プレシーズンに向けて7月26日からキャンプインしたNFLの各チーム。ジョシュ・アレン擁するバッファロー・ビルズがブックメーカー各社から高評価を得るが、8月4日開幕のプレシーズン前時点におけるパワーランキングをスポーティングニュースが独自に分析し、ランク付けしていく。Vinnie Iyer記者がリポートする。
プレシーズン直前!補強に成功したチームが上昇
先週からNFLのトレーニングキャンプが各地で始まった。今週はホール・オブ・フェイム・ゲーム(訳者注:殿堂入りセレモニーに合わせて開催されるエキシビションゲーム。今年は8月4日のラスベガス・レイダース対ジャクソンビル・ジャガーズ戦)を皮切りにプレシーズンが開始される。2022年の公式シーズンに向けて、各チームの状態がどうなっているかを総括するには理想的なタイミングだ。
スーパーボウル57に到るまでにはまだまだ長い道のりがあるが、プレーオフ進出を目指すチームの基礎はこのトレーニングキャンプ期間中に築かれる。2022年ドラフト会議を終えた、現時点での全32チームの状況は以下の通りである。
NFL パワーランキング2022
ポジション略称:クォーターバック=QB、ランニングバック=RB、ワイドレシーバー=WB、タイトエンド=TE、ガード=G、オフェンシブタックル=OT、ディフェンシブタックル=DT、ディフェンシブエンド=DE、ラインバッカー=LB、コーナーバック=CB、セーフティ=S
1. バッファロー・ビルズ (前回の順位:2)
ビルズがどのスポーツブッカーからもスーパーボウル優勝候補の筆頭に挙げられていることには理由がある。攻撃陣はMVP候補のジョシュ・アレン(QB)を中心に戦力が充実し、ボン・ミラー(LB)がまとめ上げている守備陣はバランスが良い。すでにトレーニングキャンプでアレンが好調ぶりを見せつけていることも朗報である。
2. カンザスシティ・チーフス(1)
チーフスはWB陣からタイリーク・ヒルが抜けた穴をどう埋めるかが課題だ。しかし、それでもパトリック・マホームズ(QB)、トラビス・ケルシー(TE)ら、攻撃陣は多士済々である。守備陣は少々戦力を失ったが、その代わりになる選手には不足しないはずだ。
3. タンパベイ・バッカニアーズ (3)
バッカニアーズにはトム・ブレイディ(QB)が戻ってきた。NFCカンファレンスを制し、3シーズンで2回目となるスーパーボウル進出を果たす可能性は非常に高い。ブレイディのパスを受けるレシーバー陣からはロブ・グロンコウスキー、ラン攻撃陣からはアントニオ・ブラウンズを失ったが、チームはそれに代わる最良の選択肢を見つけつつある。守備陣にはやや戦力に変化があったが、それでも世間の評判以上には強固である。
4. グリーンベイ・パッカーズ (4)
パッカーズもまた、MVP受賞者のアーロン・ロジャース(QB)からパスを受けるレシーバー陣の大きな立て直しを図っている。しかし、ロジャースとマット・ラフルアー(ヘッドコーチ)は充実したラン攻撃陣と積極性を増した守備陣のおかげで、今年もシーズン13勝を狙える状態にチームを作り上げている。弱体地区にあって、最も安定したチームであり、NFCチャンピオンシップの優勝候補である。
5. ロサンゼルス・ラムズ (5)
ラムズは守備陣で多くの戦力を失った。ボン・ミラー(LB)はその代表例だ。コーチ陣からも何人かを失い、マシュー・スタッフォード(QB)を盛り立てる攻撃陣の組み直しを行わざるを得なかった。それでもショーン・マクベイ(ヘッドコーチ)が率いるこのチームは、大きく沈みはしないだろう。なんと言っても、スーパーボウル覇者なのだ。とは言っても、NFC西地区を連覇することはもちろん簡単なことではない。
6. ロサンゼルス・チャージャーズ (6)
チャージャーズは守備陣にJ.C.ジャクソン(CB)とカリル・マック(LB)を加えたことで、ブランドン・ステイリー(ヘッドコーチ)のパズルは完成した。ジャスティン・ハーバート(QB)はデビューして最初の2シーズンを素晴らしい成績で終えた。今年はさらに破壊力を上げた攻撃陣を率いることになる。ロサンゼルスのもうひとつのチームであるチャージャーズがスーパーボウルに進出したとしても、誰も驚きはしないだろう。
7. サンフランシスコ・49ers (8)
49ersはトレイ・ランス(QB)を先発に起用することで、ジミー・ガロポロ(QB)の時代より浮上するだろう。2人とも好不調の波が大きいが、強力な攻撃ライン陣に助けられている。カイル・シャナハン(ヘッドコーチ)が作り上げたシステム下では、伝統的なラン攻撃陣も安定している。守備陣もパス攻撃への対策を強め、さらに強力になった。
8. ボルティモア・レイブンズ (9)
レイブンズは昨シーズンに守備陣を再構築することに苦しんだ。しかし今年は課題のパスラッシュは克服され、NFLでも屈指の第2列を持つようになった。ラン攻撃に強いラマー・ジャクソン(QB)らの攻撃陣も強化され、より上手く機能するだろう。
9. ダラス・カウボーイズ (7)
カウボーイズにとって、ダック・プレスコット(QB)が足首の故障が癒え、契約上の懸念も払しょくされたことは朗報である。攻撃ライン陣も補強され、ケレン・ムーア(攻撃コーディネーター)はより優れた戦力を与えられた。守備陣は昨シーズンに派手なプレイが目立ったが、より安定した方向へ移行することが求められている。
10. シンシナティ・ベンガルズ (11)
ベンガルズは昨年、激戦のAFCカンファレンスを勝ち抜いた。若きスター、ジョー・バロウ(QB)の活躍は目覚ましかった。戦力は昨年から大きく変わっていないが、その代わり目立った補強をオフシーズンに行うこともなかった。それでも攻撃ライン陣を強化したことは評価できる。AFC北地区は対照的なスタイルのベンガルズとレイブンズの2強が激しい戦いを繰り広げるだろう。
11. デンバー・ブロンコス (12)
ブロンコスはオフシーズンに最大の補強に成功した。ラッセル・ウィルソン(QB)をトレードで獲得したのだ。キャンプでは故障が多かったレシーバー陣とウィルソンの連携を図ることが重要な課題になる。就任1年目のナサニエル・ハケット(ヘッドコーチ)とジャスティン・アウテン(攻撃コーディネーター)の戦略がチームに浸透するかも大きなカギだ。前ヘッドコーチのビック・ファンジオ氏がチームを去った後の守備陣の立て直しも急務だ。このチームには才能ある選手は多い。それでもAFC西地区はリーグきっての激戦地区だ。そのなかにあって、ブロンコスは第3番目のチームに留まると思われる。
12. インディアナポリス・コルツ (13)
コルツは今ではリーグ最弱と思われるAFC南地区ではトップを走るチームだ。マット・ライアン(QB)を獲得したことで、ジョナサン・テイラー (RB)を中心にしたラン攻撃に厚みを加えることができる。安定した守備陣が調子を崩さなければ、フランク・ライク(ヘッドコーチ)の意図は成功するだろう。
13. フィラデルフィア・イーグルス (17)
イーグルスは昨シーズンに予想外の躍進でプレーオフ進出を果たした。ジェイレン・ハーツ(QB)を中心に、強力なラン攻撃陣とオールラウンドな守備陣の力が目立った。ニック・シリアニ(ヘッドコーチ)の指揮下で、基本的な戦力が機能していたのだ。今シーズンは攻守両面に新たな戦力が加わった。A.J. ブラウン(WR)の加入はその代表例だ。NFC東地区でカウボーイズを脅かす存在になるだろう。
14. クリーブランド・ブラウンズ (10)
ブラウンズは問題に直面している。新たに獲得したデショーン・ワトソン(QB)に、シーズン最初の6試合に出場停止処分が下されたのだ。そうなると、昨シーズンと似たチームにならざるを得ないだろう。ラン攻撃と守備陣に頼るスタイルだ。昨シーズンは不本意な成績で終わったが、今年もそうなると予想するしかない。
15. マイアミ・ドルフィンズ (16)
ドルフィンズはダークホース的な存在だ。トゥア・タゴバイロア(QB)を中心とした攻撃陣は大掛かりな補強に成功した。新ヘッドコーチのマイク・マクダニエルの戦略にタゴバイロアがフィットするかが最大の疑問だ。守備陣の戦力は充実しているが、前ヘッドコーチのブライアン・フローレスがチームを去った今、ブロンコスと似たような混乱が待ち受けているかもしれない。
16. アリゾナ・カーディナルス (18)
カーディナルスはカイラー・マレー(QB)との契約にこぎつけ、なんとかチームに繋ぎ止めることができた。マレーには契約に相応しい超越的なシーズン成績を挙げることが求められる。とくに以前のようにラン攻撃を使わないことは気がかりだ。守備陣には若い選手が多く、有効な補強はできていない。
17. テネシー・タイタンズ (15)
タイタンズは昨シーズン後半、デリック・ヘンリー(RB)とライアン・タネヒル(QB)が調子を落とした。今も車輪が外れたままの状態に見える。守備陣の強化は必要であるし、レシーバー陣も新たな布陣への対応を迫られている。
18. ニューイングランド・ペイトリオッツ (19)
マック・ジョーンズ(QB)はトレーニングキャンプでビル・ベリチック(ヘッドコーチ)から多くの賛辞を受けている。しかし、パス能力は相変わらず不足しているので、今シーズンもラッシュを多用した攻撃に頼ることになりそうだ。ジョシュ・マクダニエルズ(前攻撃コーディネーター)を失ったことも大きな影響があるだろう。守備陣は今年も勝つための重要なカギになる。
19. ラスベガス・レイダース (20)
レイダースはジョシュ・マクダニエルズを新ヘッドコーチに迎えた。ダバンテ・アダムス(WR)を獲得し、デレック・カー(QB)とのペアを実現させるなど、攻撃力は大きく強化された。ただ攻撃ライン陣には課題が残る。守備陣もマックス・クロスビー(DE)以外の戦力を多く必要としている。
20. ピッツバーグ・スティーラーズ (15)
スティーラーズはパスに対する優秀な守備力を持つ。このことはナジー・ハリス(RB)をより活かせるようになるはずだ。強敵がひしめくAFC北地区で上位に食い込むには、ラン攻撃に対する守備力とパス攻撃が課題だ。ミッチェル・トゥルビスキー(QB)になるにせよ、新人のケニー・ピケット(QB)になるにせよ、QBが水準以上の活躍をすることはさらに大きな課題となる。
21. ニューオーリンズ・セインツ (21)
セインツは攻撃を重視した前ヘッドコーチのショーン・ペイトン氏がチームを去り、新ヘッドコーチに就任したデニス・アレンは守備に重きを置くコーチだ。チーム戦略は大きく変わるだろう。守備陣の戦力は全体的に揃っている。攻撃陣はあまり戦力的に期待できない。故障が癒えたジェイミス・ウィンストン(QB)の積極的なパス攻撃に大きく頼ることになるだろう。
22. ミネソタ・バイキングス (22)
バイキングスは攻撃を重視するケビン・オコンネルを新ヘッドコーチとして迎えた。カーク・カズンズ(QB)、ジャスティン・ジェファーソン(WB)、ダルビン・クック(RB)といった面々はワイルドカード枠争いに加わるには十分な顔ぶれだ。しかし、守備陣が課題になるだろう。故障明けのダニエル・ハンター(LB)がかつての圧倒的な力を発揮できるかがカギだ。
23. ワシントン・コマンダース (23)
コマンダースはカーソン・ウェンツ(QB)がスコット・ターナー(攻撃コーディネーター)のシステムで機能することを祈っている。そして円熟味を増したテリー・マクローリン(WR)と新人のジャハン・ドットソン(WR)を活用したパス攻撃に活路を見出したい考えだ。守備陣の立て直しも急務であるが、それにはチェイス・ヤング(DE)がフルで復帰することが必須である。
24. デトロイト・ライオンズ (31)
ライオンズは低迷した昨シーズンから大きく飛躍することを予想されるチームの最右翼だ。ダン・キャンベル(ヘッドコーチ)は常に激しい指揮をとる。ジャレッド・ゴフ(QB)の周りの攻撃陣は突然に強化された。守備陣にはやや問題が残り、それが弱体地区のNFC北地区で3位より上に浮上するための足かせになるだろう。
25. ニューヨーク・ジェッツ (24)
ジェッツはライオンズのAFC東地区バージョンだ。同地区内の他チームが大きな話題をさらうおかげで、このチームは目立たなくなってしまっている。しかし、ザック・ウィルソン(QB)と周りの攻撃陣、そしてロバート・サレー(ヘッドコーチ)が好む守備システムの改善は静かに進んでいるようだ。プレシーズンの出来に注目したい。あるいはドルフィンズやペイトリオッツを脅かすかもしれない。
26. ニューヨーク・ジャイアンツ (29)
ニューヨークにあるもうひとつのチーム、ジャイアンツはブライアン・デイボール(新ヘッドコーチ)とマイク・カフカ(新攻撃コーディネーター)の指揮下で攻撃陣の強化に成功し、守備陣も戦力を増やしつつある。NFC東地区でどれだけ上に行くことができるかは、ダニエル・ジョーンズ(QB)の出来にかかっている。
27. カロライナ・パンサーズ (28)
パンサーズはベイカー・メイフィールド(QB)を獲得し、サム・ダーノルド(QB)に代わって、より安定した先発QBとして定着することを期待している。しかし、それ以外の攻撃陣には健康や信頼性に難がある。守備陣は所々に逸材を見出すことはできるが、全体として機能させるためには時間が足らない。
28. シカゴ・ベアーズ (26)
ジャスティン・フィールズ(QB)は攻撃ライン陣に恵まれていない。ベアーズはこの若いQBを活かすための戦力が足りないままだ。しかし、刷新されたコーチ陣はこの2年目の逸材をサポートするために最善の道を探るだろう。むしろチーム最大の問題は、ベアーズには珍しく、守備に関わるすべてだ。
29. シアトル・シーホークス (25)
シーホークスはラッセル・ウィルソン(QB)をトレードで失い、ランを中心とした攻撃スタイルへ移行しようとしている。そのことから来る混乱は小さいように見えるが、むしろ守備陣の問題がチーム再建を阻む原因になるかもしれない。
30. ジャクソンビル・ジャガーズ (30)
ジャガーズはアーバン・マイヤー(前ヘッドコーチ)がチームを去った後、ゼロからのやり直しに着手している。ダグ・ペダーソン(現ヘッドコーチ)には、世代きっての逸材であるトレバー・ローレンス(QB)を正しく導き、チームの攻撃力を強化することが期待されている。しかし、それには時間がかかる。守備陣は新たな戦力が加わり始めたばかりだ。
31. アトランタ・ファルコンズ (27)
ファルコンズはマット・ライアン(QB)をトレード放出し、そのポジションとパスを受けるレシーバー陣の再建に力を注いでいる。守備陣も何人かの戦力を失い、その穴を埋めるための課題が残ったままだ。残念なことだが、就任2年目のアーサー・スミス(ヘッドコーチ)にとっては非常に厳しいシーズンになりそうだ。NFCのカンファレンス全体最下位となる可能性は高い。
32. ヒューストン・テキサンズ (32)
テキサンズはデービス・ミルズ(QB)に大きく頼ろうとしている。ラビー・スミスをヘッドコーチに昇格させ、攻撃面でのテコ入れも進んでいる。しかし、守備陣は手つかずのままだ。全体で見ると、デショーン・ワトソン(QB)を失った今、テキサンズはリーグで最も混乱したチームに留まっている。
原文:NFL power rankings: Bills look Super Bowl-serious at top; 49ers, Broncos, Eagles on the rise to start preseason
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部
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