【コラム】元英国代表FWが語る三笘薫:史上最高の日本人選手になれる可能性(ジェイ・ボスロイド)

Jay Bothroyd

【コラム】元英国代表FWが語る三笘薫:史上最高の日本人選手になれる可能性(ジェイ・ボスロイド) image

サッカー元イングランド代表フォワード(FW)で、Jリーグでもプレーしたジェイ・ボスロイド氏が、英プレミアリーグのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFCでまばゆいばかりの輝きを放つ日本代表・三笘薫について語る。

▶三笘所属ブライトンほかの試合結果を予想して豪華賞品をゲット!


三笘薫はプレミアリーグ屈指のウィンガー

1月の欧州サッカー移籍市場で、ブライトンはモイセス・カイセドの流出を免れたが、次の夏の移籍市場では、もう一人のスター選手獲得に、大金が積まれることを覚悟したほうがいいだろう。

三笘薫は、現在のプレミアリーグで屈指のウィンガーだ。これはすごいことだ。これまで何人の日本人選手がプレミアリーグで成功を収めただろうか? 彼は史上最高の日本人選手になる可能性がある。いや、すでに、なっているかもしれない。

先週、FAカップのリヴァプール戦で三笘が決めたゴールは美しかった。しかし、あのプレーに驚くべきではない。

私はJリーグにいた頃から、川崎フロンターレで輝く三笘を絶賛していた。そのときの川崎は、2020年のJ1と天皇杯を制覇した。おそらく、日本サッカー史上最高のチームだ。

ワールドカップ以降、7試合に先発し4得点を挙げている、いまの三笘を見ると、川崎時代の彼を思い出す。彼は簡単そうに相手を抜いていく。頭もきれる選手だ。だからこそ、カタールW杯で出場時間が少なかったことを残念に思う。日本代表の森保一監督には彼なりの戦略があったわけだから、あまり非難したくはないが、そこには日本的な考え方があったように私には思える。

「いいか。ワールドカップは一世一代のチャンスなんだ。だから、いまのベストメンバーを選ばせてくれ」と言うのではなく、この舞台まで連れてきてくれた選手への強い忠誠心があった。たとえば、鎌田大地は出場すべきではなかったが、プレーの良し悪しにかかわらず、評判がいいという理由でスタメン入りしていた。出場するたびに違いを生み出していた浅野拓磨は、先発出場するべきだった。

三笘は素晴らしく、相手にとっては常に脅威となる。中に切れ込んで得点を決められるし、外に開いてプレーすれば、チャンスを演出できる。どこかのビッグクラブが彼と契約しても不思議ではない。トッテナムか、または、リヴァプールやマンチェスター・シティに行く可能性もある。それくらいの選手だ。ただリヴァプールは、いまは彼を見ることすら嫌かもしれない!

関連記事:ジェイが日本代表のW杯を振り返る 「最も優れていた選手と残念だった選手は…」

もし三笘がマンチェスター・シティに加入したら…?

三笘は間違いなく、ラファエル・レオンやクヴィチャ・クワラツヘリアと同じくらいの実力を持っていると思う。近々、1億ポンド(約160億円。1ポンド=160円換算)以上の市場価値になるだろう選手たちだ。でも、残念ながら、ヨーロッパや他の伝統的なサッカー大国出身ではなく、日本人だからという理由で、三笘は彼らほどの評価は受けないだろう。

もし三笘がマンチェスター・シティに加入したら、どうなるだろう? ブライトンのスタイルはシティのものと似ているところがある。ただ、シティのほうが実力の高い選手が多いというだけだ。もし、いまのシティで、左ウィングにジャック・グリーリッシュと三笘のどちらを使うかと聞かれれば、私なら三笘を選ぶだろう。

グリーリッシュの能力が低いと言いたいわけではなく、三笘のほうがシティに合っていると思うのだ。必要とされる献身性を持っている。川崎では、そのようなプレーをしていた。個人よりもチームが優先される、日本的なスタイルだ。一方のグリーリッシュがアストン・ヴィラで成功したのは、ピッチ上を自由に駆け回ってボールを受けることができたからだ。

グリーリッシュ本人も、(シティの)決まったシステムの中でプレーすることに慣れるまで苦労したと語っている。三笘はそのような環境でのプレーにもともと慣れていた上に、(ブライトンで)さらに成長した。

関連記事:ジェイが持論「メッシ対ロナウドの論争は終結した」

三笘の存在が日本サッカーにとって大きな転機に

三笘のような存在は、日本の古い慣習を打ち破ってくれるだろう。レアル・ソシエダの久保建英にも同じことが言える。

日本の文化では、「傲慢」(arrogance)という言葉は、常に悪く捉えられるが、サッカーで成功するには、ピッチ上での、「いい意味での傲慢さ」が必要だ。ピッチ外で礼儀と敬意を忘れないことは、どの文化においても欠かせないが、ピッチに立ったら多少の傲慢さが求められる。

共にプレーした川辺駿や三好康児など、日本には、ほかにもヨーロッパで活躍できる能力のある選手たちがいた。でも、当時の日本には、選手が1対1のコーチングを受けられる環境がなかったので、私が助言をした。いまは改善されてきているが、まだ先は長いだろう。

元チームメイトの中で、ヨーロッパに行った選手たちには、「海外に行って成功しろ。そして、日本に帰ってきたら他の選手たちにマインドセット(考え方)を教えろ」と伝えていた。帰国して日本サッカーに恩返しをしてほしい。もっと、そういう選手が増えてほしい。

三笘にとっては、この恩返しが遠い未来になることを願う。いま、三笘は最上級のリーグで最高の選手になる実力があることを示している。これは日本サッカーにとって、大きな転機になり得るだろう。

翻訳:早坂卓真

▶サッカーを観るならDAZNで。スマホやTVでスポーツをいつでも楽しもう


【動画】元磐田&札幌FWジェイ・ボスロイドが語る日本サッカー

 

Jay Bothroyd

Jay Bothroyd Photo

Jay Bothroyd is a columnist for The Sporting News, offering his expert take on the world of football. Jay enjoyed an illustrious career in England as a striker with the likes of Wolves, Cardiff City and QPR, and spent time with Perugia in Italy. He moved to Asia in 2014, where he enjoyed a goal-filled spell in the J. League with Jubilo Iwata and Hokkaido Consadole Sapporo. He has played for his country at both junior and senior level, making his full international debut for the Three Lions against France in 2010. As well as writing for TSN, Jay is an established TV pundit in the U.K.