「日本は今大会でメダル候補だと思っています」。
そう語ったのは、日本戦に勝利した後に記者会見に参加したアメリカ代表のドーン・ステイリー・ヘッドコーチだ。
7月30日、さいたまスーパーアリーナ(埼玉県さいたま市)にて東京オリンピック女子バスケットボール競技、グループBの日本(FIBAランク10位)対アメリカ(同1位)の一戦が行なわれ、アメリカが86-69で勝利した。
しかし、17点差というスコア以上にステイリーHCは日本のことを評価していた。
「日本のプレイスタイルはいつも対戦するのが難しいもの」。
ポイントはこの「いつも」というワードだ。日本とアメリカの直接対決は、何度も行なわれているものではない。しかしステイリーHCは、日本の成長を直接見てきている存在のひとりなのだ。
ステイリーHCは、選手としてもコーチとしてもバスケットボール殿堂入りを果たしているアメリカバスケットボール界の生きるレジェンドだ(コーチとしては女子バスケットボール殿堂)。
大学生の頃からアンダー世代のアメリカ代表としてプレイし、すぐにA代表に招集され長年チームを支えてきた中心人物のひとり。1998年のFIBA世界選手権では、アメリカ代表として日本代表とも対戦している。そしてアトランタ、シドニー、アテネの3大会連続でオリンピック金メダルを獲得した実績を持つ。
現役引退後もアシスタントコーチとしてアメリカ代表に参加し、2016年のリオ・オリンピックで日本が64-110でアメリカに敗れた試合でも、アシスタントコーチとしてアメリカのベンチに座っていた。
そしてこの時、日本のベンチにアシスタントコーチとして座っていたのが、今の女子日本代表ヘッドコーチのトム・ホーバスだ。
ステイリーHCもホーバスHCも、リオ・オリンピックをアシスタントコーチとして経験した後、同じ2017年にそれぞれアメリカと日本のヘッドコーチに就任しているのだ。
リオ・オリンピックの頃と比べて「日本とアメリカのギャップは縮まっている」と話したステイリーHCは、現在アメリカ代表のヘッドコーチと並行して、サウスカロライナ大学のヘッドコーチも務めている。
2017年に、ステイリーHC率いる全米チャンピオンのサウスカロライナ大学は、日本で開催された女子日本代表強化合宿に参加しており、何度か練習試合を行なった過去がある。
この時のことにもステイリーHCは記者会見で触れた。
「当時日本代表とトレーニングを行ない、私たちは25点差、30点差で何度も負けました。我々が手を抜いていたわけではなく、必死に勝ちに行こうとした結果、25~30点差で負けていたのです。そこからさらに、このチームは大きく成長しています」。
「トム(ホーバスHC)がとてもいい仕事をしています。時間をかけてしっかりチームを育て、自信を植え付けています。対戦相手として難しい、計算のできたプレイをしており、そういうプレイができるような規律があります」。
当時サウスカロライナ大学の一員として来日していた、現アメリカ代表のエース格であるエイジャ・ウィルソンも、「ボッコボコにされたの」と当時のことを思い出しながら付け足した。
ホーバスHCは「サウスカロライナ大学は3選手がWNBAにドラフトされたばかりで、チーム作りをしている段階だったのに対して、我々はアジアカップ直前ということもあってチームの仕上がりが違った」と指摘したものの、ホーバスHCもステイリーHCもお互いの歩みをずっと見てきたことには変わらない。
ヘッドコーチに就任してから無敗の成績を誇るステイリーHCが、その活躍に期待を寄せる日本は、8月2日のナイジェリア戦に勝てば準々決勝進出が確定する。今大会で次にアメリカと対戦することとなれば、メダルをかけた試合となる可能性も高い。
女子日本代表の戦いに今後も注目だ。