NFLドリームチーム誕生なるか? ドルフィンズWRヒルが2028年五輪新種目フラッグフットボールへの参加を猛アピール

石山修二 Shuji Ishiyama

NFLドリームチーム誕生なるか? ドルフィンズWRヒルが2028年五輪新種目フラッグフットボールへの参加を猛アピール image

NFLのスター選手たちがドリームチームを結成し、オリンピックで世界の舞台に登場する――。そんな、まさに夢のようなストーリーがマイアミ・ドルフィンズのワイドレシーバー(WR)タイリーク・ヒルの発言に端を発し、現実味を帯び始めている。

国際オリンピック委員会(IOC)が2028年夏のロサンゼルス・オリンピックで実施される追加競技として、野球・ソフトボール、クリケット、ラクロス、スカッシュとともにフラッグフットボールの5競技を発表したのは10月16日。ヒルはその発表前から、自身のSNS上でフラッグフットボールの追加競技採用を強く後押ししていた。

そして、自らが配信するポッドキャスト「It Needed To Be Said」の中でも、オリンピック参加への強い意欲を語ってみせた。 

「自分は子供の頃から(バスケットボールの)ドリームチームの大ファンだったんだ。レブロン(ジェームズ/現NBAロサンゼルス・レイカーズ)のドキュメンタリーなんて月に2回は観てたね。彼らの闘争心、競争、チーム内でのお互いに及ぼす影響に強く惹かれたし、今では自分も毎日それをもたらそうとしている」と、NBA選手たちのオリンピックでの戦いぶりに強く感銘を受けたことを告白。

「自分がオリンピックに出られるレベルにいて、アメリカを代表してメダルに挑んだと言えるってだけでも特別なこと。他のNFL選手たちも同じ思いだったら最高だよ」

ヒルのほかにも、元タンパベイ・バッカニアーズのタイトエンド(TE)ロブ・グロンコウスキーが早々に参加意欲を表すなど、現役・引退選手の中でフラッグフットボールへの関心は高まりをみせている。

さらに17日には、NFLシニアバイスプレジデントのピーター・オライリー氏が、オリンピック委員会の発表を受けた上で、最終的にアメリカ代表を決める立場にあるのはNFLではないとしながらも、「チームUSAだけでなく、NFLには第5週の時点で113名の外国籍の選手がいますから」とコメント。選手たちのオリンピックへの参加意欲を汲みながら、NFL選手が参加できるような枠組みを選手組合、チームとともに話し合っていくことを表明した。

[AD] NFLの全てがここに。NFLゲームパス観るならDAZNで

五輪新種目フラッグフットボールとは? 

フラッグフットボールは、アメリカンフットボールがベースになっている競技で、5人対5人で行い、タックルなどのコンタクトプレーの代わりに腰の左右につけたフラッグを取り合う。原則としてコンタクトは禁止されていて、それによって安全性を高めるとともに、ボールとフラッグさえあればプレー可能なので、老若男女を問わず手軽に楽しむことが可能だ。NFLは20年以上にわたり、世界中でこのスポーツのプロモーションを続けてきた。

「NFLはフラッグフットボールを世界中に広めていくことにコミットしています。今回のオリンピックの決定はその過程を加速するでしょう。ただ、私たちの視野は長期的なもの、単に2028年や2028年7月(オリンピック)に向けたものではありません」

オライリー氏がこう語るように、今後もフットボールを世界中に普及させていくための鍵としてフラッグフットボールを重要視している。昨シーズンからは、NFLのオールスターゲーム『プロボウル』のフォーマットを変更し、フラッグフットボールを取り入れたことでさらに露出の度合いも高めている。

そんななかでの2028年ロサンゼルス・オリンピックでの追加競技採用は、フラッグフットボールの認知拡大・普及にとって起爆剤となることは間違いない。そこにNFL選手たちの参加が実現すればさらなるインパクトが加わることは必至で、NFLにとってはぜひとも実現したいはずだ。

[AD] AmazonでNFLグッズをチェック!

国際オリンピック委員会の思惑

今回、ロサンゼルス・オリンピックで、フラッグフットボールに限らず、野球、クリケットなど、すでにプロリーグが確立されているスポーツが追加競技として選ばれたことについて思惑があることは、オリンピック委員会側も隠していない。

バスケットボールの『ドリームチーム』を引き合いにしながら、NBAやFIBA(国際バスケットボール連盟)と連携してプロ選手の参加を促すことによって、オリンピックがバスケットボールという競技の発展に役立つことができているとしている。また、2014年に採択された『オリンピックアジェンダ2020』に記した40の提言の中では、「プロリーグとの関係を構築する」と明記されており、「各プロリーグのさまざまな性質や制約について認識」し、「関連する各国際競技連盟と協力し、臨機応変に最適な連携モデルを採用」、「最も優れた選手の参加を確実なものにする」と記されているという。

だとすれば、国際オリンピック委員会にとっても、ヒルをはじめとしたNFL選手のオリンピック参加表明は大歓迎と言えるだろう。

[AD] WOWOWならスポーツも映画・音楽も楽しめる!

ヒルの夢:オリンピック

現在、ドルフィンズでプレーするヒルはNFL8年目。今シーズンここまで6試合で42キャッチ814ヤード、6タッチダウンを獲得している。その爆発的なスピードを武器に1キャッチ平均19.38ヤードという驚異的な数字を記録し、獲得ヤードではNFLトップに君臨している。

そのヒルがオリンピックについて言及したのは実は今回が初めてのことではない。カンザスシティ・チーフス時代の2020年、第54回スーパーボウルでのメディアデイにおいて、東京オリンピックにむけた選考会に参加したいという気持ちを語っていた。

もともと高校・大学時代には陸上競技にも参加、高校時代には200mで20秒14という当時の全米6位のタイムを叩き出していた実績の持ち主。それだけ真剣に陸上に取り組んでいたヒルだけに、フットボール向けに作った体で世界レベルの陸上にトライすることの難しさも重々理解していて、結局この時は選考会にトライすることはなかった。

それでも今年3月、ケンタッキー州ルイビルで開かれたUSATFマスターズ・インドアチャンピオンシップに参加すると、学生時代の2014年以来の陸上競技大会挑戦だったにもかかわらず、60mダッシュ/25-29歳の部に参加したヒルは、6秒70のタイムで圧勝。そのスピードとともに、陸上への情熱も変わらず持っていることをうかがわせた。

今年4月にカンザスシティのラジオに出演した際には、「(プロ生活)10年を目指してやってきた。今のドルフィンズとの契約を全うしたら、それで終わりにしたい。ビジネスサイドのこともやってみたいしね。自分の人生だから、いろんなことをやりたいんだ」とも語っていた。最近では、引退後にはポルノ男優をやってみたいといった爆弾発言で世間を賑わせることもあったように、その脳裏に浮かぶフィールドは常人には計り知れない。

ヒルにとっても、NFLにとっても、そしてオリンピックにとっても願ったり叶ったりのNFLドリームチームの登場は、はたして2028年ロサンゼルス・オリンピックで実現するのだろうか。

[AD] NFLの全てがここに。NFLゲームパス観るならDAZNで

本サイトに掲載されているリンクから商品の購入やサービスの契約をされた場合、本サイトが収益を得ることがあります。

石山修二 Shuji Ishiyama

石山修二 Shuji Ishiyama Photo

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター