菊池雄星のMLB挑戦成功のカギは「ファーストストライクの入り方」

DELTA・八代久通

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西武の菊池雄星がポスティングシステムを利用してのMLB移籍を目指している。日本を代表する左腕はMLBで成功できるか。その可能性について、データを用いて考えてみたい。

 

2017年シーズンを境に投手として大きく飛躍

まずは菊池雄星がどのように球界を代表する投手にまで進化したのかを考える。菊池は2017年を境に大きく成長した。この前年には長年ローテーションの中心となってきた岸孝之がチームから退団。投手陣が苦しい状況の中、菊池がレベルアップすることでチームを支えた。投球の質の向上は数字からも見てとれる。

セイバーメトリクスにおいて失点を防ぐ上で重要とされる奪三振、与四球の割合を2015-16年と2017-18年の2つの期間で比較してみよう。打者あたりの奪三振割合は2015-16年の21.9%から2017-2018年は26.6%に増加。打者あたりの与四球割合は10.7%から6.8%に減少させることに成功している。三振を増加させ、四球を減らすことが投球の改善につながることは想像に難くないだろう。

 

<菊池雄星の期間別投手成績>

  期間 奪三振割合 与四球割合
  2015-16年 21.9% 10.7%
  2017-18年 26.6% 6.8%
  NPB平均(2015-18年) 18.8% 8.3%

 

ストライクカウント別の成績から見える菊池の戦略

はたして、菊池はどのように奪三振割合を高めて与四球割合を減らしたのか。要因のひとつはカウント別成績を見ることでわかってくる。打者の攻撃力を計る指標である“OPS”(On-base Plus Slugging/出塁率と長打率を合算した指標)を投手視点から見たものを用い、菊池のストライクカウント別成績を確認しよう。

 

<菊池のストライクカウント別OPS>

  期間 0ストライク 1ストライク 2ストライク
  2015-16年 .824 .880 .433
  2017-18年 1.020 .750 .343

 

2017-18年の菊池は2015-16年と比較して、0ストライク時のOPSが.824から1.020に悪化している一方、1ストライクで.880→.750、2ストライクで.433→.343と値を良化させており、打者にいい打撃をさせていない。数値の変化量はほぼ相殺されているが、1ストライク、2ストライク時に比べ、0ストライク時点で勝負が決まるケースは非常に少ないため、その時点のOPS悪化は投手成績全体への致命傷とはならず、成績は向上した。

ストライクゾーン内への投球割合をカウント別に見ると、このような変化が起こった原因をよりはっきりと理解できる。

 

<菊池のストライクカウント別ストライクゾーン投球割合>

  期間 0ストライク 1ストライク 2ストライク
  2015-16年 47.4% 47.2% 36.4%
  2017-18年 53.3% 51.3% 40.9%

 

2015-16年に比べ、2017-18年の菊池はより積極的にストライクゾーン内で勝負する傾向が強かったようだ。その中でも特に0ストライク時、つまりファーストストライクを奪う投球においては47.4%から53.3%にゾーン内への投球割合が増加している。

0ストライク時のOPSが悪化した事実とあわせて考えよう。2017-18年の菊池はよりよいカウントで勝負するため、それまで以上に積極的にストライクをとりにいった。その結果、0ストライク時の成績が悪化する代償を負ったものの、改善を見せた1ストライク以降のカウントに、より確率よく持ち込むことで優れた投手へと成長したのだ。

 

MLB挑戦はファーストストライクがカギ

さて、このようにここ2年で投手として成長を見せた菊池のMLB挑戦はどのような結果になるだろうか。近年NPBからMLBに挑戦した先発投手の成績と比較してみよう。

<近年MLBに挑戦した主要先発投手の成績変化>

投手 奪三振割合   与四球割合  
  渡米前2年間 渡米後2年間 渡米前2年間 渡米後2年間
ダルビッシュ有 29.5% 30.1% 4.9% 10.2%
岩隈久志 18.8% 20.6% 4.3% 6.1%
田中将大 23.2% 22.8% 3.4% 4.2%
前田健太 21.4% 25.1% 5.2% 6.6%
菊池雄星 26.6% ? 6.8% ?

 

全体的な傾向として、各ピッチャーがNPB時代よりも高い、あるいは同等の奪三振割合を記録している。その一方で、どの投手も与四球は増加してしまっている。おそらくボールの違いやレベルの高い打者との対戦により、NPB時代ほど容易にストライクを獲得できないのであろう。

こうした過去の例からすると、菊池も同じようにストライクの獲得に苦戦する可能性が高い。この2年間ファーストストライクをとりにいくボールを痛打されている傾向は、強打者揃いのMLBでは不安要素になる。ただ一方で、菊池は2ストライクにまで追い込めば高い確率で奪三振が期待できる。強打のメジャーリーガーからいかにしてストライクを奪えるか。ファーストストライクの入り方は、菊池のMLB挑戦を左右するキーポイントになりそうだ。


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