後半戦失速で2位フィニッシュの阪神、大山ら主軸の復調でV奪回を|プロ野球2021振り返り・2022展望

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前半戦は首位を快走も9月に捲られゲーム差なしの2位で終戦

[順位]2位(CSファースト・ステージ敗退)
[勝敗]77勝56敗10分
[勝率].579

2021年シーズンの阪神は序盤から首位を走るも、後半戦で息切れ。最終的に首位のヤクルトとはゲーム差0の2位に終わった。本拠地甲子園球場での開催となったクライマックス・シリーズ・ファーストステージでは巨人の前に2連敗。ファイナルステージへと駒を進めることなく終戦となった。

ヤクルトとの開幕カードを3連勝で飾ると、4月9日のDeNA戦からは8連勝。4月終了時点で20勝9敗と首位を快走する。5月・6月も貯金を作り、7月に失速しながらも前半戦を首位で終えた。ところが、後半戦からは苦しい戦いが続く。8月末から巨人に一時的に首位を譲り、9月23日にヤクルトに首位を明け渡すと、その後は一度もその座を奪い返せなかった。その後のクライマックス・シリーズでは2試合でわずか2得点と貧打に泣き、3位の巨人に敗れた。

 

青柳、秋山、伊藤の3人が2桁勝利を達成

[失点]508(2位)
[防御率]3.30(2位)

投手陣は防御率3.30、508失点ともにリーグ2位と奮闘した。東京オリンピックの日本代表にも選ばれた青柳晃洋が自己最多の13勝を挙げ最多勝に輝いた。また、秋山拓巳とドラフト2位ルーキーの伊藤将司の2人が規定投球回には未到達ながら10勝を挙げている。2021年シーズンのセ・リーグは2桁勝利投手が7人いたが、そのうちの3人が阪神の投手陣だった。

ガンケルも9勝を挙げており、後半戦から復帰した高橋遥人も7試合の登板で2完封を含む4勝をマークし、防御率も1.65と抜群の成績を残した。先発投手陣では西勇輝が故障もあり6勝9敗、防御率3.76と誤算だったものの、全体的には好成績を残している。その西も規定投球回には到達しており、最低限の役割は果たしたと言っていい。

さらに、2019年ドラフト1位の西純矢がプロ初登板で5回無安打無失点と好投し初勝利を挙げた。今季はわずか2試合の登板ではあったが、そこで掴んだ1勝は大きな意味がある。

中継ぎ投手に目を向けると守護神のスアレスが圧倒的な存在感を見せた。62試合の登板で1勝1敗42セーブ、防御率1.16の成績を残し最多セーブに輝いている。またセットアッパーの岩崎優も62試合の登板で3勝4敗1セーブ、41ホールド、防御率2.65と結果を残した。

岩崎からスアレスとつなぐ8回、9回のリレーは盤石だった。ただ、7回は岩貞祐太(46試合/防御率4.66)、馬場皐輔(44試合/防御率3.80)、そして高卒2年目の及川雅貴(39試合/防御率3.69)らを起用するも固定できなかった。終盤戦では後半戦から中継ぎに配置転換されたアルカンタラが登板する試合もあったほど。セットアッパーには苦しんだ。

 

佐藤と中野が加入も得点力は伸びず

[得点]541(5位)
[打率].247(4位)
[本塁打]121(5位)
[盗塁]114(1位)

野手はドラフト1位ルーキーの佐藤輝明の活躍が話題を集めた。佐藤は前半戦だけで20本塁打に到達。オールスターゲームにも出場し本塁打を放った。清原和博(西武/1986年)と桑田武(大洋/1959年)が残したルーキー本塁打記録の31本を更新するのは時間の問題かと思われた。しかし、後半戦では59打席連続無安打と大不振に陥るなど、最終的には24本塁打に終わった。それでも規定打席に到達し打率.238(425打数101安打)、24本塁打、64打点は1年目の数字としては文句なしといっていい。

もうひとりのルーキー中野拓夢(6位)も躍動した。遊撃手のレギュラーを奪うと、8月22日の中日戦からは2番に定着。規定打席にも到達し打率.273(466打数127安打)の成績を残した。また30盗塁はリーグトップ。新人ながら盗塁王も獲得している。前年のチーム80盗塁(120試合)から114盗塁と増えた分は、試合数が異なるとはいえほぼ中野の分と考えていい。

ルーキー2人が即戦力となったのは間違いない。その他では近本光司がシーズン終盤を右ハムストリングの張りで欠場するも、リーグ4位の打率.313(569打数178安打)とチームを引っ張った。

ただし、541得点(5位)、打率.247(4位)、121本塁打(5位)とチーム全体では課題の残る打撃成績となった。チーム打率は昨年の.246からわずかに上がったものの、1試合平均得点は4.12から3.78に減少。1試合平均本塁打も0.92本から0.85本へと減少している。新加入の佐藤が本塁打、中野が盗塁で貢献しながらもチームとしての得点力は伸び悩んだ。

打撃成績が低調だった一因には主力の不振があった。開幕から4番スタメンで起用されていた大山悠輔は、故障もあり129試合の出場で打率.260(466打数121安打)、21本塁打と昨年から数字を落とした。OPSは.918から.765と大きく減少。4番として求められた数字を残すことができなかった。

外国人選手は期待された新加入のロハス・ジュニアが60試合の出場で打率.217(189打数41安打)、8本塁打と苦戦。前年に韓国プロ野球(KBO)で本塁打と打点の二冠王に輝いた力を発揮できていない。

前半戦で17本塁打を放ったサンズも後半戦ではわずか3本塁打。10月以降は1試合も出場することなくシーズンを終え、クライマックス・シリーズでもベンチ外となった。来日3年目のマルテは128試合で打率.258(446打数115安打)、22本塁打とまずまずの成績。打率は低かったものの、出塁率.367はチームトップでリーグ7位。OPS.818もチームトップと気を吐いた。

大山や外国人選手たちが額面通りの働きができなかった分、数字に跳ね返っている。

 

スアレスが退団も守護神候補でケラーを獲得

<主な新加入選手>

【外国人選手】

アーロン・ウィルカーソン(投手・前ドジャース傘下3A)

カイル・ケラー(投手・前パイレーツ)

【戦力外】

渡邉雄大(投手・前ソフトバンク)※育成契約

【ドラフト指名】

<支配下>

1位:森木大智(投手・高知高)

2位:鈴木勇斗(投手・創価大)

3位:桐敷拓馬(投手・新潟医療福祉大)

4位:前川右京(外野手・智弁学園高)

5位:岡留英貴(投手・亜細亜大)

6位:豊田寛(外野手・日立製作所)

7位:中川勇人(捕手・京都国際高)

<育成>

1位:伊藤稜(投手・中京大)

このオフの懸案事項だった梅野隆太郎がFA権を行使せず残留となったのは大きい。来シーズンも主に坂本誠志郎と2人で扇の要を守っていくことになる。

しかし、守護神のスアレス、そしてサンズ、エドワーズと3人の外国人選手の退団が決まった。スアレスの後釜として獲得したのがカイル・ケラーだ。今シーズンはパイレーツで32試合に登板。防御率6.48と打ち込まれているものの、150キロ代後半のストレートとカーブを武器としており33.1回を投げ36奪三振と奪三振能力は高い。まずはオープン戦で適正を見ることになりそうだ。

もうひとりアーロン・ウィルカーソンは先発タイプ。ガンケルや今シーズンは活躍できなかったチェン・ウェインらと先発ローテーション及び外国人枠を争う。

ドラフトでは森木大智(高知高)を1位で獲得した。高卒の投手ということもあり来シーズンの戦力としてはまだ考えていないだろう。2位の鈴木勇斗(創価大)、3位の桐敷拓馬(新潟医療福祉大)、5位の岡留英貴(亜細亜大)の3人の大卒投手に一軍デビューの期待がかかる。

課題となる野手陣の補強は現時点でドラフトでしか行えていない。マルテとロハス・ジュニアが残留したものの、新外国人野手の獲得がないのは気がかりだ。

近本、中野で上位打線は固定された。その2人を返すためにも2年目となる佐藤がプロの水に慣れて今シーズン以上の数字を残し、大山が復調することが得点力アップの最低条件となるが、それだけでは物足りない。開幕までに長打力のある外国人野手の補強があるか否かで大きく変わりそうだ。

2019年に矢野燿大監督体制となってから3位、2位、2位と3年連続Aクラスを保っている。そろそろ2005年以来となる優勝がほしい。

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日本を拠点に国内外の様々なスポーツの最新ニュースや役に立つ情報を発信しているスポーティングニュース日本版のスタッフアカウント。本家であるスポーティングニュース米国版の姉妹版のひとつとして2017年8月に創刊された日本版の編集部員が取材・執筆しています。