阪神タイガースの2020年シーズン振り返り:投手陣が安定の活躍、大山は序盤戦スタメン落ちもキャリアハイの働き

Sporting News Japan Staff

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矢野燿大監督2年目の2020年シーズンは、前年の3位からひとつ順位を上げ2位だった。各選手の数字を振り返ってみると投手陣の頑張りが目立つ。ここ数年と同じように投手陣の力で上位進出を勝ち取ったと言えそうだ。

 

西勇輝、スアレスらを中心にリーグ2位の防御率3.35を記録

リーグ屈指の中継ぎ陣は今年も健在だった。不振だった藤川球児に代わりシーズン途中から守護神を任されたスアレスが51試合の登板で3勝1敗25セーブ、8ホールド、防御率2.24の活躍で最多セーブのタイトルを獲得。岩崎優、岩貞祐太、エドワーズといったその他の中継ぎ陣も大崩れすることはなく、全員が防御率3.30以下と安定した投球を見せた。

また、2017年ドラフト1位の馬場皐輔がキャリアハイの32試合に登板。一時は勝ちパターンを任されるなど2勝1敗、9ホールド、防御率2.08と結果を残した。今シーズン、ブレイクを果たした投手のひとりだ。

先発投手陣では西勇輝と青柳晃洋の2人が規定投球回に到達。秋山拓巳も3年ぶりの2桁勝利となる11勝をマークし、この3名が先発陣の柱となった。

なかでも西はオリックス時代を含めて3年連続の2桁勝利となる11勝を挙げ、防御率もキャリアハイとなる2.26とエースの成績をしっかりと残している。リーグ優勝した巨人相手には5試合の登板で3勝1敗、防御率1.77とキラーぶりを見せた。2021年シーズンも西の活躍が優勝を目指す上では不可欠だろう。

その他では2017年ドラフト2位の高橋遥人が規定投球回未到達ながら12試合(76回)の登板で5勝4敗、防御率2.49と結果を出した。また、QS率も75%と安定し、25歳の高橋にとって収穫の多いシーズンとなった。

一時は中継ぎに配置転換された藤浪晋太郎は防御率4.01と良い数字とは言えないが、2年ぶりに白星を勝ち取った。76.1回を投げ85三振を奪っておりK/9は10.02と奪三振能力の高さも見せている。契約更改後の会見では、「先発しか見ていない」とコメントしており、来シーズンは再びの先発ローテーション入りが目標だ。

今シーズン限りで阪神を退団した能見篤史もチーム4位の34試合に登板。防御率4.74と苦しんだものの、10月以降の10試合で失点を許したのはわずか1試合だけ。まだまだやれると言わんばかりの投げっぷりを見せた。

チーム防御率3.35は優勝した巨人の3.34をわずかに下回っただけ。投手陣の活躍は高く評価できるだろう。

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大山がキャリアハイの成績、糸井と福留のベテラン勢は苦戦

野手陣では大山悠輔が打率.288、28本塁打、85打点とキャリアハイの成績を残した。開幕戦は途中出場もなく、序盤は代打での出場も多かったが、最終的には4番を任された。本塁打と打点は岡本和真(巨人)や村上宗隆(ヤクルト)と最後までタイトルを争い、結果で実力を証明してみせた。

チームで唯一、全試合に出場した近本光司も2年連続で盗塁王のタイトルを獲得するなど、リードオフマンの役割をしっかりと果たしたが、順風満帆なシーズンではなかった。開幕から1カ月以上が経過した7月25日終了時点で打率2割を下回る苦しいスタート。そこから徐々に調子を上げ、打率.293と前年の打率.271を超え「2年目のジンクス」を吹き飛ばした。

その他では3年連続ゴールデングラブ賞を受賞した梅野隆太郎や、高卒2年目ながら54試合に出場した小幡竜平らが結果を残している。

一方で苦しんだのがベテラン勢だ。糸井嘉男は規定打席に届かず、阪神に移籍した2017年以降でワーストとなる打率.268と低調だった。出塁率.363は日本ハムで初めて規定打席に到達した2009年以降でワースト。レギュラーの保証はなくなった。福留孝介も打率1割台に終わり、今シーズン限りで中日へと移籍している。

また、高山俊や北條史也といった中堅の選手たちも打率が2割に届かず、出場試合数も40試合程度と結果を出せなかった。来日2年目のマルテも故障での離脱があり、29試合の出場で打率.252、4本塁打に終わっている。サンズとボーアの新外国人2人もチームを変えるような活躍は見せられていない。

野手については、期待通りにはいかないシーズンだった。

 

新外国人はスアレス、エドワーズの中継ぎ陣が奮闘

次に新外国人選手の働きを見てみよう。

2019年シーズンオフに阪神は左のボーア、右のサンズと2人の大砲候補を獲得した。120試合という例年より少ない試合数の中、サンズは19本塁打、ボーアは17本塁打とまずまずの長打力はみせたものの、ともに打率は.260を下回っており確実性には欠けた。サンズは序盤こそ好調だったが、対策を取られたのか10月以降は打率.202、1本塁打、7打点と完全に封じ込められたのは気がかりだ。

投手陣ではガンケル、エドワーズ、スアレスと3人を補強した。そのなかで前述のとおりスアレスは文句なしの働き。エドワーズとガンケルも及第点以上の活躍は見せている。

とくにエドワーズは序盤で離脱したものの、9月に復帰するとセットアッパーに定着。23試合の登板で0勝1敗、12ホールド、防御率2.38と結果を出した。BB/9が1.19と制球力に優れており、大崩れしないのが強みだ。2021年シーズンもスアレスや岩崎、岩貞とともに試合終盤を任されることになりそうだ。

タイガースがドラフトで獲得した新人は6人中5人が高卒。唯一の大卒選手であった小川一平が中継ぎとして21試合に登板したが、他の5人が戦力となるのはこれからだ。

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チェン、アルカンタラ、ロハスと積極補強で優勝を目指す

2年連続でAクラスに入った阪神の2021年シーズンの目標はもちろん優勝だ。悲願成就のために、このオフは積極的に外国人選手の補強を行っている。

投手は今シーズン途中からロッテでプレーしていたチェン・ウェインとKBO(韓国プロ野球)で最多勝を獲得したラウル・アルカンタラのふたり。チェンは今シーズン4試合の登板で0勝3敗と勝ち星こそなかったものの、防御率2.42と安定感を見せた。先発として試合を作る能力には長けており、ローテーションの一角に食い込むことは間違いなさそうだ。

ドミニカ出身のアルカンタラはKBOで2年連続2桁勝利を達成。今シーズンは31試合の登板で20勝2敗、防御率2.54と圧倒的な成績を残しただけに、大きな期待がかけられている。

野手ではメル・ロハス・ジュニアが新たに加わる。ロハスはKBOでの4年間で132本塁打を誇る。今シーズンは打率.349、47本塁打、135打点の成績を残し、本塁打と打点の二冠王に加えMVPも受賞した。大山や残留したサンズとともに中軸を任されることになりそうだ。

ドラフトではスラッガーの佐藤輝明(近畿大)を獲得した。背番号は「8」が与えられており、矢野監督も開幕スタメンを示唆しているほど。期待通りの長打力を発揮できれば、打線に厚みが増すことは確実だ。

阪神はここ数年、投手陣の整備がうまくいっている。現時点における2021年シーズンの陣容を見てもそれはよくわかる。先発は西、青柳、秋山、高橋にチェンとアルカンタラの新外国人が2人。その他に藤浪やドラフト2位の伊藤将司(JR東日本)もいる。

中継ぎ陣はスアレス、岩崎、岩貞、エドワーズと4人の軸が揃っている。復活を目指す桑原謙太朗や2020年シーズンに飛躍した馬場の存在もある。さらに先発、中継ぎとどちらも対応できるガンケルが控えており層は厚い。

今オフに補強したロハスや佐藤といった野手陣が前評判通りの結果を出すことができれば、2005年以来となるセ・リーグ制覇も夢物語ではない。

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日本を拠点に国内外の様々なスポーツの最新ニュースや役に立つ情報を発信しているスポーティングニュース日本版のスタッフアカウント。本家であるスポーティングニュース米国版の姉妹版のひとつとして2017年8月に創刊された日本版の編集部員が取材・執筆しています。