追い上げ実らず3年連続Bクラスの広島、鈴木誠の穴を埋められるか|プロ野球2021振り返り・2022展望

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後半戦の追い上げ実らず、3年連続Bクラスに終わる

[順位]4位
[勝敗]63勝68敗12分
[勝率].481

広島の2021年シーズンは2019年から3年連続のBクラスとなる4位に終わった。

4月末時点では13勝15敗2分となんとか勝率5割付近を保ち上位チームに食い付いていた。しかし、5月半ばに複数の選手が新型コロナウイルスの影響で離脱。セ・パ交流戦では3勝12敗3分と9個の負け越しで最下位に沈む。6月は6勝16敗3分と月間の勝率が3割を下回る2割7分3厘と大苦戦。7月に7勝4敗1分とやや盛り返すも、前半戦を最下位から0.5ゲーム差の5位で終えた。

このまま下位に沈むと思われたが、9月下旬から勢いづく。9月24日から5連勝、4連敗、6連勝と波がありながらもじわじわと借金を減らしていき、一時は3位の巨人も射程圏内に捉えたほど。結果的に4位で終わったものの最後の10試合を7勝2敗1分といい形で締めくくった。

森下、九里、大瀬良の3人が規定投球回に到達

[失点]589(5位)
[防御率]3.81(5位)

投手陣は森下暢仁(163.1回)、九里亜蓮(149回)、大瀬良大地(146.2回)の3人が規定投球回に到達した。なかでも九里は新型コロナウイルスの陽性判定を受けたことで1度抹消されるも、13勝(9敗)を挙げ自身初となる最多勝のタイトルを獲得。先発ローテーション投手としての役割を十分に果たした。

大卒2年目の森下は後半戦開幕から8試合連続で勝ち星がつかず苦しい時期もあった。それでも8勝7敗と貯金を作り、チーム最多の163.1回を投げて防御率は2.98とリーグ4位。東京オリンピックの日本代表入りが示しているように、球界を代表する投手となった。

開幕投手を務めた大瀬良は下半身のコンディション不良で4月半ばからおよそ1ヶ月の離脱があった。5月に復帰するも今度はおよそ2週間の離脱。結局、前半戦は11試合の登板で3勝3敗、防御率3.74の成績だった。

理想には程遠い前半戦だったが、後半戦で蘇った。8月は3試合の登板で3勝0敗、防御率0.90と本来の力を取り戻す。その後も白星を積み上げると、最後の登板となった10月28日のDeNA戦でシーズン初完封をマーク。この試合で規定投球回と2桁勝利に到達した。チームにとって2度の離脱は大きなマイナスだったものの、後半戦の大瀬良はエースとして十分な働きをしている。

その他では、玉村昇悟が17試合(101回)を投げ4勝7敗、防御率3.83とまずまずの成績を残した。3つの負け越しがあるものの、高卒2年目ということを考えれば十分な働きといえる。前半戦は1勝2敗、防御率3.98と苦しんだ床田寛樹が後半戦では9月21日の巨人戦ではプロ初完封勝利をマークするなど、8試合(7先発)で6QS(6回以上自責点3以下)。4勝2敗、防御率2.53と見違えるような投球を見せた。

中継ぎ陣ではなんといってもドラフト1位ルーキー栗林良吏の活躍が光った。開幕から守護神の座を任されると、新人最多タイとなる37セーブを記録。53試合の登板で許した本塁打は最終戦の1本だけ。防御率0.86という圧倒的な成績を残し新人王を受賞している。

絶対的な守護神を擁していた一方で8回を含め中継ぎ陣のやりくりには苦しんだ。中継ぎで30試合以上に登板したのは栗林を含め8人。そのなかで防御率が3.00を下回ったのは栗林と菊池保則(1.71)のふたりだけ。菊池は2勝1敗、3ホールド、防御率1.71と優秀な成績だったが、3ホールドという数字が示すとおり勝ちパターンで起用される機会は多くなかった。

チーム内でホールド数の多かった投手を見ると、森浦大輔(17H/防御率3.17)、島内颯太郎(15H/防御率3.12)はまずまずで、塹江敦哉(17H/防御率4.25)、ケムナ誠(12H/防御率4.58)らは安定感を欠いた。

外国人選手たちもほぼ戦力になれなかった。新外国人のバードが33試合で11ホールド、防御率4.57と結果を残せず、同じく来日1年目のネバラスカスは1試合で防御率10.13。2年目のスコットは一軍未登板。3人とも今シーズン限りで退団となった。

フランスアは左膝の手術の影響もありわずか8試合の登板で防御率9.53と苦しんだ。そのなかで唯一、結果を残すことができたのが2年目のコルニエルだった。一軍初登板を果たすと50試合で1勝2敗10ホールド、防御率3.82と結果を残した。

鈴木、坂倉、小園、西川が打率ランクベスト10入り

[得点]557(3位)
[打率].264(1位)
[本塁打]123(4位)
[盗塁]68(3位)

リーグトップとなるチーム打率.264が示すとおり、打線は悪くなかった。4番の鈴木誠也が打率.317(435打数138安打)で首位打者のタイトルを獲得。坂倉将吾も打率.315(422打数133安打)と好結果を残しリーグ2位。小園海斗が打率.298(449打数134安打)、西川龍馬が打率.286(504打数144安打)でそれぞれ8位と10位タイ。打率ランキングのトップ10に4人が名を連ねた。

その他では新型コロナウイルスに罹患し離脱期間のあった菊池涼介も打率.277(494打数137安打)、16本塁打とパンチ力を見せ、規定打席には到達しなかったものの林晃汰が躍進を遂げている。林は打率.266(357打数95安打)、10本塁打を記録。高卒3年目で節目の2桁本塁打を達成した。

しかし557得点はリーグ3位と、リーグトップのチーム打率と結びついていない。その大きな要因が長打の少なさだ。鈴木誠也がリーグ2位となる38本塁打を放ちOPS1.072とリーグで唯一1.0を超えた一方、チーム123本塁打はリーグ4位。二塁打の数もリーグ5位にとどまり長打率.389はリーグ4位だった。単打で塁上を賑わすものの、長打が絡まないため生還できないケースが多かったことが見て取れる。

投手同様に外国人選手も結果を残せなかった。長距離砲として期待されたクロンは42試合の出場で打率.231(130打数30安打)、6本塁打と苦戦。1年で退団となった。6年目のメヒアも打率.216(37打数8安打)で長打は0。結果を残すことができず退団している。

その他で響いたのが會澤翼の離脱だ。正捕手として期待されながら2度の故障離脱があり70試合に出場にとどまっている。

外国人選手の不振や會澤の離脱はあった。しかしチーム打率はリーグトップ。全体的に見ると鈴木がチームを牽引しつつ坂倉、小園や林といった次世代の選手たちが飛躍のきっかけを掴んだシーズンだった。

鈴木の穴をマクブルームが埋められるか

<主な新加入選手>

【外国人選手】

ドリュー・アンダーソン(投手・前レンジャーズ)

ニック・ターリー(投手・前ホワイトソックス傘下3A)

ライアン・マクブルーム(内野手・前ロイヤルズ)

【ドラフト指名】

<支配下>

1位:黒原拓未(投手・関西学院大)

2位:森翔平(投手・三菱重工West)

3位:中村健人(外野手・トヨタ自動車)

4位:田村俊介(外野手・愛工大名電高)

5位:松本竜也(投手・Honda鈴鹿)

6位:末包昇大(外野手・大阪ガス)

7位:髙木翔斗(捕手・県立岐阜商業高)

<育成>

1位:新家颯(投手・田辺高)

2位:前川誠太(内野手・敦賀気比高)

3位:中村来生(投手・高岡第一高)

4位:坂田怜(投手・中部学院大)

チームの大黒柱である鈴木がポスティングシステムを用いてMLB移籍を目指している。現在は交渉がストップしている状況だが、移籍はほぼ確実。大きな戦力ダウンは免れない。

そのなかで新シーズンへ向けて投手2人、野手1人の合計3人の外国人選手を補強した。アンダーソンは先発ローテーション候補でターリーは左の中継ぎ候補。残留の決まっているフランスア、コルニエルと外国人枠を争うことになる。マクブルームは今シーズン3Aで32本塁打を放った長距離砲候補。鈴木の穴を埋める存在として期待がかかる。

ドラフトでは支配下で7人の選手を獲得した。そのなかで比較的早い段階で一軍に上がってくることができそうな、大卒1人と社会人2人と合計3人の投手を迎え入れた。今シーズンも栗林、森浦、大道温貴と新人の3人が一軍で即出番を与えられていることからも、春季キャンプとオープン戦の結果次第ではすぐに一軍での起用がありそうだ。

打線は若い選手が揃ってきてだけに鈴木の穴をどのように埋めていくのかが課題。マクブルームが額面通りの活躍を見せれば面白くなる。またドラフト6位の末包には松田オーナーも期待を寄せている。新戦力の頑張りがチームの順位に直結することになりそうだ。

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日本を拠点に国内外の様々なスポーツの最新ニュースや役に立つ情報を発信しているスポーティングニュース日本版のスタッフアカウント。本家であるスポーティングニュース米国版の姉妹版のひとつとして2017年8月に創刊された日本版の編集部員が取材・執筆しています。