中日ドラゴンズの2020年シーズン振り返り:大野雄大ら投手陣の奮闘で8年ぶりAクラス返り咲き

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2020年シーズンの中日は2012年以来8年ぶりにAクラス入りを果たした。大野雄大を中心とした投手陣の活躍が大きな要因となった。中継ぎ陣も祖父江大輔、福敬登、R.マルティネスの3人が勝ちパターンを形成。僅差のゲームをしっかりと拾ってきた。一方で打線は苦しんだ。

大野雄大が沢村賞を受賞し中継ぎ陣も充実

投手陣は先発、中継ぎともに奮闘した。なかでもエースの大野雄大は圧巻だった。

開幕戦では4回6失点でノックアウトされると、その後も白星がつかない苦しい序盤戦。しかし、7月31日のヤクルト戦で完投勝利を収めると、5試合連続完投勝利と波に乗る。終わってみれば、リーグ最多の10完投、6完封で11勝、防御率1.82の成績をマーク。2年連続となる最優秀防御率のタイトルも手中に収め、自身初の沢村賞の栄誉にも輝いた。

また、近年は結果を残すことができていなかった福谷浩司が復活したのも大きい。規定未到達ながら14試合の先発で92回を投げ8勝2敗、防御率2.64と好成績を残している。大野に次ぐ2番手としての役割をしっかりと果たした。

中継ぎ陣は祖父江大輔、福敬登、R.マルティネスの勝ちパターンが機能した。マルティネスは10月半ばに離脱したものの、祖父江と福は開幕から最終戦まで抹消されることなくブルペンを支えた。その結果が清水昇(ヤクルト)を含めた最優秀中継ぎのタイトル同時受賞だろう。

一方で右の柱として期待された柳裕也は2度の登録抹消と苦しいシーズンだった。投球回は85回にとどまり、6勝7敗、防御率3.60と結果を残すことができなかった。

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期待をかけられていた小笠原慎之介や山本拓実といった若い高卒の投手たちも、先発ローテーションに入ることはできず、ともに1勝3敗に終わっている。

中継ぎ投手では、守護神を任された岡田俊哉が苦しみ、7月から結果配置転換された。29試合の登板で2勝2敗3セーブ、3ホールド、防御率4.88の成績では結果を残したとは言えないだろう。

大島が2年連続となる最多安打のタイトルを獲得、ビシエドが不振にあえぐ

野手陣では大島洋平と高橋周平のふたりが打率3割を記録。大島は2年連続で最多安打のタイトルを獲得し、通算安打は1588本に。2000本安打がはっきりと視界に入ってきた。一方の高橋は自身初の打率3割到達。OPSもキャリアハイの.794と、打撃でチームを牽引した。

阿部寿樹は打率.291から打率.257と下がったものの、2019年の7本塁打から約2倍の13本塁打を放ち、パワーを見せた。目立った成績を残したわけではないが、木下拓哉もキャリアハイとなる88試合の出場で打率.267とまずまずの成績。正捕手争いで一歩抜け出した感がある。大野と最優秀バッテリーの表彰を受けたのも自信になったことだろう。

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一方で、ビシエドと平田良介は苦しんだ。ビシエドは2018年、2019年と2年連続で打率3割、OPS.870を超えていたが、2020年は打率.267,OPS.776と本来の打撃ができなかった。シーズン終盤には左肩を脱臼し戦線離脱。まさに踏んだり蹴ったりの1年となってしまった。

平田は不振と故障で2度の登録抹消があり、出場試合数も2011年以降で最少となる55試合にとどまっている。

チームで唯一、全試合に出場した京田陽太は前年の打率.249から打率.247へとやや下がったものの、OPSは.615から.647と上昇した。それでももう少し打撃面での改善がほしいところだ。

新戦力ではY.ロドリゲスが支配下登録され3勝をマーク

新戦力に目を向けてみよう。

ドラフトで獲得した6人の支配下選手たちは、6位の竹内龍臣をのぞいて全員が一軍デビューを果たした。

もっとも注目を浴びていたドラフト1位の石川昂也は、14試合の出場で打率.222(36打数8安打)と、数字だけ見れば戦力になったとは当然言えない。ただ、初打席で二塁打を放ってからの21打席ノーヒットを乗り越え、その後16打数7安打と結果を出した。高卒1年目のシーズンで得た大きな手応えだ。

開幕一軍入りを果たしたドラフト4位の郡司裕也は、開幕前は正捕手争いに加わりそうな勢いも見せたが、30試合の出場で打率.156(64打数10安打)と打撃面で苦戦した。石川と同じ高卒ルーキーの岡林勇希は5位指名ながら一軍デビューを果たし、安打も記録している。

投手陣はドラフト2位の橋本侑樹が開幕一軍入り。中継ぎとして起用されるも14試合で防御率7.41と結果を出せなかった。17回を投げ与四球13と制球面で苦しんだ。

同3位の岡野祐一郎は先発として9試合、中継ぎとして2試合に登板。防御率6.17と打ち込まれるシーンが目立った。大卒社会人出身の即戦力候補だっただけに、この成績は少し物足りないというのが正直なところだろう。

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新外国人選手は3人。もっともインパクトを残したのがY.ロドリゲスである。ロドリゲスは育成での入団だったが、8月に支配下登録されると先発として11試合に登板。3勝4敗、防御率4.12と成績は目立たないかもしれない。それでも、9回を投げ、67奪三振と三振を奪う能力に長けており、K/9は10.22。チーム内の先発投手ではトップの数字を叩き出した。

中継ぎ左腕として期待されたルイス・ゴンサレスは28試合の登板で勝ち負けはなく、4ホールド、防御率4.78。ホールド数からもわかるように勝ちパターンとしての起用はほとんどなかった。そのなかでこの数字は少し苦しい。期待に答えられず、1年で自由契約となった。

一方、野手の新外国人であるホセ・シエラは9月末から一軍でプレーしたものの、25試合の出場で打率.225(80打数18安打)と結果を残せず、ゴンサレス同様に1年で自由契約となった。

このように新戦力はロドリゲスが3勝を挙げたのが目立つのみ。ほとんど勝利に貢献することができなかった。しかし、石川や岡林といった高卒ルーキーが一軍で経験を積めたことのは来シーズン以降に大きなプラスとなるはずだ。

来季はビシエドとガーバーの外国人野手の出来次第か

2年連続Aクラス入りへ向けて、オフシーズンにも補強を行った。日本人選手では阪神を自由契約となった福留孝介を獲得。14年ぶりの古巣復帰となる福留は左の代打の切り札だけではなく、ベテランとして若い選手たちへのアドバイスなど精神的な支柱としての役割も担うことになる。伸び悩んでいる若手選手たちのお手本となることが期待される。

外国人選手では左腕のランディ・ロサリオと左の大砲候補であるマイク・ガーバーを獲得した。ガーバーは昨シーズンAAAで26本塁打を記録。長打力不足を解消する補強となるだろうか。

ドラフトでは6人の支配下指名のうち、1位の高橋宏斗(中京大付属中京高/投手)をはじめ4人が高校生。大卒・社会人の指名は2位の森博人(日体大/投手)と6位の三好大倫(JFE西日本/外野手)の2名だけで、即戦力よりも将来性を重視したドラフトだった。

年内は大きな補強がなかったものの投手陣が安定しているのは安心材料だ。柳が調子を取り戻し、大野と福谷が柱となれば大型連敗の可能性は低い。中継ぎ投手陣の勤続疲労は気になるものの、大崩れはなさそうだ。

野手陣はビシエドの回復具合とガーバーの適応次第で大きく状況が変わる。長打を期待している外国人選手2人が機能しなければ、投手陣が踏ん張っても勝ちきれない試合が多くなるだろう。外国人野手2人の働きが順位に直結することになりそうだ。

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日本を拠点に国内外の様々なスポーツの最新ニュースや役に立つ情報を発信しているスポーティングニュース日本版のスタッフアカウント。本家であるスポーティングニュース米国版の姉妹版のひとつとして2017年8月に創刊された日本版の編集部員が取材・執筆しています。