冬の移籍市場が近づくなか、ヨーロッパの各クラブは今季必要となるかもしれない人材だけでなく、来季も見据えた補強を考え始める。
2023-2024シーズンが終わるまではまだ半年以上あるが、欧州主要リーグの様々な選手が、現所属クラブとの契約が終わってからを見据えている。
現行契約が残り数か月となった選手たちは、1月に他クラブとプレ合意することができるようになる。来シーズンの新たな所属先が決まるのだ。つまり、1月1日以降に何人かのビッグネームの争奪戦が見られるようになるかもしれない。
『スポーティングニュース』では、夏に現行契約が満了する欧州のベストプレイヤーたちをまとめた。1月に安価な移籍金で狙われるかもしれないし、今季終了後のフリー補強の候補者となるかもしれない選手たちだ。
1月から他クラブと事前契約可能なフリー予定選手トップ10
2024年1月以降に新クラブとのプレ契約が可能なビッグネームのトップ10は以下のとおりだ。
10. マリオ・エルモソ(アトレティコ・マドリー|CB/LB)
移籍先候補:ユベントス、ノッティンガム・フォレスト、トッテナム
28歳の万能なディフェンダーであるエルモソは、今季のアトレティコの成功に大きく貢献している。ディエゴ・シメオネ監督の下で最終ラインの中央か左サイドでプレイし、様々な面でクオリティーをもたらす。
エスパニョールのクラブ記録となる移籍金で2019年にアトレティコに加入したエルモソだが、クラブとの長期契約に至らなければ、新たな居場所を見つけるかもしれない。あまり騒がれてはいないが、ユベントスが探りを入れているとの報道がある。過去の移籍市場では、プレミアリーグの複数クラブも動くと噂された。
9. ウィルフレッド・ディディ(レスター・シティ|CM)
移籍先候補:バルセロナ、トッテナム、セルティック
昨夏プレミアリーグから降格したレスターは、多くの主力を手放すかと思われた。だが、ミッドフィルダーのディディは残留し、今季活躍している。守備的MFとしての持ち前の強さに加え、アタッキングサードでのビルドアップでも貴重な存在だ。
26歳のディディの契約が今季限りとあり、バルセロナとトッテナムは関心を寄せるかもしれない。どちらも負傷者が出たことで中盤に突如として穴が生じたクラブだ。チャンピオンシップで首位に立つレスターは、昇格を目指すためにディディを残すのか、移籍金を確保するのかを天秤にかけなければならないだろう。ディディを獲得できるとなれば、冬の市場で人気銘柄となるかもしれない。だが、そうでなければ、レスターがプレミアリーグに昇格するかどうかにかかわらず、ディディは夏にフリーで退団する可能性がある。
8. シェラルド・ベッカー(ウニオン・ベルリン|ST)
移籍先候補:ウェストハム、フルアム、バーンリー、エバートン
ユニオン・ベルリンが衝撃的なUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)出場権を獲得して迎えた昨夏、退団もささやかれた29歳のストライカーだ。しかし、クラブは契約最終年のベッカーを残留させた。ベッカーは電光石火のスピードを持つ優れたフィニッシャーで、昨季は11得点、7アシストを記録している。だが、今季は違う。チームが各大会で苦戦しているからだ。
今季のベッカーはまだリーグ戦で得点をあげていない。ただ、貴重な機会を供給されることが少ないのだ。質の高いビルドアップをするチームにとっては、素晴らしい補強となるだろう。プレミアリーグの多くのクラブが、昨夏の関心を再燃させるかもしれない。
7. バレンティン・バルコ(ボカ・ジュニアーズ|LB/LW)
移籍先候補:マンチェスター・シティ、チェルシー、ブライトン
最後は惜しくも及ばなかったが、コパ・リベルタドーレスでボカが栄光に近づくのに貢献した19歳のバルコは、ヨーロッパへの移籍に迫っていると言われる。長くシティ移籍が噂されてきたが、プレミアリーグ王者には厳しい競争相手がいる。
このリストで選出された他の大半の選手と違い、ボカとの契約が年内いっぱいのバルコは、この冬に獲得可能だ。昨夏はブライトンが契約解除条項を生かして獲得しようと試みたが、獲得には至らなかった。今はイングランドのさらなるビッグクラブに関する噂がささやかれている。
6. ピオトル・ジエリンスキ(ナポリ|CM)
移籍先候補: リバプール、インテル、ユベントス、バルセロナ
クリエイティブで前方に飛び出す29歳のポーランド代表MFジエリンスキが、引く手あまたなのは疑いない。昨夏はアル・ヒラルからの誘いを断った。だが、それからわずか数か月、ナポリが昨季の最高潮から一歩後退しているなかで、ジエリンスキはすぐに移籍する可能性がある。
この冬、バルセロナはあらゆるMFの獲得が噂されており、ジエリンスキも例外ではない。だが、リバプールの関心も報じられており、イタリアのビッグクラブは常にセリエAの他クラブの選手を狙っている。
5. アントニー・マルシャル(マンチェスター・ユナイテッド|ST)
移籍先候補: サウジ・プロリーグ、ユベントス
ユナイテッドはマルシャルとの契約をさらに12か月延長するオプションを持つ。そのユナイテッドがフリーで退団させるほうが良いのか決めかねている様子なのが、選手の現状を物語っている。
マルシャルがユナイテッドと契約したのは8年前だ。良いパフォーマンスを見せた時もあるが、安定した調子とフィットネスを保つことができなかった。2023-24シーズンのマルシャルはラスムス・ホイルンドの控えとなっている。先発出場した直近のプレミアリーグのニューカッスル戦では、気の抜けたパフォーマンスをタッチライン際の指揮官に叱責された。
まだオールド・トラフォードでの未来はあるだろう。だが、ユナイテッドは高額年俸の負担を取り除く方が良いと決断するかもしれない。実際、過去にはその高額年俸から関心を示していたクラブが撤退した。『ESPN』は、昨夏マルシャルに真の関心を示したのは、資金力が豊かなサウジ・プロリーグだけと報じている。ただフリーになれば、より魅力的になるかもしれない。ユベントスが新たなフォワードを狙う可能性がある。
4. プレスネル・キンペンベ(パリ・サンジェルマン|CB)
移籍先候補:チェルシー、ユベントス
クラブのユース出身で、これまでのキャリアをすべてフランスの首都で過ごしてきた28歳のキンペンベが知るのは、パリ・サンジェルマンでの生活だけだ。だが、アキレス腱断裂で2月から戦列を離脱するなど、2シーズン連続でケガに悩まされているフランス代表には、環境の変化が適当かもしれない。
昨夏もチェルシーやユベントスから関心を寄せられたキンペンベだが、今回は移籍する可能性がある。才能あるセンターバックで、どのチームも加入してすぐに向上させられるだろう。だが、彼の獲得にはケガのリスクもある。新たにUCL出場クラスのクラブを見つけ、ピッチに立つことができれば、欧州のあらゆるクラブにとって質の高い補強となるだろう。
3. アドリアン・ラビオ(ユベントス|CM)
移籍先候補:マンチェスター・ユナイテッド、ニューカッスル、バルセロナ
昨夏、ユナイテッドはフランス代表のラビオをフリーで獲得する寸前と思われた。だが、ラビオは最終的にもう1年イタリアに残ると決断。ユベントスとの契約を1年延長した。ただ、また他クラブと契約を結ぶことができる状況になるラビオだけに、再び騒がしくなっている。
28歳のラビオが再びユベントスの本拠地トリノに残る可能性はある。だが、ユナイテッドとの交渉を再燃させるかもしれないし、ニューカッスルやバルセロナのようなケガに見舞われたチームに加わるかもしれない。フランス代表のレギュラーとして定着し、ユベントスでもスタメンが常のラビオには、多くの選択肢がある。
2. ギド・ロドリゲス(ベティス|DM)
移籍先候補:バルセロナ、マンチェスター・ユナイテッド、アトレティコ・マドリー
29歳のMFロドリゲスは、しばらく前からアルゼンチン代表入りするような選手だった。だが、最近のクラブと代表でのパフォーマンスから、2024年夏が近づくにつれ、フリー獲得を狙うビッグクラブから注目されている。純粋な6番タイプで、最終ラインの盾になれることができる選手だ。
ロドリゲスはアトレティコ移籍に近いと思われていた。だが、バルセロナがガビを負傷で失い、補強の選択肢を模索するように。状況はより複雑になった。ベティスがフリーで失わないように冬に売却する可能性はある。だが、彼らは欧州カップ戦出場権を競っており、ロドリゲスを失えば大きな痛手となるだろう。
1. キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン|FW)
移籍先候補:レアル・マドリー、リバプール
2024年夏の移籍市場におけるフリー選手で圧倒的に注目されるのが、以前からマドリー移籍が噂されてきたエムバペだ。
だが、2022年の出来事でクラブと選手の関係が疑われるようになり、別のクラブが割って入るかもしれない。パリ・サンジェルマンはすでに以前、何もないようなところから再契約に至った。一方、リバプールも潜んでいる。
2024年夏で契約満了を迎える他のフリー選手たち
今回のリストでは、より関心を引きそうな10選手を取り上げた。だが、今後プレ契約を結ぶ候補となり得るレベルの高い選手はほかにもたくさんいる。
トッテナムは長きにわたって戦ってきたエリック・ダイアーの今後を決めなければならない。ボーンマスも25歳のDFロイド・ケリーについて同様だ。
31歳のポルトFWメフディ・タレミは、新進気鋭のブラジル人エバニウソンにポジションを奪われるかもしれない。そのため、夏の移籍を見据えている可能性がある。30歳のウィンガーであるラファも、ポルトガルでの時間が終わりに近づいているかもしれない。ベンフィカで堅実なシーズンを過ごしており、関心を引く可能性がある。
ウェストハムのプレイメーカーであるパブロ・フォルナルスも、クラブでの出場機会を失い、夏にフリーで移籍するかもしれない。チャンピオンシップに降格したサウサンプトンでは、チェ・アダムスが苦しんでおり、プレミアリーグのクラブとの契約かフリー移籍を狙う可能性がある。
ケレチ・イヘアナチョも契約が最終年とあり、レスターが昇格しようがしまいが、関心を引きつけるかもしれない。
クラブがもう1年の延長オプションを持つ選手はほかにもいる。ユナイテッドの21歳ハンニバル・メジブリもそのひとりだ。まだ2024年夏までの契約を延長していないが、ユナイテッドは少なくともあと1年オールド・トラフォードで過ごさせるためにオプションを行使することができる。まだ新たな長期契約を結んでいないアーロン・ワン=ビサカも同じだ。ただ、チームメイトのヴィクトル・リンデロフ同様、26歳の右サイドバックは契約延長が見込まれている。
ウェストハムのMFトマーシュ・ソウチェクも同じだ。クラブには契約をさらに1年延長するオプションがあり、ほぼ確実に行使すると見られている。
原文:Free agents in 2024: Top football players eligible to sign pre-contract agreement in January for free transfer(抄訳)
翻訳:坂東実藍