「ストレートへのアジャスト」が鍵に? ヤクルト・青木の日本復帰成功をデータから読み解く

DELTA

「ストレートへのアジャスト」が鍵に? ヤクルト・青木の日本復帰成功をデータから読み解く image

「復帰イヤー」の成績としてはトップクラス

日本人選手のMLBへの挑戦はキャリアのピークに行われることが多い。そのため、NPB復帰する場合、年齢は30代に入っていることが大半で、成績を占うときには加齢の影響が懸念されることは少なくない。今シーズン東京ヤクルトに復帰した青木宣親も、36歳と高い年齢での復帰ということもあって、その例に洩れなかった。

<MLBに挑戦しNPBに復帰した主な野手の初年度の打撃成績>

  選手 年度 年齢 試合 安打 打率 本塁打
  新庄 剛志 2004 32 123 150 .298 24
  井口 資仁 2009 35 123 126 .281 19
  城島 健司 2010 34 144 168 .303 28
  田口 壮 2010 41 53 31 .261 3
  松井 稼頭央 2011 36 139 140 .261 9
  岩村 明憲 2011 32 77 32 .183 0
  福留 孝介 2013 36 63 42 .198 11
  川崎 宗則 2017 36 42 33 .241 0
  青木 宣親 2018 36 127 162 .327 10

 

だが、終わってみれば青木はセントラル・リーグ4位の.327という打率を残し、レギュラーシーズン2位でのクライマックスシリーズ出場に大きく貢献した。NPBに復帰した日本人メジャーリーガーの初年度としては最も高い打率を残し、162という安打数も2010年の城島健司(当時阪神)の168安打に次ぐもので、日本球界復帰の成功例といえる結果となった。

とはいえ、春先には打撃の調子が上がらない期間があった。3月から4月にかけては安打の多くがシングルヒットとなり、長打がほとんど生まれていなかった。

<青木宣親の月別打撃成績(2018年)>

  期間 打席 打率 出塁率 長打率 OPS
  3・4月 101 .25 .327 .307 .634
  5月 96 .28 .385 .39 .776
  6月 101 .388 .485 .682 1.168
  7月 61 .37 .443 .444 .887
  8月 113 .361 .451 .526 .977
  9・10月 95 .326 .368 .483 .852

 

5月頃よりストレートを引っ張るケースが増加

春先の青木はどのような状態にあったのだろうか。期間別に様々なデータを見ていったとき、目にとまったのがストレートに対する成績だ。

<青木宣親の4月までとそれ以降の対ストレート成績>

  期間 打率 長打率
  4月まで .233 .327
  5月以降 .388 .601

 

4月までの青木はストレートに対し43打数10安打(打率.233)で、長打はわずか1本に終わっていた。それが5月以降は178打数69安打(打率.388)と大きく改善され、長打も生まれるようになっていた。全投球に占める割合の大きいストレートが打てるようになったことで、青木は打撃成績を高めたようだ。

<青木宣親の4月までとそれ以降の対ストレート成績(打撃方向)>

  期間 引っ張り センター返し 逆方向
  4月まで 15.4% 25.6% 53.8%
  5月以降 36.3% 33.9% 29.8%

 

対ストレートについては、打球方向でも4月までとそれ以降で違いが見られた。4月までは逆方向への打球が極めて多く、ストレートを引っ張って強く叩くような打撃はあまり見せていなかった。しかし、5月以降はストレートをセンターから引っ張り方向へ運ぶ打球が増えていた。

こうした推移から見えてくるのは、春先の青木が何かしらの調整をしていた可能性である。MLBでは2割7〜9分の打率と3割5分付近の出塁率をキープし、塁に出る働きで貢献を果たし、青木は自らの居場所を守ってきた。NPBに戻った今シーズンも、当初はそれに近いスタイルの打撃を見せたが、徐々に渡米前のような長打も意識した打撃に戻していったのではないだろうか。

青木が離れていた6シーズンで、セ・リーグの投手も大きく入れ替わっており、対戦経験のない投手への対応も必要だったことだろう。日本人メジャーリーガーの復帰に際しては、渡米前の華々しい成績のイメージもあって、早々の活躍が期待されがちだ。だが、新外国人選手がそうであるように、日本人選手であっても異なる環境へのアジャストには一定の時間を要する——そんなことを示唆する形跡が、データからは見てとれた。

DELTA