日本はAFCアジアカップ2023出場国の中でFIFAランキングが最上位であり、大会の優勝候補だ。それは久保建英のような選手たちを擁するところが大きい。
かつてバルセロナとレアル・マドリーに在籍した久保は、レアル・ソシエダがUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)でベスト16に進出する上で重要な役割を担った。2022-2023シーズンのファイナリストであり、現在のセリエAで首位に立つインテルと同組ながら、ソシエダはグループステージを首位通過している。
大会に向け、久保は「並外れたタレント」と称賛された。ソシエダの今季のリーグ戦総得点の約3分の1に絡んでいる。その創造力は、日本が2011年以来のアジアカップ制覇を目指す中で発揮されることだろう。
『スポーティングニュース』では、スペインの2大クラブでの経験を含む久保のこれまでの歴史や、今後に関する移籍の噂などをまとめた。
久保建英:年齢・ポジション・キャリア
2001年6月4日に川崎で生まれた久保は、22歳だがすでに欧州のエリートクラスでの経験が豊富だ。それは幼少期にバルセロナから見いだされたことに始まる。
地元で開催されたバルセロナのキャンプで、久保はベストプレイヤーに選ばれた。そしてバロンドール受賞8回のリオネル・メッシら、多くのタレントを輩出してきたことで知られる有名なバルセロナのアカデミー「ラ・マシア」に入団する。
久保は攻撃的なミッドフィルダーないしフォワードで、シャドーストライカーとしてのプレイや右サイドでのドリブルが巧みだ。『Breaking the Lines』は2022年の分析で、ボール奪取のためのハードワークや、右サイドから切り込んで左足を駆使し、クレバーなパスを出すことを強調している。
だが、未成年選手に関するFIFAの移籍規約違反の調査で、久保はバルセロナでプレイすることができず、クラブは手放すことになった。
その後、久保はFC東京や2018年の横浜F・マリノスへのレンタルを経て、2019年にレアル・マドリーと契約。以降はマジョルカに2回、ビジャレアル、ヘタフェとレンタル生活を続ける。
欧州でその才能が初めて開花したのは、ソシエダに移籍した2022-2023シーズンだ。UEFAヨーロッパリーグ(UEL)でのベスト16、そしてラ・リーガでの4位に貢献した。
2023-2024シーズンも「ラ・レアル」と久保は好調だ。年越し時点でソシエダは6位につけ、UCLではグループステージ最高の守備で決勝トーナメント進出を果たしている。
久保は国際経験も豊富だ。日本代表では15歳だった2017年にFIFA U-20ワールドカップに出場。18歳の時には2019年のコパ・アメリカにも招集された。
A代表デビューは2019年6月、18歳の誕生日から5日後のことだった。さらに2021年に母国で開催された東京オリンピック2020や、FIFAワールドカップ2022にも出場。同大会で日本は優勝経験国のドイツやスペインに勝利し、サプライズのグループステージ首位通過を果たしている。
久保建英のレアル・ソシエダでのスタッツ・ゴール・出場試合数
ソシエダでの1年目、久保がラ・リーガとUELで出場しなかったのは4試合のみ。UELグループステージでは2アシストを記録し、ソシエダがマンチェスター・ユナイテッドを抑えてグループ首位通過を果たすのに貢献した。この2つの大会で42試合に出場し、18得点に関与している。
2023-24シーズンの開幕から最初の出場11試合で8得点に絡んだことは、ソシエダの成功における久保の役割が増していることを示す。ラ・リーガでは最初の7試合で5得点をマーク。ホームでのグラナダ戦では2得点をあげており、2点目はペナルティーエリアの中で見事なカーブがかかったスペクタクルなゴールを決めている。
UCLではインテルとベンフィカが有利と見られる中、ソシエダの首位通過に貢献。グループステージの全試合に出場し、そのうち5試合でスタメンに名を連ねた。ソシエダは3位ベンフィカに8ポイント差をつけ、アウェーでは無失点。無敗で決勝トーナメントに駒を進めている。
スペインサッカーに精通するPhil Kitromilides記者は、『Optus Sport Football Podcast』で「彼にとって完璧な移籍だった。今、我々は彼がレベルアップするのを見ている」と話した。
「今季は彼がUCLで好パフォーマンスを披露するのを見てきた」
「ラ・リーガで毎週良いプレイをしているだけではない。彼はステップアップしており、UCLで優れたチームを相手に本当に支配している」
シーズン | 出場(先発) | 得点 | アシスト | イエロー/レッドカード |
2022/23 | 44 (34) | 9 | 9 | 3/0 |
2023/24* | 25 (21) | 6 | 4 | 2/0 |
*現地1月2日時点
なぜ久保建英はバルセロナを退団?
18歳以下の選手を保護するための国際移籍に関するFIFA規約19条の違反でバルセロナが最初に調査された際、名前があがった12選手のひとりが久保だった。
バルセロナは抗議し、方針変更を望んだが、久保は日本に帰国を余儀なくされた。その日本でFC東京のユース入りしている。バルセロナは久保が成人してからの契約を望んでいると報じられた。
だが、そこで出てきたのが、バルセロナのライバルであるマドリーだ。英紙『The Guardian』によれば200万ユーロ(約3億1800万円/1ユーロ=159円換算)の移籍金で久保を獲得。年俸100万ユーロ(約1億5900万円)の6年契約を結んだ。
Sid Lowe記者は、バルセロナが久保の要求を満たすことを望まなかったと報じた。また、UCLラウンド16でソシエダが対戦するパリ・サンジェルマンも、当時関心を寄せていたという。
久保建英の移籍の噂:マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、レアル・マドリー?
今季、久保は6000万ユーロ(約95億4000万円)の契約解除金(バイアウト)や欧州強豪からの関心が何度も報じられている。
9月には『Fichajes』が、アーセナルが契約解除金を支払っての獲得を望んでいると報じた。タイトルを目指す中、年末から年をまたいで不調なアーセナルだけに、久保を狙う可能性は高まったかもしれない。だが、アーセナルはサイドや攻撃的ミッドフィルダーの選択肢に事欠かず、純粋なストライカーの必要性が急務と見られる。
また、『AS』の報道として『Sport Witness』が伝えたところによると、ユナイテッドはブラジル人ウィンガーのアントニーと引き換えに久保を獲得する可能性を検討しているという。
冬の移籍市場開始が近づくにつれ、久保の去就を巡る憶測は増している。『The Sun』はユナイテッドが久保を7回視察しており、ソシエダは4300万ポンド(約79億5500万円/1ポンド=185円換算)のオファーを受けると報じた。
アントニーはユナイテッドで今季22試合に出場しているが、得点もアシストもない。ユナイテッドは先日、チームから外されていたジェイドン・サンチョを古巣ボルシア・ドルトムントにレンタル移籍させている。
『Marca』紙は、マドリーが3300万ユーロ(約52億4700万)の買い戻しオプションを行使するかもしれないと報じた。ソシエダが久保を売却した場合、移籍金の50%がマドリーに支払われると伝えている。
Kitromilides記者は「久保は並外れて才能のある選手で、ソシエダでのこの1年半で本当に進歩した選手だ」と話した。
「彼は非常に才能のある選手だよ」
※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。
翻訳:坂東実藍
編集:スポーティングニュース日本版編集部