プロ野球の世界で「サイン盗み」は当たり前。サインをめぐる攻防の歴史

Hitoshi Sugaya

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「サイン盗み」が球界で話題になっている。今年春の高校野球センバツ大会で、石川・星陵の監督が相手の千葉・習志野に対し、サインを盗んでいる、として抗議したのがきっかけ。プロの世界では、とらえ方が違うし、触れてはならないテーマなのだが…。

プロ野球の関係者にこの問題をぶつけてみた。「なんじゃ、それは」と。この意味は、相手に作戦が分からないようにするためのサインがバレたら、盗まれた方の恥、ということ。つまり、サインは「見破る」といった表現が正しい。

サインは重要な武器だから、それを見破ることで相手を知ることができる。今年、巨人がFAで広島の丸を獲得。広島は補償制度を使って巨人の長野を取った。当然、移籍した選手には古巣のサインを聴取する。昨年は広島に7勝17敗1分けだった巨人が今季は4月いっぱいで5試合3勝2敗。高額契約の効果があったのだろうと思う。

マツダスタジアムで打席に立つ丸佳浩

サインにもっとも神経質になるのがバッテリー。日本の場合、多くは捕手がリードする。理由の一つに、打たれた投手は叱られると後に引きずるので、捕手を怒られ役にする。「捕手は女房役」のゆえんである。まさに昭和の名残り。

かつてはサインを見破るのに苦労した。外野席のセンターから双眼鏡で捕手のサインを見て打者に知らせていた。代表的なのは電波を使い、打者の体に付けた受信機に送るというもので、ビリビリと反応した、という。行き過ぎて痛い目に遭った球団もある。露骨なやり方が発覚して連盟から多額の罰金を取られている。

球種が分かっていれば必ずヒットにできる、というわけではない。投手がサイン通りに投げられなかった場合はひどいことになる。外角球だと思って踏み込んだらコントロールが狂って死球を受けたケースもあった。「ヘタにサインを知らされると、先入観となって打ちにくい」「投手にはクセがある。カーブのときは口が曲がるとかね」。こういう声は主軸打者に多かった。強打者は自分の読みに自信があり、次元の高い勝負を好む傾向が強かった。だから劇的な一打、名勝負が多かったともいえた。

バッテリーは防御策を考える。その一つが乱数表の導入。捕手が指で数字を示すと、投手はグラブに貼り付けた乱数表を見て球種を確認するというもので、これは1球ごとなので時間がかかって仕方がなかった。信じられないのはヤマ場のピンチになったとき、監督が捕手に球種のサインを出していた例。選手を信用してしないのだろう。捕手出身の監督がやっていた。

田中将大

そんな工夫を破壊したのがセンターからのテレビ中継による映像と球場備え付けのモニター。捕手のサインが丸見えとなったからである。走者なしでもセットポジションをとるのはボールの握りを隠すためだ。ヤンキースの田中将大はグラブとボールを真ん中で合わせるようにして構えてから投球フォームに入る。

かつてはボールの握りなどお構いなしに投げた投手もいる。江川卓はそんなタイプだった。速球とカーブだけで勝った力のある数少ない投手だった。伝説的なのは400勝投手の金田正一。ノーサインで人並み外れた速球と大きなカーブを投げた。捕手は体中アザだらけ。勝利数と三振の山はそんな犠牲の上に築き上げられた。

スタンドのファンがサインを見ることができるのは攻撃のときで、三塁ベースコーチが体のあちこちを触っている姿だ。キーになるサインがあって、その次に出るサインが作戦というふうになる。ファンは作戦を想像し、他のスポーツにはあまり見られない面白さを味わえる。

日本のプロ野球でこのサインが注目されたのは1957年。巨人の水原監督がドジャースのフロリダキャンプで、帽子、ユニフォーム、ベルトなどを触るブロックサインを教わって帰国。自ら三塁ベースコーチに立ってこれをやった。その姿が絵になった。テレビ放映が本格化するとそれが見せ所でもあった。

サインは毎年変わる。選手の移籍があるからで、以前はライバルチームの解雇された選手を取り、サインなどをしゃべらせた。だからサインは複雑化しており、1試合の中で選手個人、打順ごと、イニングごとなどに変わる。引退したイチローが「野球は頭を使う」と言ったのはその通りなのである。

サイン見破りは今でも行われている。当たり前なのだが、触れては困る一面を持つテーマでの一つである。「盗み」だと悪いことをしたイメージだが、これが「見破る」となると“お手柄”になる。

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※記事はIOC公式サイト『Olympic Channel』提供

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