【前編】大谷の影でメジャーの注目を集める菊池雄星

Sung Min Kim

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野球界の注目が8月31日にMLBスカウト陣の前で投げる大谷翔平に向けられたなか、もうひとりの注目選手がひっそりと活躍していた。

大谷の試合から800キロほど南にある球場では、埼玉西武ライオンズの菊池雄星が東北楽天ゴールデンイーグルスを圧倒し、2失点、11奪三振で完投。シーズン13勝目を挙げたのだ。大谷ほどのスポットライトは浴びていないかもしれないが、メジャーリーグで成功するポテンシャルを持った逸材だ。

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26歳の菊池は2017シーズンで26試合に登板し、16勝6敗、防御率1.97、187.2イニング、217三振、55四死球という成績を残した。プロ7年間全てライオンズでプレーし、キャリア防御率は2.71、通算59勝42敗だ。決して一発屋ではなく、菊池は高校の頃からすでに有名で、メジャーリーグも長いこと注目している。

2009年、花巻東(大谷と同じ高校)で18歳のエースだった菊池は、日本の最注目投手だったのだ。菊池を見るためにMLBからは8球団がスカウトを送り込んだ。もし当時MLBの球団と契約していたら、菊池はNPBのドラフトを通らずにメジャー入りする最初の高校生選手になっていた。

菊池もアメリカ行きを強く望んでおり、MLB側はかなり関心を寄せていた。テキサス・レンジャーズはデレク・ホランドを使って菊池を説得しようとしていたのがその一例だ。最後の最後で、菊池は日本に残りNPBの球団にドラフトされることを選んだ。その結果、西武が彼との交渉権を引き当て、契約に至った。

菊池は2013年、22歳にしてその才能を発揮し、17度の先発で防御率1.92を誇り、3度の完封も記録した。しかし肩の怪我で無念の離脱となってしまった。翌年、2014シーズン(5勝11敗、3.52)はまずまずの出来で、2015年は9勝10敗、防御率2.84、2016年は12勝7敗、防御率2.58という成績を残した。

防御率は良かったものの、彼は決して効率的な投手ではなかった。与四球率が高く(2014年から2016年まで、9回平均の四球数が5.0、3.7、4.2)、5イニングを投げ抜くのに120球投げる必要があることも多かった。

しかし今シーズンは、ライオンズファンが待ちわびていた活躍だったのだ。

2017年のパフォーマンスを彼らは「覚醒」だと表現している。より効率的な投球をするようになったことで、多くのイニング数を任せられるようになったのだ。オフシーズン中に楽天ゴールデンイーグルスに移籍した元エースの岸孝之の穴を埋めるためにも、菊池の復活は重要だった。

今シーズン、菊池は最多勝(16)、最優秀防御率(1.97)を獲得し、奪三振数も2位(217)となった。与四球率は大幅に下がり(2.35 BB/9)、三振率(10.4 K/9)はキャリア平均(7.9 K/9)を上回った。

しかし8月に、菊池は投球フォームの正当性を問われる一幕があった。8月24日のソフトバンク戦で、菊池が2段モーションを使用していると審判に指摘され、試合中にフォームを変更するよう指示されたのだ。それでリズムが狂ってしまった菊池は苦戦。3イニングで7失点を許してしまう。その後は立て直すことに成功したが(次の2試合で18イニングを投げ、2失点、18奪三振)、もしNPBが常に投球フォームについて指摘してくるようであれば、すぐにでもメジャーに来た方がいいかもしれない。

後編につづく)

原文: Japanese pitching star Yusei Kikuchi could have high ceiling in MLB

翻訳:大西玲央

Sung Min Kim