2022年NFLコンバインが始まった。NFLファンは今年もドラフト候補生たちが様々なワークアウトに挑む姿をみて、心を躍らせている。
2022年コンバインには324人の選手が参加する。そのほとんどの選手がリーグが用意したワークアウトとドリルに挑むことになる。エヴァン・ニール、マット・コラール、デレク・スティングリーを始めとした何人かのトップ有望株選手たちはコンバインではなく、各大学が主催するプロ・デーでスカウトにアピールする。それでもNFL各チームが2022年ドラフト候補生たちの能力を測定する場として、コンバインが持つ意味は依然として大きい。
しかし、NFL各チームはこれらのワークアウトから何を知ることができるのだろうか。もちろん、フィールド上のドリルは選手たちの走力、ブロックやパスの能力、その他をみせてくれる(選手たちは防具やユニフォームではなく、Tシャツに短パンの姿であるのだが)。
しかし、フットボールスキルではなく、運動能力のテストはドラフト候補生たちの評価にどう使われるのか。NFLコンバイン期間中、多くのファンがその疑問を頭に思い浮かべるだろう。
各ドリルはドラフト候補生たちの運動特性を試すために作られている。そこでの数値が試合の動画でみられるプレイと合致するかを確認することが目的だ。もしそれらが合致した場合、チームはそれまでの評価に基づいたドラフト戦略を進めることができる。もし合致しない場合、チームはもう一度ドラフト候補生たちの動画を見直し、再評価をすることになる。
以下はコンバインでの運動能力テスト種目のそれぞれの内容とNFLチームが何をそれらに見出しているかをまとめたものだ。
40ヤード(約37メートル)走
40ヤード走はNFLコンバイン種目の中でもっともファンに人気が高いものだ。内容がシンプルで理解しやすいことに加え、選手を人気者にしやすいひとつの能力を測ることができるからだ。それは"スピード"である。
そう、40ヤード走は選手たちの直線トップスピードがNFLレベルであるかを試すためのテストである。ワイドレシーバーにとっては特に重要な種目だ。彼らはフィールドの広がった部分で試合を決めるプレイを求められるからだ。速ければ速いほど、ディフェンスを置き去りにすることができる。
ディフェンシブ・バックスもトップ有望株と認められるには40ヤード走で好タイムを出すことが必要だ。コーナーを守る選手は相手レシーバーのスピードについていかなくてはならないし、セイフティたちはパスを防ぐ反応の速さとスピードが求められるからだ。従って、コーナーとセイフティのポジションを守る選手たちの40ヤード走の記録は厳しくチェックされ、このタイムが遅い選手はドラフトの指名順位が下がることもしばしば起こる。
40ヤード走のタイムに加え、チームは10ヤードごとのスプリットタイムにも注目する。なぜなら、それがその選手の加速力、つまりその選手が爆発的なスピードをどれだけ持っているかをを示すからだ。
ベンチプレス
ベンチプレスもまたNFLコンバインで長く用いられてきた評価基準である。ファンがイメージする大きくて強いアメフト選手の像にも合致する。225パウンド(約100キロ)のバーベルを上下させ、選手が待つ上半身の筋力を測定することが目的だ。
ベンチプレスの重要性はポジションによっては低くなる。別の言い方をすれば、このテストは攻撃及び守備ラインマンやタイトエンドの力強さを測定するには依然として重要である。コーナーバックやレシーバーにとっても、少しは関係がある。密集した状態でのプレスやパスキャッチへのプレッシャーにどれだけ対抗できるかが分かるからだ。
よく誤解されることだが、ベンチプレスの挙上回数と腕の長さの間にはそれほどの相関性はない。腕の短い選手はベンチプレスではバーベルを上下させる距離が短くなるので、その分だけ有利だと多くの人は想像している。しかし、多くの研究が、ベンチプレスを成功させるカギは腕の長さではなく、筋肉量にあると証明している。
3コーンドリル
3コーンドリルとは選手が動く方向を素早く変えるアジリティ能力に関連したテストである。選手はひとつめと2つめのコーン間の直線を往復し、次に2つめ、3つめのコーンを回って、元の位置に戻る。そのタイムを測る。
3コーンドリルは選手がコーン間を走る間にどれだけ素早く方向を変え、また加速し、そして屈むことができるかをみるものである。この能力はレシーバーにとって重要である。足を素早く動かせる選手は、多くの場合優れたランナーでもある。
さらに、優れたラッシャーもこの部分に長けている。彼らはコーン周辺で素早く屈むことができる。なぜならその動きが攻撃タックルをかわす動きと同種類であるからだ。この2つのポジションは特にこのテスト結果が重要になる。優秀とみなされるタイムは7秒以下だ。
20ヤード・シャトルラン
20ヤード・シャトルランは3コーンドリルよりやや簡単になる。選手はまず5ヤードを走り、逆方向に10ヤードを走り、また逆方向に5ヤードを走って、元の位置に戻る。
シャトルランはアジリティと瞬発力のテストである。特に守備陣の選手たちにとっては重要な種目だ。彼らは密集したスペースの中で、しかも非常に短い時間内でのプレイを要求される。そしてボールを奪うために素早く方向を変えながら動かなくてはいけない。20ヤード・シャトルランは選手がどれだけ素早くそれらをできるかを示すだけではなく、ボディ・コントロールのレベルも明らかにする。
このドリルはコーナーバックには特に重要である。レシーバーの動きに反応し、その裏をかかなくてはいけないからだ。ラインバッカ―にとっても重要である。ラン攻撃を止めるためのブロックに走るか、あるいはパスのカバーに回るか、瞬間的に判断を下して動かないといけない場面が多いからだ。
垂直跳び
多くの人は垂直跳びと言えば、レシーバー、コーナーバック、そしてタイトエンドを連想する。それ自体は理にかなっている。このテストは選手がどれだけ高くジャンプして、競った状況でボールをキャッチできるかを示すからである。
垂直跳びは選手がジャンプできる高さだけを示すものではない。下半身の筋力と瞬発力を測る上でも有効なテストだ。その意味ではベンチプレスとは対を成すものであり、この2つの記録を合わせることで、選手の全体的な筋力を見ることができる
そのため、垂直跳びはランニングバックと攻撃及び守備ラインマンに大きく関係してくる。ランニングバックは相手守備陣の穴をこじ開けなくてはいけない。それには脚の筋力は大きな役割を果たす。ラインマン、特に守備側は素早く、そして力強いことを要求される。それにも下半身の筋力は大きく関連する。
立ち幅跳び
立ち幅跳びの重要性は垂直跳びのそれと似ている。下半身の筋力と瞬発力を測るものだ。それに加えて、柔軟性とバランスも関係してくる。どちらも攻撃ラインマンには重要である。
より遠くへ跳べる攻撃ラインマンはタックルに長けている。このテストの記録が平均以下の選手は、より素早く瞬発力に長けた選手に対抗できない。そのため、NFLチームはこのテスト結果を、ラインマンを攻撃と守備に振り分ける際に用いることが多い。
また立ち幅跳びはランニングバックやレシーバーのような攻撃側選手たちの瞬発力を測るためにも有効なテストである。これらのポジションにはパワーと柔軟性は重要であるからだ。
(翻訳:角谷剛)