キラ星の88年生まれ、「ハンカチ世代」進化し「プラチナ世代」に

キラ星の88年生まれ、「ハンカチ世代」進化し「プラチナ世代」に image

球界は「ハンカチ世代」(1988年生まれ)の活躍が目覚ましい。皮肉にもこの呼び名の象徴である選手だけが取り残されている。2020年を振り返ってみる。
「ハンカチ世代」とは、ドラフト1位で日本ハム入りした斎藤佑樹の世代を指す。斎藤が早実時代に夏の甲子園で優勝したとき、ハンカチで汗を拭っては投げ“ハンカチ王子”と。さらに早大から騒がれてプロ入りしたところから斎藤世代の代名詞としてメディアが多用している。
まさにキラ星のごとく。スター選手をご覧あれ(D〇はドラフト指名順位)。

まず打者。

  • 柳田悠岐(D②、ソフトバンク)
  • 坂本隼人(D①、巨人)
  • 宮崎敏郎(D⑥、DeNA)
  • 梶谷隆幸(D③、DeNA)
  • 秋山奨吾(D③、西武-レッズ)

だれもが認める最強は柳田。ロッテとのクライマックスシリーズ第1戦で低めの球をバックスクリーンに叩き込んだ本塁打は、まさに「規格外のバッター」の証明だった。今季は最多安打146を放ち打率3割4分2厘(2位)29本塁打(3位)86打点(3位)。加えて長打率6割2分3厘、90得点、266塁打はトップ。昨年まで首位打者2度にMVPも。
坂本はシーズン最終盤の11月9日に3安打の猛打賞で2000安打。31歳10か月での達成は史上2番目の若さ。35歳までプレーできれば張本勲の3085本を抜くだろう。「天下一品の内角打ち」は打者のお手本である。これまで首位打者にMVP、遊撃手としてベストナイン5度が光る。
今年よく打ったのは梶谷。打率3割2分3厘は2位と躍進、勝負強さが目立った。同僚の宮崎は3割をキープ(7位)。かつての首位打者は健在だった。
今季から首位打者と最多安打4度を引っ提げて海を渡った秋山。後半は1番を打ち好打を見せ、俊足も披露した。来年は左翼のレギュラー候補である。

続いて投手。惚れ惚れする顔触れである。

  • 大野雄大(D①、中日)
  • 石川 歩(D①、ロッテ)
  • 沢村拓一(D①、巨人-ロッテ)
  • 吉川光夫(D①、日本ハム-巨人-日本ハム)
  • 田中将大(D①、楽天-ヤンキース)
  • 前田健太(D①、広島-ドジャース-ツインズ)

大ブレークは何といっても大野。148回3分の2を投げ、完投10、完封6、奪三振148、防御率1.82。いずれも1位。「アッパレ」である。防御率は2年連続のタイトル。
かつての新人王沢村は9月に移籍して復活した格好。速球が戻り、ロッテをクライマックスシリーズ進出に貢献した。同僚の石川は主力としてマウンドを守った。

世代を代表する投手が大リーグに2人いる。
ヤンキースとの7年契約を終えFAとなった田中は、甲子園の決勝で斎藤に負けたことで知られるが、プロ入り後は圧倒的な存在として君臨。楽天時代、最多勝に防御率などのタイトルのほか、新人王、MVP、沢村賞などの記者投票のタイトルをすべて受賞している。今季は3勝3敗だったが、評価は依然としてトップクラスである。
田中は11月初め、チャリティー活動を認められ、ニューヨークの日本商工会議所から「日米特別功労賞」を受賞。米国に溶け込んでいる証明となった。
前田は今季6勝1敗、防御率2.70。ア・リーグのサイ・ヤング賞選考で2位になる高い評価を得た。広島時代には防御率1位を3度などのタイトルにノーヒットノーランを達成している。ドジャースを蹴って移籍した意気にファンは大きな拍手を送った。

忘れてならないのは左腕の吉川光夫。12年にこの世代で最初にMVPを獲得している。
「ハンカチ世代」の表札の斎藤は、10年目の今季は1軍登板なし。ファームで19試合、1勝3敗、防御率9.31。右ヒジ手術に踏み切るという。
これほど人材がそろった世代は珍しい。グレードアップして“プラチナ世代”と呼んでいい。

 


菅谷 齊(すがや・ひとし)1943年、東京・港区生まれ、法大卒。共同通信で巨人、阪神、大リーグなどを担当。1984年ロサンゼルス五輪特派員。スポーツデータ部長、編集委員。野球殿堂選考代表幹事を務め三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。大沢啓二理事長時代の社団・法人野球振興会(プロ野球OBクラブ)事務局長。ビジネススクールのマスコミ講師などを歴任。法政二高が甲子園夏春連覇した時の野球部員。同期に元巨人の柴田勲、後輩に日本人初の大リーガー村上雅則ら。現在は共同通信社友、日本記者クラブ会員、東京プロ野球記者OBクラブ会長。