”膝つき抗議問題”のキャパニックがラスベガス・レイダースの練習に参加、5年ぶりのNFL復帰は実現するか

Jacob Camenker

”膝つき抗議問題”のキャパニックがラスベガス・レイダースの練習に参加、5年ぶりのNFL復帰は実現するか image

5月25日(日本時間26日)、ラスベガス・レイダースがコリン・キャパニックを練習に招待し、NFL界に大きな衝撃を与えた。

元サンフランシスコ・49ers(フォーティナイナーズ)の先発クォーターバック(以下QB)だったキャパニックが最後にNFLの試合に出場したのは2017年元旦のことである。その年の3月6日からは49ersのメンバー表からも姿を消した。

49ersでのキャリアを通じて、キャパニックの先発QBとしての戦績は28勝30敗である。キャリア初期は25勝14敗をマークし、プレイオフにも2回出場したが、その後のとくにキャリア最後の2シーズンは49ersは低迷した。

キャパニックはパスの正確性にやや難があった。パス成功率は59.8%である。しかし、30個のインターセプトに対して、72個のタッチダウンパスも決めている。ランでは合計で2300ヤードと13個のタッチダウンを記録し、キャリア通算の1プレイ平均ランヤードは6.1ヤードである。

2022年現在、キャパニックがどれだけの実力を持っているかを知ることは難しい。最後にプレイしてから5年もたっているのだ。今回の練習参加はキャパニックがNFLの試合から離れた5年あまりで最も復帰へと近づいた出来事だったと言えるだろう。

現時点でスポーティングニュースが把握しているキャパニックのレイダース練習参加とNFL復帰の可能性についての詳細は以下の通りである。

レイダース練習参加後のコリン・キャパニック最新情報

キャパニックは5月25日(同26日)にレイダースの練習に参加した。それを最初に報じたのは『NFLネットワーク』のイアン・ラパポート記者である。『スポーツ・イラストレイテッド』のアルバート・ブリアー記者によると、レイダースのヘッドコーチであるジョシュ・マクダニエルズとGMのデイブ・ジーグラーが2人ともその場に来ると見られていたということだ。

練習の詳細についてはまだ公表されていない。現在のところ、レイダースはキャパニックと契約を結んでおらず、練習時のパフォーマンスについても何もコメントしていない。

2017年NFLオフシーズンの早い段階で49ersから離れて以来、キャパニックがNFLチームの練習に参加するのは今回が初めてのことである。それ以外では2017年にシアトル・シーホークスを訪ねたことがあるだけだ。

2019年にNFLはシーズン途中でキャパニックのためにショーケースを開こうと企画したことがある。これはキャパニックが社会正義への姿勢が原因でリーグから遠ざけられているとの主張に対して、オーナーたちが歩み寄りを見せる意図があった。しかし、キャパニックはこのイベントが未公開であることとNFLが要求した免責同意書の内容に異議があったことを理由に挙げ、直前に参加をキャンセルした。

レイダースはキャパニックと契約するのか

現時点ではレイダースはキャパニックを練習に参加させただけで、契約は結んでいない。通常、チームは練習直後に選手と契約することはない。従って、レイダースが検討の結果、キャパニックをチームに加える可能性はまだ残っている。

もしレイダースがキャパニックをチームに加えたいとすれば、それはすでにオーナーのマーク・デイビス氏からの許可は得ている。デイビス氏はレイダースのチームスタッフがキャパニックを迎え入れるとすれば歓迎すると、ここ数年の間繰り返し述べてきたからだ。例えば、2022年NFLドラフトを前にして、デービス氏は『NBC スポーツ・ベイエリア』にこのようにコメントした。

「私はコリン・キャパニックを信じています。NFLのQBになるチャンスに相応しい人物だからです。私はそう確信しています。もし私たちのコーチ陣とGMが彼をチームのQBに迎えたいとしたら、私は彼を心から歓迎します」

レイダースのクォーターバック格付け

ランク 選手
1 デレック・カー
2 ジャレット・スティダム
3 ニック・モレンズ
4 チェイス・ガーバーズ

デレック・カーがレイダースのQBのなかではトップに位置している。そしてその定位置はしばらくの間は揺るがないだろう。2014年ドラフトで入団して以来、カーはチームの先発QBとして安定した成績を残してきた。4月には3年総額1億2150万ドル(約154億6700万円)の契約延長を結んでもいる。

現在のところ、カーの控えとして3人のQBをレイダースは抱えている。ジャレット・スティダム、ニック・モレンズ、そしてチェイス・ガーバーズである。スティダムはかつてニューイングランド・ペイトリオッツからドラフト4巡目指名を受け、マクダニエルズ(ヘッドコーチ)の攻撃システム内では最も経験豊富な選手であるが、十分な実績があるとは言えない。

モレンズは多くのチームを渡り歩いてきたが、先発QBとしての成績は5勝12敗である。ガーバーズはQB不足と考えられた年にドラフトで指名から漏れた新人である。この2人のどちらもカーの控えとしての期待が大きいとは言えない。

コリン・キャパニックは何歳か

コリン・キャパニックは34歳であり、2022年NFLシーズンの途中には35歳になる。NFL入りしたのは23歳のときで、2011年ドラフトで49ersから2巡目指名を受けた。最後にNFLでプレイしたときは29歳だった。

コリン・キャパニックが最後にNFLでプレイしたのはいつか

キャパニックが最後にNFLでプレイしたのは2017年1月1日である。49ersから先発出場し、シーホークスに23-25で敗れた。その試合でキャパニックは22本中17本のパスを成功させ、215ヤードと1個のタッチダウンをあげた。16ヤードをランで稼いだが、ファンブルも1個あった。

キャパニックの49ersとの契約は2017年3月3日まで残っていたが、自ら退団を選んだ。キャパニックが退団しなかった場合には49ersは解雇する方針だったため、キャパニックはフリーエージェントになることを選んだのだ。

キャパニックは2017年にシーホークスを訪ねているが、2022年にレイダースを訪れるまで、どのチームへの訪問も練習にも参加していない。すでに5シーズンを欠場しているが、キャパニックはトレーニングを継続して、NFL復帰のチャンスを我慢強く待ち続けてきた。

コリン・キャパニックがNFLでプレイしてこなかった訳とは

そもそもキャパニックが5年もの間、NFLでプレーする機会を失った理由は、”膝つき抗議問題”にある。2016年NFLシーズン途中、キャパニックは米国内の組織的人種差別と社会不正義へ抗議するために、国歌演奏の際に片膝を地面につけることを選んだ。

「私は黒人と有色人種を抑圧する国の国旗に向かって敬意を表するために起立はしない。私にとって、このことはフットボールより重大である。これを見て見ぬふりをすることは自分勝手になるだろう。路上では何人もの人が殺され、有給休暇を得て殺人の罪から逃れている人々がいる」とキャパニックはグリーンベイ・パッカーズとのプレシーズン試合が終了した後でNFL公式サイトのスティーブ・ワイシュ記者に言った。

2016年NFLシーズンの間、キャパニックの言動と政治的意見は大きな注目を集め、賛否両論を巻き起こした。

2017年オフシーズン、キャパニックは契約を延長するオプションを持っていたが、それを行使しなかった。そうした場合には49ersは解雇すると通告されていたためだ。それよりもキャパニックはフリーエージェントになることを選択した。

しかし、キャパニックの獲得に興味を示したのはシーホークスだけだった。キャパニックがそれ以外のチームを訪れることはなかった。その後、キャパニックはNFL機構とオーナーたちが政治的姿勢を理由に不当な迫害を受けているとの訴えを起こした。

ニュースサイト『FiveThirtyEight』はキャパニックを支持した。2017年8月の記事で「キャパニックが政治的信条を理由として不当に職を奪われていることは明らかだ」と述べ、同社の統計調査によるとキャパニックと同等の能力を持つQBがこれほど長い間チームに所属できなかった例はないとした。

「今年のオフシーズンで、平均以上のQBでキャパニックほど長く失業している選手は他にはいない。あえて比較するなら、昨オフシーズンにライアン・フィッツパトリックがニューヨーク・ジェッツとの契約がこじれたことがあるくらいだが、これはフィッツパトリックの方がチームに圧力をかけたわけだから、キャパニックのケースとは異なる」

そして、『Football Outsiders』のアーロン・シャッツ記者が指摘するように、キャパニックは29歳以上で200回以上のパスを成功させた翌シーズンに仕事を得られなかったNFL史上唯一のQBである。このようなことは、他のどのQBにも起きなかった。彼らがどれほど苦闘したとしても、である。

キャパニックはその後NFLとの訴訟をおよそ1000万ドル(約12億7000万円)で和解に応じた。しかし、この5年間でキャパニックを獲得しようとするNFLチームはこれまでにまったくなかった。今回のレイダースまで、トライアウトすら声がかからなかったのだ。

コリン・キャパニックの純資産

『Celebrity Net Worth』サイトによると、キャパニックには2000万ドル(約25億4000万円)の純資産があるとされる。『Spotrac.com』の試算では、キャパニックはこれまでにほぼ4350万ドル(約55億3000万円)の報酬を得ている。つまり、税金、経費、そして2016年以来プレイしていないことで、キャパニックの純資産は合計収入額より大きく目減りしている。

騒動後、キャパニックは(膝つき抗議を支持した)ナイキとの広告・スポンサー契約で大きな収入を得た。さらに2019年、NFLが(キャパニックとエリック・リードを排除するため)談合したとの訴訟の和解金で1000万ドル(約12億7000万円)を得た。

(翻訳:角谷剛)

▶アメフト観るならDAZNで。スマホやTVでスポーツをいつでも楽しもう

Jacob Camenker

Jacob Camenker Photo

Jacob Camenker first joined The Sporting News as a fantasy football intern in 2018 after his graduation from UMass. He became a full-time employee with TSN in 2021 and now serves as a senior content producer with a particular focus on the NFL. Jacob worked at NBC Sports Boston as a content producer from 2019 to 2021. He is an avid fan of the NFL Draft and ranked 10th in FantasyPros’ Mock Draft Accuracy metric in both 2021 and 2022.