゥットガルト時代に大事な場面でゴールを決めてきた。そのひとつは、2シーズン前の最終節アディショナルタイムにチームの残留プレイオフ行きを回避させた一発だ。この瞬間、遠藤は英雄の地位を手にした。このゴールを忘れることはないはずだ。

チームが16位から最下位の間でリーグ戦の大半を過ごした昨季も、遠藤は最後の3試合で4得点に関与。リーグ戦最後の8試合を1敗で乗り切ったシュトゥットガルトは、入れ替えプレイオフでハンブルガーSVに2戦合計6-1と勝利し、ブンデスリーガ1部残留を果たしている。

シュトゥットガルトが残留を争う上で、リーグのボトム7(13~18位)で失点数が最少だったことは大きい。そしてそこに貢献したのが、最終ラインの前の「スクリーン」だった遠藤だ。

ブンデスリーガは遠藤の選手プロフィールでクロード・マケレレになぞらえた。レアル・マドリーでラ・リーガと欧州の王者となり、2003年から2008年まで在籍したチェルシーではUEFAチャンピオンズリーグ決勝進出に貢献し、プレミアリーグ優勝2回を含むイングランドのあらゆるトロフィーを勝ち取った、高く評価される元フランス代表MFだ。

彼らは遠藤を「エンジンルームの奥深くで絶えず危険を警戒し、前に出る際の適切な選択肢をすぐに把握する」選手で、2006年のワールドカップでファイナリストとなったマケレレのように「タフだが正確なタックルの能力と、守備を切り裂くパスを出す目を持つ」と評した。

シュトゥットガルト元スポーツディレクターのスベン・ミスリンタットかつて、「センターバックだろうが守備的MFだろうが、彼がそこにいて良いパフォーマンスをしてくれるのは良いことだ」と述べた。人としても選手としても遠藤は「シンプルに素晴らしいほど貴重」な質と評している。

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遠藤航の年齢:なぜリバプールは直近の傾向を覆して獲得した?

遠藤は2024年2月で31歳になる。カイセドやラビアよりもはるかに格安かもしれないが、リバプールがこれまで獲得してきた選手と比べて年齢面の疑問がある。

ラビアは19歳、カイセドは21歳だ。8年にわたるクロップ体制で、リバプールが30歳以上のフィールドプレイヤーを獲得したのは、2019年のラグナル・クラバンしかいなかった。

リバプールの中盤で遠藤よりも年上なのは、チアゴ・アルカンタラだけだ。また、この夏で完全に退団した6選手のうち4選手が30歳を過ぎている(10月で30歳のファビーニョを含む)。

ただ、遠藤は2月で30歳になったばかりだ。守備の仕事に対するハードな姿勢に衰えの兆候が見られないだけに、クロップは例外とすることをあまり心配していないのかもしれない。

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遠藤航のキャリア:トロフィー、他のMFとの比較

遠藤は2021年開催の東京オリンピックで日本のベスト4に貢献。日本では湘南ベルマーレでJ2優勝、浦和レッズでJ1優勝やAFCチャンピオンズリーグ優勝を経験している。

シュトゥットガルトではブンデスリーガ1部の99試合に出場(26勝)。23得点に関与している。チームが準決勝まで勝ち進んだ2022-2023シーズンのDFBポカールで1ゴールを記録した。

2023年8月17日までの一年間に基づく『Fbref』の比較では、遠藤に最も近い選手として、フェリックス・ヌメチャ、アドリアン・ラビオ、ミケル・メリーノ、ニコラス・ドミンゲスがあげられている。

そのほか、遠藤に最も近い選手の10名には、バルセロナのガビやマンチェスター・ユナイテッドのカゼミーロといった選手の名前もある。

原文:Why Liverpool are signing Wataru Endo: Stats, position, FIFA rating for midfielder set to join from Stuttgart(抄訳)
翻訳:スポーティングニュース日本版編集部

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Ben Miller has been writing about sport for 25 years, following all levels of football as well as boxing, MMA, athletics and tennis. He’s seen five promotions, three relegations, one World Cup winner and home games in at least three different stadiums as a result of his lifelong devotion to Brighton & Hove Albion. His main aim each week is to cover at least one game or event that does not require a last-minute rewrite.