「1勝1億2500万」も… ファンを落胆させた億万プロ野球選手たちの晩秋

菅谷齊

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年俸億万は選手のあこがれである。しかし、不振に終わるとファンから「しっかりしろ」とお叱り。2023年シーズンはそんな選手が多いこと、多いこと…。

菅野、田中の不振代償は監督辞任?

今年もファンを裏切った代表に挙げられているのが巨人の菅野智之と楽天の田中将大だった。

菅野=5億円 4勝8敗 防御率3.36
田中=4億7500万円 7勝11敗 防御率4.91

確かに年俸には釣り合わない成績である。菅野は1勝あたり1億2500万円というから、もう話にならない。さらに登板14試合と聞くと、言葉を失うありさまだった。故障に襲われたのが大きな原因とはいえチームにとっては大誤算でしかない。

田中の1勝は6800万円ほど。1年間のローテーションを守ったという点では評価できるものの、かつての活躍を夢見ていたファンを失望させた投球内容だった。

この両投手は年俸でトップを競い合った。20年オフ、菅野が8億円で契約更改すると、ヤンキースから戻って来た田中は9億円で契約した。新興楽天が老舗巨人に一泡吹かせた、と言われたものである。

ところが二人の21年からの成績は芳しくなく、成績とともに年俸が大幅ダウンした。

菅野=21年8億円・6勝7敗 → 22年6億円・10勝7敗
田中=21年9億円・4勝9敗 → 22年4.75億円・9勝12敗

今年、この結果はチームに何をもたらしたか。巨人、楽天ともリーグ4位で、そろって首位争いに絡めなかった。投手陣の柱とされた菅野、田中の不調が大きな原因だった。シーズンが終わると、巨人の原辰徳監督は契約を1年残して解任され、楽天の石井一久監督は契約切れで退任。原、石井は菅野、田中の“不振の代償”という形となった。原にとって菅野は甥っ子という関係だったから複雑な感情が両者に残ったことだろう。

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「期待外れ」三冠王村上、二冠山川は「裏切り」

打者でいえば、ヤクルトの村上宗隆と西武の山川穂高が批判、非難の標的だった。
昨22年の両選手の活躍は派手だった。村上は三冠(打率.318、本塁打56、打点134)を独占して年俸6億円を勝ち取り、山川は二冠(本塁打41、打点90)を取り2億7000万円でともに今季を迎えたのだが…。

村上=打率.255 本塁打31 打点84
山川=打率.254 本塁打0 打点5

この二人のためか、ヤクルトも西武もそろって5位に沈んだ。

ヤクルトはセ・リーグ3連覇を目指していたからファンの期待をすべて裏切った。2年続けて日本一を争ったオリックスがパ・リーグを制したのと対照的だったから風当たりはきつかった。三冠王が背景にある村上は“A級戦犯”扱いだった。本塁打と打点は主軸打者として合格点なのだが、昨年のフィーバーから今季は「村上時代の到来か」といわれていただけに重荷になったこと否めない。

山川の場合は村上とは全く違う。グラウンド外の出来事がチーム全体に影響した。5月の17試合出場時点で球団から「無期限出場停止」の処分が出て球場から姿を消した。打線の中心の体たらく事件はチームを前年3位からBクラスに落ちる最大原因となった。
同じ“転落の罪”でも内容は全く違う。村上は「思わぬ期待外れ」といってよく、山川は「大いなる裏切り」である。

不振だったその他の億万選手たち

成功の証だった億万選手もひとたび成績が落ちると批判にさらされる。ひたすら「ゴメンなさい」とファンに頭を下げ「来年こそ」を誓う。そんな主な選手を挙げてみる。

  • 山田哲人(ヤクルト)=5億円 打率.231、安打87、本塁打14、盗塁4
  • 丸佳浩(巨人)=4.5億円 打率.244、安打94、本塁打18
  • 中田翔(巨人)=3億円 打率.255、本塁打15、打点37
  • 山崎康晃(DeNA)=3億円 20セーブ、防御率4.37
  • 西勇(阪神)=3億円 8勝5敗、防御率3.57

このほか青柳晃洋(阪神)今宮健太、甲斐拓也(以上ソフトバンク)中村奨吾(ロッテ)鈴木大地(楽天)らの億万選手がいる。

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菅谷齊

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菅谷齊(すがや・ひとし)1943年、東京・港区生まれ、法大卒。共同通信で巨人、阪神、大リーグなどを担当。1984年ロサンゼルス五輪特派員。スポーツデータ部長、編集委員。野球殿堂選考代表幹事を務め三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。大沢啓二理事長時代の社団・法人野球振興会(プロ野球OBクラブ)事務局長。ビジネススクールのマスコミ講師などを歴任。法政二高が甲子園夏春連覇した時の野球部員。同期に元巨人の柴田勲、後輩に日本人初の大リーガー村上雅則ら。現在は共同通信社友、日本記者クラブ会員、東京プロ野球記者OBクラブ会長。著書「日本プロ野球の歴史」(大修館、B5版、410ページ)が2023年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞。