終盤に大きく負け越し借金持ちの3位に終わる
[順位]3位(CSファイナルステージ敗退)
[勝敗]61勝62敗20分
[勝率].496
セ・リーグ3連覇を目指した巨人は勝率5割を下回り3位に終わった。クライマックス・シリーズではファースト・ステージで阪神に連勝したものの、ファイナル・ステージではヤクルトに2敗1分。1勝もできずシーズンを終えている。
序盤は好調だった。4月には6連勝するなど、4月末の時点で16勝10敗4分と3連覇へ向けて悪くないスタートを切っていた。5月も貯金を増やすと6月には8連勝。貯金を増やしながら前半戦を首位の阪神と2ゲーム差の2位で折り返した。
後半戦が始まった直後も白星を重ねると8月29日には4月1日以来およそ5ヶ月ぶりの首位に立つ。しかし9月に入ると急失速。9月25日から5連敗、10月には引き分けを挟んで10連敗を喫し優勝争いから脱落した。振り返ってみると9月は6勝14敗5分、10月は4勝11敗3分と大きく負け越し。2ヶ月間で借金を15も作ってしまっては優勝を逃すのも無理はない。
3位で臨んだクライマックス・シリーズでは敵地甲子園球場で阪神に連勝。勢いをつけてセ・リーグ覇者のヤクルトに挑むも2試合連続完封負け。第三戦でようやく2点を奪うも引き分け、日本シリーズに。
規定投球回到達は戸郷ひとりだけ、菅野はキャリアワーストの成績
[失点]541(4位)
[防御率]3.63(4位)
投手は先発ローテーションのやりくりに苦しんだ。規定投球回に到達したのは戸郷翔征ただひとり。その戸郷も2桁勝利には届かず、防御率も規定投球回到達者ではワーストの4.27と結果を残すことができなかった。
エースの菅野智之は4度の登録抹消があり19試合(115.2回)の登板にとどまった。登板試合数、投球回数はキャリアワースト。また残した成績も6勝7敗、防御率3.19とエースとして物足りない数字に終わっている。それでも、9月12日以降の7試合では6QS(6回以上自責点3以下)を記録するなど3勝1敗、防御率1.99と復調し、面目は保った。
左腕の高橋優貴は開幕から5戦5勝と好スタートを切り。前半戦で9勝3敗、防御率2.51をマーク。自身初となるオールスターゲーム出場も果たした。しかし、勝負どころの10月は4試合の登板で0勝3敗、防御率10.00。後半戦は2勝6敗と苦しみ、規定投球回にも2.1回届かなかった。
その他を見るとメルセデスが7勝5敗、防御率3.77と最低限の数字を残すも。シーズン途中に合流した山口俊は2勝8敗、来日2年目のサンチェスも5勝5敗、防御率4.68と期待された結果を残すことができていない。また国内FA権を行使して加入した井納翔一がわずか5試合(先発1試合)のうち4試合で失点を喫し、防御率14.40と戦力にならなかったのも大きな誤算だった。
先発投手の頭数が足りなかったこともあり、後半戦では中4日や中5日と登板間隔を詰めての起用が目立った。しかし、菅野を除いて結果を残せず、終盤の失速の一因となった感は否めない。
中継ぎ投手を見ると守護神の固定ができなかった。開幕から守護神として起用されたデラロサは6試合連続無失点で5セーブを挙げる活躍を見せるも、アメリカの市民権申請手続きのためにおよそ1ヶ月間の離脱。復帰後も好投していたが6月に入って右足の違和感で再び1ヶ月ほどチームを離れた。前半戦は2度の長期離脱があった。
6月半ばからはビエイラが定着するも、それまでは日替わりでやりくりしていたほど。そのビエイラは外国人選手によるNPB記録となる32試合連続無失点と気を吐いたのは数少ない明るい材料だった。その他では鍵谷陽平(59試合/防御率3.19)、中川皓太(58試合/防御率2.47)の両投手が奮闘している。
岡本は二冠達成も、新外国人選手らが機能せず
[得点]552(4位)
[打率].242(5位)
[本塁打]169(1位)
[盗塁]65(4位)
岡本和真が全試合に「4番・三塁」で出場し、2年連続で本塁打王(39本)と打点王(113打点)の二冠王に輝いた。2年連続の打撃二冠(本塁打王・打点王)は巨人では1976年・77年の王貞治以来の快挙。現監督の原辰徳や松井秀喜といった強打者たちも成し遂げられなかった偉業を達成した。ただし、チームの打撃成績は本塁打こそリーグトップの169本塁打だったものの、552得点はリーグ4位と苦しい数字だった。
その要因は複数ある。主将の坂本勇人が走塁中のアクシデントで右手親指を骨折117試合の出場にとどまり、丸佳浩も不振で二軍落ちがあった。また、国内FA権を行使しDeNAから加入した梶谷隆幸も、故障に苦しみわずか61試合の出場に終わった。梶谷は10月にヘルニアの手術を受けたため、クライマックス・シリーズにも出場していない。
新外国人選手3人も機能しなかった。テームズは初出場の試合でアキレス腱を断裂。シーズン中の復帰は叶わず1試合のみの出場に終わった。スモークは34試合の出場で打率.272(114打数31安打)、7本塁打、OPS.818とまずまずの結果を残していたが、新型コロナウイルスの影響で家族が来日できないことを理由に退団してしまう。後半戦に入ってから緊急補強としてハイネマンを獲得したものの、わずか10試合の出場に終わった。
暴力問題で出番を失っていた中田翔も巨人に移籍後は34試合の出場で打率.154(91打数14安打)、3本塁打と結果を出すことができていない。岡本以外の打者が結果を出すことができず、チームとしては得点力が上がらなかった。
そのなかで気を吐いたのが、外野3ポジション全てを守れる強みのある松原聖弥だった。自身初となる規定打席に到達し、打率.274(431打数118安打)、育成ドラフト出身者としては最多となる12本塁打、15盗塁とブレイク。シーズン終盤では1番に定着した。この活躍が認められ、亀井善行が背負っていた背番号「9」を譲り受けている。
ドラフトでは支配下7人中6人が投手
<主な新加入選手>
【外国人選手】
アダム・ウォーカー(外野手・前アメリカ独立リーグ)
マット・アンドリース(投手・前マリナーズ)
グレゴリー・ポランコ(外野手・前ブルージェイズ3A)
【ドラフト指名】
<支配下>
1位:翁田大勢(投手・関西国際大)
2位:山田龍聖(投手・JR東日本)
3位:赤星優志(投手・日本大学)
4位:石田隼都(投手・東海大学付属相模高)
5位:岡田悠希(外野手・法政大学)
6位:代木大和(投手・明徳義塾高)
7位:花田侑樹(投手・広島新庄高)
<育成>
1位:鈴木大和(外野手・北海学園大)
2位:高田竜星(投手・石川ミリオンスターズ)
3位:亀田啓太(捕手・東海大)
4位:笹原操希(外野手・上田西高)
5位:鴨打瑛二(投手・創成館高)
6位:菊地大稀(投手・桐蔭横浜大)
7位:京本眞(投手・明豊高)
8位:富田龍(投手・四国学院大)
9位:川嵜陽仁(投手・誉高)
10位:大津綾也(捕手・北海高)
V奪回を目指す巨人はFA市場に参戦しなかった。
その一方で先発候補のマット・アンドリース(前マリナーズ)、外野手のアダム・ウォーカー(前アメリカ独立リーグ)、グレゴリー・ポランコ(前ブルージェイズ3A)と3人の外国人選手を獲得した。アンドリースは近年、中継ぎでの起用がメインとなっている。しかし巨人では先発としての起用が濃厚。先発ローテーションの一角を目指すことになる。
ウォーカーはMLB経験こそないものの、アメリカの独立リーグで2年連続MVPを受賞している右の長距離砲候補だ。ポランコはメジャー通算96本塁打で2018年には23本を放った。2人は打線に厚みをもたらすことが期待されている。
ドラフトでは支配下で指名した7人のうち6人が投手。上位3人は大学生と社会人出身で、比較的早い段階での一軍昇格が求められる。なかでもドラフト2位の山田龍聖(JR東日本)にかかる期待は大きい。ドラフト後に行われた都市対抗野球では8.1回を投げ10奪三振。3点を失い負け投手にはなったものの、その片鱗を見せた。
3年連続となる打撃二冠王を目指す岡本を軸とし、坂本、丸らが本来の調子を取り戻せば破壊力は抜群。そこにポランコとウォーカーの両外国人選手、そしてヘルニアからの復帰を目指す梶谷、新進気鋭の松原ら足も使える選手が加われば打線は厚みを増してくる。
投手は菅野、高橋、戸郷、山口、アンドリースと先発候補は揃ってきた。原辰徳監督の構想にある中5日、中4日のローテーションをどれだけ機能させることができるのかが鍵となりそうだ。
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