米国独立記念日恒例のホットドッグ大食い競争元王者だった小林尊とは

Joe Rivera

米国独立記念日恒例のホットドッグ大食い競争元王者だった小林尊とは image

毎年7月4日の米国独立記念日に行われるネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権の2020年度大会は無観客で開催された。男子の部では不動の王者ジョーイ・チェスナットが13回目の優勝、女子の部では日系アメリカ人のミキ・スドウ(須藤美貴)が7年連続の優勝を果たした。かつてこの大会で不動の王者(2001-2006年)として君臨した日本の小林尊氏は、今でも伝説的な存在だが、あるトラブルで同大会から姿を消した。

2000年代のホットドッグ大食い競争シーンを席巻した小林尊

小林尊は、もう独立記念日のホットドッグ大食い競争には出てこない。

この日本からやってきた大食いファイターは、2000年代に『ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権』で圧倒的な成績を残した。小林尊王朝とでも呼ぶべきこの時代は、同大会の人気を新たな次元にまで押し上げたが、小林の姿は大会6連覇を果たしたあとから見られなくなってしまった。

小柄で細身な小林の体格(173cm、58kg)は極めて特徴的だった。その小林がホットドッグを次から次へと食道へ流し込む姿に大衆は圧倒され、あるいは気持ちが悪いとさえ思われることもあった。やがてジョーイ・チェスナットが小林に挑戦するために大会に現れ、見事にチャンピオンを破ったそのチェスナットが新たな王朝を築き始めた。

それ以来、小林はこのホットドッグ大食い競争の世界からどんどん遠ざかっている。

一体、その驚異的な食欲をして『The Tsunami(津波)』とも呼ばれたKobi(小林のニックネーム)に何が起きたのか?

『The Tsunami』とも呼ばれた小林に何が起きたのか?

答えはさほど驚くようなものではない。

もし、読者がかつての絶対王者の悲劇的な転落ストーリーを期待しているのなら、そのような話はあまりない。だがそこには組織やルールに関する面倒な話がいくつかある。

『ジョーズ』ことジョーイ・チェスナットの出現はたしかに6連覇中だった小林王朝を終わらせたが、小林の競技キャリアは2010年になるまでは大きな転機を迎えることはなかった。小林は『ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権』を運営するメジャーリーグ・イーティング(MLE)との契約問題をこじらせ、コニー・アイランドで米国独立記念日を飾るこの大会から姿を消した。

MLE以外の大会への出場を禁止する契約内容に反発した小林は、翌年以降の『ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権』に参加することができなくなった。それは小林がチェスナットに再挑戦する機会を失うことにもつながった。

2010年には小林が同大会のステージに無断で上がろうとして逮捕された。この悪名高い事件の真相については様々な報道がなされているが、小林は彼の名前とチェスナットの優勝を祝う観客の声援に応えようとしただけだと主張している。結局この年にMLEから離脱しており、前年2009年が小林が最後に参加した大会となった。

2011年、『ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権』が行われた同時間に、小林はマンハッタンにあるビル屋上にあるバーに設けられたセットで当時の世界記録となる69個のホットドッグを完食してみせた。これはホットドッグ大食い競争の王者であるチェスナットの記録をも上回るものだった。公式記録と認められたものの、“マスタード・ベルト”と呼ばれるチャンピオンベルトを大会ステージで掲げることはできなかった。

2011年以降もプロのフードファイターとして名を馳せ、CMやセレブリティのイベントに登場していた小林。ここ数年、米国独立記念日でスポットライトを浴びることはないが、それでもその存在が完全に忘れ去られたとは言い難い。2019年に米スポーツメディア『ESPN』のドキュメンタリー番組『30-for-30』が大食い競争を取り上げたエピソード("The Good, The Bad, The Hungry")では、チェスナットと小林のライバル関係が話題のひとつだった。

小林のホットドッグ大食い競争における記録

小林はホットドッグ大食い競争の世界において、その口と胃をもって、かつて前例がなかったことをやってのけた。

小林は2001年に華々しく初登場し、50個のホットドッグを完食した。その大会で2位の新井和響は31個だった。2人ともそれまでの記録を更新したのだが、優勝者の栄誉を手にしたのはもちろん小林だった。2000年代において、小林の記録破りの完食数を実現することになった、パンを水に浸し、ソーセージと別々に食べる方法は『ソロモンメソッド』と呼ばれ、現在でもホットドッグ大食い競争の上位陣がこの食べ方を採用している。

2011年に69個のホットドッグを食べた小林は、チェスナットを1個差で破るとともに、再び世界記録を更新した。これは前述の通り、出場を禁止されたネイサンズ主催ホットドッグ大食い競争の記録ではない。だが小林の記録は2人の公式審判によって確認された正式なものだ。

小林のホットドッグ完食個数 世界記録順位
2001 50 1位
2002 50 1位
2003 44 1/2 1位
2004 53 1/2 1位
2005 49 1位
2006 53 3/4 1位
2007 63 2位
2008 59 2位
2009 64 1/2 2位
2011 69 1位

2022年7月15日追記:この記録は2016 年にチェスナットの70本完食によって破られた。以降チェスナット自身が更新し続け、2021年大会で76本に到達した。

(翻訳:角谷剛、編集:スポーティングニュース日本編集部)

▶スポーツ観るならDAZNで。スマホやTVでスポーツをいつでも楽しもう

Joe Rivera