2019年シーズン最下位に沈んだヤクルトは小川淳司監督が辞任し、高津臣吾新監督体制で2020年シーズンを迎えることとなった。このオフシーズンは、2015年以来、5年ぶりとなるリーグ優勝へ向け補強に動いでいる。
★2015年GG賞のエスコバーら3人の外国人選手を獲得
このオフシーズンは福田秀平(ソフトバンク→ロッテ)、美馬学(楽天→ロッテ)と2人の国内FA宣言選手の争奪戦に参加したが、いずれも獲得には至らなかった。しかし、楽天を自由契約となった嶋基宏、同じく楽天を戦力外となった今野龍太、ソフトバンクを自由契約となった長谷川宙輝と日本人選手は3人の補強を行った。
なかでも日本代表としての経験もある嶋は、若いバッテリー陣の大きな助けとなるだろう。今野と長谷川の両投手も一軍入りは十分に狙えるはずだ。
また、ドラフト会議では1位で目玉であった奥川恭伸を指名。3球団競合の末、獲得に至った。高卒ということもあり、すぐに一軍での活躍を見込めるわけではないものの、未来へ向け大きな補強となったことは間違いない。
1位でその奥川を獲得し、2位から4位までは大学生の即戦力となりうる投手達を指名している。その3人が一軍キャンプスタートとなっており、高津監督の期待は大きい。
外国人選手にも動きがあった。これまで9年間に渡ってヤクルトを支えてきたウラディミール・バレンティンが退団し、ソフトバンクへと移籍したのである。
その代わりにやってきたのがアルシデス・エスコバーだ。バレンティンのような長打力が持ち味の選手ではなく、巧打型の選手であり遊撃の守備が売りとなる。2015年にはアメリカンリーグでゴールドグラブ賞にも輝いたほど。今年34歳になることで当時より守備範囲が狭まっているが、それでも内野の要としての働きが期待されている。
投手陣ではガブリエル・イノーア、マット・クックと2人が加わった。ともに先発としての起用が予定されているが、残留したアルバート・スアレス、スコット・マクガフもおり4人で3つの外国人枠を争うことになる。
【新加入】
<新外国人>
アルシデス・エスコバー(内野手)
マット・クック(投手)
ガブリエル・イノーア(投手)
<ドラフト>
1位:奥川恭伸(投手)
2位:吉田大喜(投手)
3位:杉山晃基(投手)
4位:大西広樹(投手)
5位:長岡秀樹(内野手)
6位:武岡龍世(内野手)
<その他>
長谷川宙輝(投手)※ソフトバンクを自由契約
今野龍太(投手)※楽天を戦力外
嶋基宏(捕手)※楽天を自由契約
★塩見泰隆は中堅のポジションを奪えるか?
ヤクルトの野手陣で注目となるのは外野手争いだ。バレンティンが抜けた穴をどのように埋めていくかで、今後の方針も変わってくる。
バレンティンのポジションを見ると左翼が空いているように見えるが、現在の外野手の状況を見るとそうではない。主に中堅を守ってきた青木宣親が今年は38歳。そろそろ左翼にコンバートしたい頃合いだ。その青木に代わって中堅を期待されるのが塩見泰隆である。
塩見は昨シーズン、オープン戦で打率.385(52打数20安打)とブレイクの兆しは見せたものの、シーズンでは結果を残せずレギュラー獲りはできなかった。3年目の今年は青木を押しのける勢いでの活躍が期待される。その青木への挑戦権を得るためにも、春季キャンプからアピールが必要だ。
その他では中山翔太、山崎晃大朗、ベテランの坂口智隆らがポジションを争う候補となる。塩見含めて誰がポジションを奪うかによって外野の守備位置が決まるため、現時点では流動的。開幕スタメンへ向け、外野のポジション争いが注目される。
内野陣は山田哲人、村上宗隆、エスコバーで3枠が埋まる。村上の守備位置によって空白のポジションなは変わってくる。残った1枠を西浦直亨や廣岡大志で争うことになる。
★吉田大喜ら新人3人にも開幕ローテーションのチャンスあり
一方の投手陣はどうだろうか。昨シーズンの勝ち頭である石川雅規、そして小川泰弘が柱となる。しかし、石川はすでに40歳であり、小川は昨シーズン5勝13敗と大きく負け越し。
スアレス、イノーア、クックの外国人選手も現時点では未知の状態。その他には山田大樹、高橋奎二や星知弥、原樹理、田川賢吾らの名前も挙がる。しかし、ソフトバンク時代の山田大をのぞき、年間を通じて投げ抜いた実績はなく、開幕ローテーションは手探りの状態となっている。
裏を返すと吉田、杉山、大西といった大卒の3人にもチャンスは大いにあるわけだ。すでに触れたとおり、3人とも春季キャンプでは一軍スタートが決まっている。ここでのアピール次第ではオープン戦での起用、そして開幕ローテーション入も決して夢ではない。
一方の中継ぎ陣はマクガフ、梅野雄吾と2人は確立されている。そこに石山泰稚が戻ってくれば、終盤は任せられるはずだ。3人の他にはベテランの近藤一樹、五十嵐亮太がいる。このふたりが、勝利の方程式としてではなく、試合中盤に登板するような編成にできると心強い。
ヤクルトは先発投手陣が長年の課題となっている。そこから再建できるかどうかは、新外国人選手、大卒の新人3人ら新戦力にかかっているといっても過言ではない。春季キャンプからその動きには注目だ。