東北楽天ゴールデンイーグルスは、10月26日(木)のドラフト会議で1位指名の古謝樹(桐蔭横浜大)をはじめ、支配下で8名を指名した。楽天の現戦力と照らし合わせ、今年のドラフトを評価する。
楽天の指名選手一覧
× | 常広 羽也斗 | 投手 | 青学大 |
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× | 前田悠伍 | 投手 | 大阪桐蔭高 |
1位 | 古謝 樹 | 投手 | 桐蔭横浜大 |
2位 | 坂井 陽翔 | 投手 | 滝川二高 |
3位 | 日当 直喜 | 投手 | 東海大菅生高 |
4位 | ワォーターズ 璃海 | 内野手 | ウェルネス沖縄高 |
5位 | 松田 啄磨 | 投手 | 大産大 |
6位 | 中島 大輔 | 外野手 | 青学大 |
7位 | 大内 誠弥 | 投手 | 日本ウェルネス宮城高 |
8位 | 青野 拓海 | 内野手 | 氷見高 |
楽天のドラフト指名総評:B
楽天は1位で大卒右腕の常廣羽也斗(青山学院大/広島1位)、高卒左腕の前田悠伍(大阪桐蔭高/ソフトバンク1位)の抽選を外した末、大卒左腕の古謝樹(桐蔭横浜大/投手)を単独で指名した。
古謝は湘南学院高時代に甲子園出場はなくプロ志望届も提出しなかったが、神奈川大学野球連盟の桐蔭横浜大へ進学後に開花した。同大野球部は1988年に創設と歴史は浅いものの、渡部健人(2020年西武1位)、菊地大稀(2021年巨人育成6位)、吉田賢吾(2022年ソフトバンク3位)と近年は毎年のようにドラフト指名を受ける選手を輩出している。
2位以下も投手中心のドラフトとなった。2位で坂井陽翔(滝川二高/投手)、3位で日當直喜(東海大菅生高/投手)と高卒の素材型投手を連続して指名。5位で大卒の松田啄磨(大阪産業大/投手)を指名し、さらに7位で大内誠弥(日本ウェルネス宮城高/投手)と再び高卒の投手を指名した。
野手は4位でワォーターズ璃海ジュミル(ウェルネス沖縄高/内野手)、6位で中島大輔(青山学院大/外野手)、8位で青野拓海(氷見高/内野手)の3人を指名した。育成ドラフトには12球団で唯一参加しなかった。
大卒の古謝と松田はともに先発タイプで、比較的早い段階から一軍で登板することが期待される。今シーズンの先発投手陣を見ると32歳の則本昂大(155回)、34歳の田中将大(139.1回)、38歳の岸孝之(120.1回)と投球回数上位3人はいずれも30歳を超えている。
とくに岸は今年12月に39歳となるため、世代交代に向け若手先発の台頭がマスト。そのため、25歳の荘司康誠(2022年ドラフト1位)と23歳の早川隆久(2020年ドラフト1位)と、過去のドラフトの方針を引き継いで若手の先発ローテーション候補を指名した形だ。
高卒の3人は坂井(186cm)、日當(190cm)、大内(191cm)といずれも185センチを超える高身長と共通点がある。大卒の古謝(182cm)と松田(186cm)を含めてみても全員が180cmを超えている。近年の楽天は荘司(189cm)に内星龍(190cm)や松井友飛(190cm)と高身長の投手を多く獲得しており、育成が難しいとされる高身長の投手をあえて指名している可能性が高そうだ。
先発の世代交代は最大の課題だが、高卒の3人が戦力化するまでは時間がかかるだろう。先発陣だけでなく、松井裕樹の退団が濃厚な中継ぎ陣の事情を考えると早い段階で目処が立ちそうな投手が少ないのは心許ない。
野手で即戦力となりそうなのは中島のみ。その中島も大学日本代表にも選ばれた俊足巧打の選手だが、打撃面に課題がある。4年春こそ打率.333と結果を出したが、打率3割を超えたのはその1季だけ。日本代表や大学選手権でも打率1割台とかなり苦しんだ。いきなり一軍の主戦力というよりは、守備や走塁でアピールしつつ居場所を掴んでいくのが現実的だ。
ワォーターズはショート守備に定評のあるリードオフマン。青野はパワーが売りの長距離砲タイプ。ともに右打者だが、球団の歴史を見ると生え抜きの右打者はなかなか一軍に定着していない。こうした傾向を変える活躍が期待される。
チームは2年連続で4位のBクラス。2013年の日本一以降は3位が3回あるものの、それ以外はすべてBクラスと低迷している。それでも即戦力中心ではなく、素材型の選手を多く獲得した。チームの課題解決に直結するドラフトではなかったためB評価としたが、新人の成長次第では評価が大きく覆るはずだ。