読売ジャイアンツの2020年シーズン振り返り:投打が噛み合い独走優勝、層の厚さでライバル圧倒

Sporting News Japan Staff

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原辰徳監督率いる巨人は2年連続でセ・リーグを制覇。日本シリーズではソフトバンクに4連敗を喫し、2012年以来となる日本一奪還は叶わなかったが、それでもペナントレースでは投打とも主軸、そして新戦力が揃って結果を出した。

 

エース菅野が開幕13連勝、高卒2年目の戸郷が躍進

チーム防御率はリーグトップの3.34と投手陣は安定していた。15試合以上に登板したのは菅野智之、戸郷翔征、サンチェスの3人。

目立つ活躍を残したのは、やはりエースの菅野。開幕から無傷の13連勝を記録し、独走優勝に大きく貢献した。前年の136.1回とほぼ変わらない137.1回を投げ、奪三振数は120から131に増加。与四球も32から25へと改善し、さらなる成長を遂げている。14勝2敗、防御率1.97はまさにエースの仕事だ。

戸郷も規定投球回には届かなかったものの、107.2回を投げ9勝6敗、防御率2.76と結果を残している。高卒2年目の成績としては文句のない出来と言っていい。

新外国人選手のサンチェスは、15試合の登板で8勝4敗と4つ勝ち越した。しかし、投球回数は87.2回となっており、推定3億4000万円の年俸からすると物足りない。

チーム全体では67勝45敗8分と貯金は22。そのうち先発3本柱で31勝12敗と19の貯金を作ることに成功した。

 

高梨と鍵谷が中継ぎ陣を支える

登板数でこの3人に続くのは田口麗斗(14試合/中継ぎ12試合)、畠世周(12試合)、今村信貴(11試合/中継ぎ1試合)、メルセデス(11試合)の4人。シーズンを通してローテーションを支えることはできなかったものの、畠、今村、メルセデスは防御率が3.20を下回っており、先発としての役割を果たしたと言っていい。

田口は開幕から先発ローテーションに入り、10月半ばから中継ぎに転向。5試合連続登板をこなすなど、獅子奮迅の働きでチームに貢献している。

中継ぎ陣はデラロサ、中川皓太と軸になる2人にそれぞれ離脱があった。それでも、シーズン途中に加入した高梨雄平や大江竜聖の両左腕、ベテランの大竹寛に田中豊樹、鍵谷陽平らが奮闘し、急場を乗り切ることができた。

なかでも鍵谷はK/9が3.67から9.64と大幅に改善された。三振をより多く奪えるようになった影響もあり、前年の27試合から46試合へと登板試合数を大きく増やし、なおかつ防御率も3.00から2.89と改善した。

一方で先発ローテーション入りを期待された高橋優貴と桜井俊貴は期待に応えられなかった。

大卒2年目の高橋は開幕前に肘を痛め戦線離脱。一軍に昇格したのは10月を過ぎてからだった。8試合の登板で1勝3敗、防御率4.30と苦しんだ。

桜井は結果を残せずシーズン途中に中継ぎに配置転換された。シーズン終盤に先発に返り咲いた際には、2連敗を喫している。

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岡本が二冠達成、亀井らの穴を松原が埋める

野手陣は岡本和真が本塁打と打点の二冠、そしてベストナインを獲得した。例年より少ない試合数で3年連続30本塁打、前年の94打点を上回る97打点は文句ない。契約更改では年俸2億円の大台にも乗せており、充実した1年だったと言えるだろう。

主将の坂本勇人は打率.289、19本塁打とまずまずの成績。11月には通算2000本安打を達成した。加入2年目の丸佳浩は7月頭で打率1割台、1本塁打とスタートダッシュには失敗したものの、最終的には打率.284、27本塁打と数字を合わせてきた。

大きく飛躍したのが松原聖弥と大城卓三のふたりだ。松原はパーラや亀井善行といった外野手が離脱する中、8月半ばから「2番・右翼」の定位置を掴み取った。一方の大城は規定打席未到達ではあるが、打率.270、9本塁打、OPS.751と捕手としては申し分ない成績を残し、ベストナインを受賞。正捕手争いで一歩抜け出している。

吉川尚輝は4年目で初めて規定打席に到達し、ベテランの中島宏之は規定打席未到達ながら100試合の出場で打率.297と結果を残した。代走の切り札となった増田大輝も前年を8個上回る23盗塁を決め、存在感を増している。

一方で、ベテランの亀井や新外国人のパーラ、正捕手候補でもあった小林誠司は期待通りの成績を残すことができなかった。いずれも故障で離脱したが、大きな穴とならなかったのは控え選手たちの踏ん張りによるもの。

野手では、岡本、坂本、丸の主軸3人だけでなく、その他の野手も若手、ベテラン問わず結果を残しているのが今季のジャイアンツの強さの一つだろう。

 

シーズン途中のトレードで高梨とウィーラーを獲得

岡本、坂本、菅野ら既存の主力だけでなく、新加入選手の活躍も見事だった。なかでも圧巻だったのはシーズン途中に加わった高梨だ。楽天から交換トレードでやってきた高梨は、移籍後15試合連続無失点を含む44試合の登板で1勝1敗2セーブ、21ホールド、防御率1.93と奮闘。中川やデラロサが離脱する中で輝きを放った。

同じくシーズン途中にやってきたウィーラーは左翼、一塁、二塁、三塁と4つのポジションにつく献身ぶりを発揮。打撃面では岡本、丸、坂本に次ぐ12本塁打を放っている。新外国人のパーラが離脱した中、代替選手としての役割をしっかりと果たしている。

シーズン開幕前に獲得したサンチェスやビエイラ、パーラといった外国人選手よりも高梨とウィーラーのほうが大きなインパクトを残したと言えそうだ。

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オフには梶谷と井納をFAで獲得

巨人は悲願の日本一へ向け、このオフも積極的な補強に動いた。まず国内FA権を行使したDeNAの梶谷隆幸と井納翔一を獲得。原監督は梶谷に対して「1番・右翼」の役割を期待し、梶谷自身も「3割・20本」を目指すという。

2020年シーズンは吉川がチーム最多の46試合で1番に起用されていた。吉川は打率.274、8本塁打とまずまずの成績ではあるものの、出塁率.336は1番としては物足りない。2020年シーズンに打率.323、19本塁打そして出塁率.387を記録した梶谷で1番を置き換えようとするのも無理はない。

また、原監督は1番梶谷から坂本、丸、岡本と続く打順の構想を描いている。全員が長打を期待できる打者だけに、他の球団にとって脅威となることは間違いない。

一方の井納には先発の柱としての期待がかかる。エースの菅野がMLB移籍濃厚なだけに、経験値のある右腕の加入は大きい。先発ローテーションに入って規定投球回を投げ、2桁勝利を挙げることが求められる。

2020年シーズンに在籍した外国人選手ではサンチェス、メルセデス、デラロサ、ビエイラ、ウィーラー、ウレーニャの6人が残留した。2020年シーズンから大きな上積みが見込める顔ぶれではないが、一定の成績は計算できるだろう。

巨人はさらに外国人選手の補強を進めており、大物の獲得があれば外国人の層はさらに厚くなる。

ドラフト会議では即戦力候補の投手として平内龍太(亜細亜大/1位)と伊藤優輔(三菱パワー/4位)を獲得した。シーズン半ばから一軍で登板する機会は与えられそうだ。

菅野の移籍状況、新外国人選手の動向によって戦力の動きはまだまだある。それでも、打てる手は打ち、備えをしっかりと行っている印象だ。

打倒ソフトバンクを果たすためにも、まずはセ・リーグ3連覇を勝ち取ることに全力を注ぐ。

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日本を拠点に国内外の様々なスポーツの最新ニュースや役に立つ情報を発信しているスポーティングニュース日本版のスタッフアカウント。本家であるスポーティングニュース米国版の姉妹版のひとつとして2017年8月に創刊された日本版の編集部員が取材・執筆しています。