トム・ブレイディがNFL復帰! 史上最高QBの引退撤回が生んだ勝ち組と負け組を探る


Vinnie Iyer

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トム・ブレイディのNFLからの引退は40日間しか続かなかった。この史上最高のクォーターバックは引退を撤回し、自身23年目のNFL現役シーズンとなる2022年をタンパベイ・バッカニアーズでプレイすることを決断したのだ。

この史上最高選手の決断は、バッカニアーズだけではなく他の31チームが新たなNFLシーズンとフリーエージェント期間の準備をしている最中に起きた。そのことはブレイディ個人の心変わりに過ぎないわけだが、その影響は大きく、リーグ全体に様々な波紋を引き起こした。明らかな「勝ち組」もいれば、複数の「負け組」もいる。

トム・ブレイディのNFL復帰による勝ち組と負け組

勝ち組:タンパベイ・バッカニアーズ

まずはもっとも簡単なところから始めよう。トレードであれ、ドラフトであれ、あるいは自チーム内からの抜擢であれ、バッカニアーズはもうクォーターバックを探し回る必要がなくなったし、チームを再建モードに切り替えることもなくなった。そしてNFC南地区の優勝候補とスーパーボウル挑戦者の位置に戻ってきた。少なくとも2023年まではブレイディの後釜を探さなくてもよいわけであるし、ブレイディがその後も現役を続ける可能性さえもある。

負け組:アーロン・ロジャース

NFCでスーパーボウル制覇を成し遂げたクォーターバックの中でも、ロジャースはまるで王様のように見えていた。ブレイディが引退し、ラッセル・ウィルソンがAFCのデンバー・ブロンコスへ移籍し、そしてドリュー・ブリーズが引退してから1シーズンが過ぎていたからだ。しかし、これでロジャースの前途は明らかではなくなった。グリーンベイ・パッカーズをまたもシーズン13勝チームに作り上げ、そして自身2度目のスーパーボウル優勝リングを手に入れることができるか。ロジャースは今オフシーズンも多くの話題を振りまいてきたが、そのすべてはブレイディの決断ひとつで吹き飛んでしまった。

勝ち組:ピッツバーグ・スティーラーズ

スティーラーズはドラフトの指名順が20番目であるが、これで27番目のバッカニアーズが最有力クォーターバックと見られる2人のうちのひとりを指名することを心配しなくてもよくなった。マリク・ウィリス(リバティ大学)とケニー・ピケット(ピッツバーグ大学)のどちらかは残っているだろう。32番目のデトロイト・ライオンズも他に多くのポジションを必要としていて、クォーターバック獲得に動くとは考えにくいからだ。

負け組:ニューイングランド・ペイトリオッツ

ビル・ベリチック(ヘッドコーチ)はまたしてもブレイディがペイトリオッツ以外のチームでスーパーボウル制覇を目指すことを聞き続けなくてはいけなくなった。マック・ジョーンズ(クォーターバック)はこれからも史上最高選手の影に怯え続けなくてはいけなくなった。ブレイディが2022年シーズンにペイトリオッツと直接対戦することはない。しかしそれでも、元チームに及ぼす影響がなくなるわけではないのだ。

勝ち組:シアトル・シーホークス、またはフィラデルフィア・イーグルス

シーホークスもイーグルスも2022年シーズンにスーパーボウル進出を狙えるチームではない。だが、この両チームともデショーン・ワトソン(現在ヒューストン・テキサンズに所属しているクォーターバック)の獲得を目指している。そしてバッカニアーズはその獲得競争のもっとも大きな相手になると見られていただけに、チャンスが広がった。カロライナ・パンサーズもワトソン獲得に積極的であると報じられているが、こちらはブレイディがバッカニアーズに復帰したことで、NFC南地区制覇はなくなったも同然となった。パンサーズに関しては負け組になったといえる。

負け組:サンフランシスコ・49ersとラスベガス・レイダース

ブレイディが引退を撤回して、故郷のサンフランシスコを本拠地とする49ersに移籍する、という噂が駆け巡っていたことがある。それとは別に、ブレイディがレイダースに移籍して、デレック・カーに代わってクォーターバックを務める、という噂もあった。レイダースのヘッドコーチであるジョシュ・マクダニエルズは現役時代、長い間ペイトリオッツでブレイディのチームメイトだったからだ。それらの噂にどれだけの信憑性があったのかは今では分からないが、ブレイディがどちらも自身3つめのチームに選ばなかったことは確かだ。

勝ち組:ロブ・グロンコウスキーとバッカニアーズのレシーバー陣

グロンコウスキーはスーパーボウル優勝リングをふたたび手にするために、バッファロー・ビルズかシンシナティ・ベンガルズへの移籍を視野に入れていた。グロンコウスキーも引退しない限りは、親友のブレイディとバッカニアーズでプレイするだろうと思われる。チームから1年契約延長の申請があったクリス・ゴッドウィン(ワイドレシーバー)とフリーエージェントのレナード・フォーネット(ランニングバック)ら、昨シーズンの攻撃陣で中心になった選手たちも、史上最高選手と同じチームに戻ってプレイすることを選ぶだろう。マイク・エバンス(ワイドレシーバー)も驚異的な成績を伸ばし続けることができる。ブレイディが復帰することによって、ライアン・ジェンセン(センター)もチームに残ることを考えるかもしれない。アリ・マーペット(ガード)が引退したことで、その重要性は高まった。

訳者注:3月14日、ライアン・ジェンセンはタンパベイ・バッカニアーズと3年総額3900万ドル(約46億円)で契約に合意したことが各メディアで報じられた。

負け組:ジミー・ガロポロと他のクォーターバックたち

ガロポロはデンバー・ブロンコスへ移籍する可能性をラッセル・ウィルソンに、そしてワシントン・コマンダースへ移籍する可能性をカーソン・ウェンツに、それぞれ奪われた。49ersでのポジションもトレイ・ランスにとって代わられることから、バッカニアーズに移籍して、元ペイトリオッツのチームメイトであるブレイディの後釜を務めるということが、ガロポロにとって最高の選択肢だった。後に残った移籍先の可能性はインディアナポリス・コルツだけになってしまった。フリーエージェント市場においては、ミッチェル・トゥルビスキー(現バッファロー・ビルズ)やマーカス・マリオタ(現ラスベガス・レイダース)ら、かつてのドラフト1巡目指名選手たちが、残り少なくなった先発クォーターバックのポジションを争うことになった。

勝ち組:NFL全体

この史上最高選手が現役に戻ってくることは、NFLにとってはまぎれもない朗報である。好むと好まざるは別にして、ブレイディの集客力は抜群だ。ブレイディがプレイするというだけで、すべての試合は大イベントになるのだ。

2022年のレギュラーシーズンは、ブレイディと大物クォーターバックたち(ロジャース、パトリック・マホームズ、ジョー・バロウ、マシュー・スタフォード、ダック・プレスコット、ラマー・ジャクソン、そしてカイラー・マーレイ)との対決がふたたび見られるということだ。ブレイディがバッカニアーズに戻り、49ersへの移籍はなくなったが、それでもサンフランシスコでの試合が予定されている。45歳でこれら若いスター選手たちと高いレベルで競い合うことで、ブレイディの過去に例を見ない伝説に新たな1ページが書き加えられることになる

負け組:NFCの有力チーム

前述したカロライナ・パンサーズに加え、アトランタ・ファルコンズ、ニューオーリンズ・セインツら、NFC南地区からプレーオフ進出を目論んでいた他チームにとっては痛恨のニュースだ。ブレイディとバッカニアーズはこの再建中のチームばかりの地区をふたたび独走することになるだろう。スーパーボウル連覇を狙うロサンゼルス・ラムズはパッカーズや49ersより大きな壁に立ち向かわなくてはならない。プレーオフでの勝利から遠ざかっているダラス・カウボーイズも、ブレイディがポストシーズンに戻ってくることを歓迎はできないだろう。

AFCは強力なチームと大物クォーターバックたちがひしめき、さらに予想が難しい。昨シーズンのバロウとシンシナティ・ベンガルズがその良い例だ。NFCでは、バッカニアーズがふたたびカンファレンス制覇の最有力候補になることには疑いの余地はない。ブレイディが決断を下したとき、そのことを知っていたに違いない。

(翻訳:角谷剛)

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Vinnie Iyer


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Vinnie Iyer, has been with TSN since 1999, not long after graduating from Northwestern University’s Medill School of Journalism. He has produced NFL content for more than 20 years, turning his attention to full-time writing in 2007. A native of St. Louis, Mo. but now a long-time resident of Charlotte, N.C. Vinnie’s top two professional sports teams are Cardinals and Blues, but he also carries purple pride for all things Northwestern Wildcats. He covers every aspect of the NFL for TSN including player evaluations, gambling and fantasy football, where he is a key contributor. Vinnie represents TSN as host of the “Locked On Fantasy Football” podcast on the Locked On network. Over his many years at TSN, he’s also written about MLB, NBA, NASCAR, college football, tennis, horse racing, film and television. His can’t-miss program remains “Jeopardy!”, where he was once a three-day champion and he is still avid about crossword puzzles and trivia games. When not watching sports or his favorite game show, Vinnie is probably watching a DC, Marvel or Star Wars-related TV or movie.