日本代表、森保監督続投でどうなる?2026年W杯へ向けて求められる変化とは

林遼平 Ryohei Hayashi

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4年間の集大成となったカタールワールドカップが閉幕し、新たな4年間が始まる。

もっとも、「新たな」といっても指揮を託されたのは森保一監督。そう、日本サッカー協会が決断したのは新たな指揮官の招へいではなく、森保監督の続投だった。カタールではベスト8進出にあと一歩及ばなかっただけに、次の4年間では目標達成へ向けた積み上げが必須事項となってくる。

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果たしてこれからの4年間で求められることとは? どういった変化が日本代表に必要になってくるのか? カタールW杯でも現地で取材にあたった林遼平氏が考察する。

■8年の長期政権で見える新たな景色

12月28日、カタールW杯でベスト16に導いた森保一監督が次の4年間に向けて新たな契約に合意したことが発表された。W杯後にこれまでの監督が継続して指揮を執るのは日本サッカー史上初めてのことになる。2026年の北米開催となるW杯に向け、日本は新時代への道を踏み出したのだ。

正直なところ、再び森保監督が指揮を執ることに関しては最後まで疑問を持ち続けていた。東京五輪に続いてカタールW杯で目標を達成できなかったことや、最後まで攻撃面の構築を図ることができなかった点は結果的にも明らか。そういった面を踏まえると、新たな選択肢をとる判断も間違いではないと思っていたからだ。

もちろん、カタールW杯での采配は称賛されるもので、4年間をかけた世代交代や日本人監督だからこそ選手とのコミュニケーションを円滑に測れることを考えれば、プラス面が多いのも確か。なおかつ海外でフリーの監督を探すとなると金銭的な問題がどうしても出てくることは理解できるため、森保監督と新たな契約を交わすことに落ち着いた流れに最終的に異論はない。

前述したように2026年まで指揮を執ることになれば、日本では初めて8年という長期政権となる。この取り組みがどういった答えをもたらすかはまだわからないが、今後の日本サッカーを考えていく上でも大事なアクションとなることは間違いない。ある意味、日本人監督が8年間も指揮するのは新しい景色を見ることになるので、これまでとは異なった可能性を示してくれるのかが注目される。

■2026年W杯に向け求められるもの

さらなる結果が期待される2026年のW杯。そこに向けた今後の4年間を考えた時、改めて森保監督に求められるのはチームスタイルの進化だ。

カタールW杯に向けた4年間は「いい守備からいい攻撃へ」をコンセプトに掲げた。本大会でもドイツやスペインといった相手に対し、“想像以上”に守備的な戦いになってはしまったものの、ハイプレスと素早い切り替えから二つの大金星を手にすることになった。今後もこの戦い方を自分たちの一つの武器として持ち続けることを前提とした上で、これからは森保監督も改善点として語っていた「速攻であれ遅攻であれ、われわれがボールを奪って、そこからボールを握りながらコントロールする。ゲームを決めに行くことができるように」していくことが必要になる。

鍵を握るのは監督自身の成長と新たなコーチの入閣だ。「まだまだ足りない点もあるということを話させていただきました。監督自身もいろいろと勉強して成長している部分はありますので、今後もそうした成長を期待している」とは反町康治技術委員長の言葉だが、ここから指揮官がいかにアップデートしていくかも重要だ。大会後に自身の考えの中で欧州と日本のやり方に乖離があったことを認めていたが、そういったところを含めて欧州に拠点を移してさまざまな現場に足を運ぶことで現代のトレンドに触れていきたい。

また、Jリーグの監督に就任した横内昭展コーチ(ジュビロ磐田)と上野優作コーチ(FC岐阜)が抜けたポジションの補充として、誰を新たなコーチに入閣させるかもポイントだ。森保監督は会見で「ボールを握りながらチャンスを作る、アタッキングサードでシュートチャンスをより多くするところに長けている元選手、コーチを招集できれば」と選考方針を語ったが、できれば欧州のサッカーに理解がある人物を連れてくるのが理想だ。ロールモデルコーチを務める内田篤人氏の招聘も一つの手だろう。このように、前回の4年とは異なるエッセンスを加えることでチームを成長させていきたい。

気になる点としては、以前は五輪監督を兼任していたが、今回はそうではないということ。兼任の良さが前面に出たことで世代交代をうまく促すことができたが、現在、パリ五輪代表は大岩剛監督が率いているため、各世代別代表の指導者との対話も増やす必要がある。東京五輪の時のように自ら指揮をして選手の力を図ることができないため、そこのすり合わせは今まで以上に重要性が高まることになるだろう。チームの個をより伸ばす意味でも下の年代の積み上げもポイントになることは忘れてはならない。

いずれにしても、新たな4年に向けて選手たちに対して新たな刺激を入れていかなければならない。一つのゴールとなったカタールW杯を終え、次なる4年を考えていた選手たちからすれば、監督交代が行われなかったことで変化が薄く感じられるのは明らかである。だからこそ、これまでとは違う指針を出すことで刺激をもたらす必要がある。

第2次森保政権の初陣は、3月の国際親善試合となる。それまでにコーチ陣を含めてどんな施策を巡らせてくるのか。変化なくして成長はない。長期政権だからこその利点を生かすような、新たな森保ジャパンの誕生を楽しみにしている。

文=林遼平

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林遼平 Ryohei Hayashi

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1987年生まれ、埼玉県出身。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。