三冠を達成したマンチェスター・シティ
マンチェスター・シティがついにUEFAチャンピオンズリーグ(CL)のトロフィーを手に入れた。優勝が想定されるようになってからかなりの年月を要したが、それで構わないだろう。シティはすべてを手に入れたからだ。
プレミアリーグ、FAカップ、そしてCLというシティの三冠を語る上で、クラブオーナーの尽きることない富の影響や、その一部を生かすことで、シティ同様にジョゼップ・グアルディオラ監督が率い、リオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタ、シャビのトリオを擁したバルセロナ以来となる最高のチームをつくろうとしてきた意欲に言及しないわけにはいかない。
2010-2011シーズンのバルセロナは、ラ・リーガを勝ち点96で制し、CLと合わせて二冠を達成した。そのバルセロナ以来の世界最高チームがシティなのかを議論するのは興味深い。ただ、直近のシティほど常に好パフォーマンスを披露してきたチームはないだろう。
シティは2017-2018シーズン、プレミアリーグで勝ち点100、得失点差79という記録をつくった。翌シーズンも勝ち点98と得失点差72を達成している。2022-2023シーズンはアーセナルを追い抜く必要があったが、勝ち点89でリーグ優勝を果たした。
ただ、最も大事なのは、数々のトロフィーを勝ち取ることだ。だからこそ、近年のサッカー界におけるエリートクラスの水準として、リーガ、CL、FIFAクラブ・ワールドカップを制した2016-2017シーズンのレアル・マドリーが、宿敵バルセロナに匹敵する存在と論じられてきたのだ。
そして、シティもようやくすべてを手に入れたのである。
「ずっとこの大会で優勝することを夢見てきた」
MFベルナルド・シウバは『CBS Sports』で「ここに至るまでに本当にハードワークしてきた。そして今日ついに、自分たちにふさわしいものを手に入れたんだ。僕らは歴史をつくったんだよ」と話した。
「とても、とてもうれしい。圧倒的にキャリア最高の日だと思う。ずっとこの大会で優勝することを夢見てきた。今、そのトロフィーに触れられるんだ」
トルコのイスタンブールにあるアタテュルク・オリンピック・スタジアムでの決勝で、グアルディオラは攻撃の中心にケビン・デ・ブライネを置いた。ところがそのデ・ブライネが前半途中にハムストリングを痛め、ピッチに倒れ込む。長くプレイを続けられないのは明らかだった。シティは弱体化すると思われた。これほどの大一番でこれだけの選手を失えば、ほとんどすべてのチームがそうなっておかしくない。
しかし、グアルディオラ監督にとってはそれほどの懸念にならなかった。控えに若いフィル・フォデンがいたからだ。今季は先発出場29試合。イングランド代表で23キャップを記録し、EURO2020やFIFAワールドカップ2022でもスタメンをはった選手だ。『Transfermarkt.com』による評価額は1億1800万ドル(約165億2000万円/1ドル=140円換算)。チーム2番目の金額である。
そしてもちろん、フォデンは恐るべき存在となった。
それまでスコアレスだった試合に活気をもたらし、最終的にシティにトロフィーをもたらすことになったプレイに、フォデンは不可欠だったのだ。イルカイ・ギュンドアンがゴールラインを割りそうだったボールを残すと、そのギュンドアンからのパスを受けたフォデンは、中盤に向けて少しボールを運び、マヌエル・アカンジに託した。そしてそのアカンジが再び前方にボールを運び、最終的にロドリの決勝点につながったのだ。
この時点でまだ試合は約30分残っていた。そしてシティを脅かす場面もあった。そしてシティはイングランドで世紀の変わり目以来となる、同じ街のライバルであるマンチェスター・ユナイテッドしか成し遂げていなかった三冠を達成したのだ。
1999年のユナイテッドは、CL決勝で歴史に残る劇的な逆転勝利を収めた。シティの欧州制覇は、そこまでスペクタクルではない。だが、この最も栄えある目標を達成するまでクラブがどれほど要したかを考えれば、十分に劇的だった。
苦難の末にたどり着いたCL王座
シェイク・マンスール・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンによるクラブ買収以降、シティはイングランド国内でプレミアリーグやカップ戦を支配してきた。過去12シーズンでリーグ優勝は7回。FAカップ優勝3回、リーグカップ優勝6回を達成している。
しかし、CLでの彼らは主に犠牲者だった。グループステージ敗退が2回、ベスト16敗退が3回、ベスト8敗退が3回だ。これまで最も頂点に近づいたのは、決勝に進出した2020-2021シーズン。だが、ファイナルでチェルシーに0-1と敗れた。
今季のシティは、ここ約20年のCL決勝で最も圧倒的に有利と見られていた。それでも、インテルは簡単に優勝させてくれなかった。得点機会を制限された。だが、インテルも自分たちの重要な機会を決められず。そしてロドリの決勝点の場面では、特にずっと観客になっていたハカン・チャルハノールがもっとうまくやるべきだった。
見事な得点力を持つアーリング・ハーランドが、ただのおとりやお飾りになってしまった日ですら、シティはインテルにとってあまりに大きな存在だった。どのチームが相手でも、そうだったかもしれない。
ベルナルド・シウバは「イングランドでは2回目の達成だ」と話した。
「僕たちはとても、とてもうれしく思っている。これらをなし遂げるのは本当に大変だった。へとへとだよ。話すことすらできない。今季は本当に心身両面で疲れた。でも、その甲斐があったよ」
この困難な道のりにおいて、ベルナルド・シウバは55試合に出場し、3608分間プレイした。そしてシティはそれらの試合のほとんどに勝利した。勝つことも、負けるのと同じように疲れるものだ。だが、この疲労感にははるかにもっと豊かな味わいがあるだろう。
原文:Greatest Champions League team in history? Manchester City stake their claim after clinching treble in 2023(抄訳)
翻訳:スポーティングニュース日本版編集部
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