ヤクルトスワローズの2020年シーズン振り返り:村上・清水ら若手が輝くも、先発陣に課題

Sporting News Japan Staff

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2019年シーズン最下位に沈んだヤクルトは、高津臣吾新監督体制で2020年シーズンに臨んだ。序盤は上位争いを繰り広げたものの、徐々に順位を下げ、8月末に最下位転落。2年連続の最下位でペナントレースを終えた。ただ、苦しいシーズンの中でも村上宗隆や青木宣親など、奮闘した選手も数多くいた。

村上が飛躍するも山田は苦しむ

打撃陣では3年目の若武者・村上が打率.307、28本塁打、86打点と堂々の成績を残し、チームを引っ張った。打撃三冠のタイトルこそなかったものの、最高出塁率のタイトルを獲得した。また、主将の青木も打率.317、18本塁打、51打点と年齢を感じさせない働きを見せ、チームを引っ張った。

しかし、山田哲人がシーズン途中にコンディション不良で登録を抹消されるなど、その他の選手は低調な成績に終わり、昨シーズンオフに退団したバレンティンの穴を埋めることはできなかった。チームとしては、チーム打率.242(リーグ6位)、468得点(同5位)と得点力不足に苦しんだ。

清水がセットアッパーに定着、高橋がローテーションを守れず

先発投手陣では、小川泰弘が規定投球回には届かなかったものの、5年ぶりに2ケタ勝利を達成し先発ローテーションを守った。8月にはノーヒットノーランを達成するなど、インパクトも残している。

小川と同じく柱として期待されたスアレスは4勝を挙げ防御率2.67の成績を残したものの、故障離脱によって12試合の登板にとどまった。飛躍を期待された高橋奎二もわずか10試合(先発9試合)の登板で不完全燃焼だった。

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先発投手の勝ち星を見ると小川の10勝に続くのがスアレスの4勝。高梨裕稔の3勝、石川雅規、吉田大喜、原樹理の2勝と先発陣が苦しんだ。

一方で中継ぎ陣は奮闘。石山泰稚と清水昇、マクガフの3人による勝ちパターンが確立されたのは大きい。特に、セットアッパーに定着した大卒2年目の清水は最優秀中継ぎのタイトルも獲得。飛躍のシーズンとなった。

その他では、寺島成輝がキャリアハイとなる30試合に登板し、プロ初勝利もマークしている。梅野雄吾も離脱期間はあったものの42試合に登板。欠かせない戦力となった。

エスコバーはわずか1本塁打と打撃面で苦しむ

2020年に新外国人選手として加入したエスコバーは、期待に応える活躍ができなかった。

MLBで遊撃手としてゴールドグラブ賞の受賞歴もあるエスコバーは、開幕戦から遊撃手として出場。随所に好プレーを見せたものの、全盛期の動きには程遠かった。守備範囲が狭く、シーズン後半からは三塁へとポジションを変更している。打撃面では打率.273(377打数103安打)とまずまずだったが、本塁打はわずか1本。長打率.329、OPS.641はともにセ・リーグで規定打席に到達している選手のなかで最下位と、長打力不足が目立った。

ルーキーの野手は長岡秀樹(ドラフト5位)と武岡龍世(同6位)のふたり。高卒ルーキーながら一軍戦に数度出場し、少ないチャンスの中で初安打を記録。スタメン出場した試合もあった。来シーズン以降へ向けて、いいスタートを切ったと言っていいだろう。

イノーア、クックの両外国人投手がともに未勝利

新戦力投手に目を向けると、外国人のイノーアとクックがともに苦しんだ。

開幕ローテーションに入ったイノーアは、3試合連続で4失点以上を喫する苦しいスタートだった。その後も立ち直ることができず、7月末には登録を抹消される。9月に中継ぎとして復帰すると、いきなりサヨナラ本塁打を浴びてしまう。次戦は抑え込んだものの、中継ぎ3試合目の登板は1回2失点と結果を残せなかった。結局、9試合の登板で0勝3敗、防御率10.13と戦力になることができないまま、シーズン途中の10月に退団が発表された。

もうひとりの新外国人選手クックも7試合(先発2試合)の登板で0勝3敗、防御率7.88といいところがなく、シーズン終了後に自由契約となった。

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新外国人投手2人で0勝6敗と6つの負け越し。それ以上に合計で40イニングしか稼げなかったことが、チームの低迷に大きく繋がっている。

外国人選手以外では、ソフトバンクを自由契約となってからヤクルトに入団した長谷川宙輝が奮闘した。中継ぎとして開幕一軍を掴むと、登録抹消されることなくシーズンを完走し44試合に登板した。1勝2敗7ホールド、防御率5.82と成績面では目立たなかったものの、昨年までは育成契約で、今季が実質1年目だったことを考えると大きく健闘したと言っていい。

中継ぎとして長谷川とともに奮闘したのが今野龍太だ。楽天から加入した今野は、20試合の登板で0勝1敗。勝ち星、ホールド、セーブは記録されていないが、防御率2.84と安定した投球を見せた。また、奪三振率12.79はチームトップの数字だった。

シーズン途中からの加入となった歳内宏明は1勝のみに終わったが、7試合に登板しチームの窮地を救っている。

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新人ではドラフト2位の吉田大喜が開幕から約1ヶ月後の7月17日に初登板を果たし、14試合に先発した。試合を作れないことも多く、無失点の登板は一度もない。最長でも6回までしか投げきることができなかった。ただ、そのなかでも2勝(7敗)をマークし、1年目ながらローテーションを守ったのは大きな収穫だ。

同4位の大西広樹は5試合(うち先発4試合)に登板した。唯一の先発となった試合では5回2失点と好投しており、二軍でも先発起用が多かった。来シーズン以降は先発での起用が濃厚だ。

シーズン終盤に投手コーチの配置を入れ替え

高津新政権は手探りの船出だった。チーム状況は悪くとも、一軍と二軍のコーチを入れ替えることはせず、シーズンを通して同じ顔ぶれで戦ってきた。

そのなかで投手コーチだけは一軍内での配置転換があった。ベンチにいた斎藤隆投手コーチとブルペン担当の石井弘寿投手コーチの配置を終盤戦で入れ替えたが、順位を動かすほどのカンフル剤とはなっていない。

積極補強で一転攻勢を狙う

今シーズン途中に山田哲人、小川泰弘、石山泰稚と3人の主力が同時にFA権を取得しており、その残留交渉がオフシーズンのメインの動きとなった。結果として3人は残留。大きな戦力ダウンなく来シーズンを戦えることになりそうだ。

2年続いてしまった最下位から脱却するため、積極的な補強も敢行した。外国人選手ではドミンゴ・サンタナ外野手、ホセ・オスナ内野手、サイスニード投手と3選手を獲得した。

サンタナはブルワーズ在籍時代の2017年に30本塁打を記録している右の大砲候補。2019年にはマリナーズの一員として開幕シリーズに来日し、満塁本塁打を放ったことでも話題となった。オスナは一塁・三塁を守る右の中距離ヒッター。両野手には長打力不足に泣いた打線のテコ入れとしての期待がかかる。

外国人野手は村上とともに主軸を貼ることが予想される。相手が村上と勝負せざるを得ない状況を作ることができれば、得点力は上がってくるはずだ。

サイスニードはMLBでは中継ぎとしての登板しかないものの、マイナーでは先発としての起用も多く、来日後は先発として起用されることが濃厚となっている。

日本人選手では内川聖一(前ソフトバンク)、宮台康平(前日本ハム)、近藤弘樹(前楽天)、小澤怜史(前ソフトバンク)と4人を補強。とくに内川は代打の切り札だけでなく、若手の手本としての役割に期待がかかる。

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新人ではドラフト1位の木澤尚文、同2位の山野太一と大卒の投手を2人獲得した。まずは徐々にプロの水になれさせていくことになりそうだ。

今シーズンのヤクルトは投打ともに奮わず最下位となった。しかし、なんとしても3年連続の最下位は免れようという姿勢は、このオフの動きから伝わってくる。まずはウィークポイントとなった得点力不足、そして先発投手の不足を外国人選手の補強で補った。

試合終盤の勝ちパターンはしっかりしていただけに、目論見通りにこの2つの弱点が解消できれば上位進出見えてきそうだ。

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日本を拠点に国内外の様々なスポーツの最新ニュースや役に立つ情報を発信しているスポーティングニュース日本版のスタッフアカウント。本家であるスポーティングニュース米国版の姉妹版のひとつとして2017年8月に創刊された日本版の編集部員が取材・執筆しています。