2021年のオフシーズンにNFLは大きなスケジュール変更を行うことを決定した。レギュラーシーズンに各チームが戦う試合数を17試合に拡張したのだ。
NFLのシーズン試合数が増やされるのは、14試合制から16試合制に拡張された1978年以来のことだ。それ以後、NFLは43年に渡って16試合制でシーズンを行ってきた。
だが今年、NFLは試合数増加を再び行った。今年から始まる17試合制のレギュラーシーズンは2022年初頭にまで続くことになる。
NFLコミッショナーであるロジャー・グッデル氏はこの件について声明の中で以下のように述べている。
「これはNFLの歴史の中で記念すべき出来事です。選手たちとの団体労働協約とメディアとの合意に基づき、私たちはファンに今まで以上のNFL体験を提供することが可能になりました。各チームが17試合制でレギュラーシーズンを戦うことによる恩恵のひとつとして、私たちは世界に向けてこのスポーツを成長させ続けていくことができます」
NFLシーズン拡張について知っておくべき全てと、2021年シーズンに及ぼす影響を以下にまとめてみた。
なぜNFLは17試合制に拡張したのか?
カネが全てだ。以前の16試合制レギュラーシーズンと4試合制プレシーズンより、17試合制レギュラーシーズンと3試合制プレシーズンの方がもっとカネが儲かると、NFLのオーナーたちは考えたのだ。グッデル氏はそれを「成長」と表現した。
NFLは元々、17試合制にシーズンを拡張するオプションを団体労働協約に盛り込んでいた。ただ、そのオプションを行使するためには、メディアとの契約を新たに結ぶ必要があった。そしてNFL機構はシーズン拡張に関する契約手続きを2022シーズン前に完了することができた。
NFL選手会とオーナーたちが団体労働協約で合意していた以上、シーズン拡張はいつかは実現されなくてはいけない課題ではあった。だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オーナーたちが入場券と場内販売の大幅な減収を余儀なくされたことによって、その決断を下すタイミングも影響を受けた。
NFL17試合制シーズンの仕組み
プレシーズン
NFLがシーズン17試合制へ拡張することで、プレシーズンの日程も大きな変更を余儀なくされた。各チームがプレシーズンに戦う試合数が4試合から3試合になったのだ(殿堂入りセレモニーに合わせて行われるエキシビジョンゲームの参加チームのみは4試合)。
つまり、プレシーズンは少し短くなるが、それでもNFLのコーチ陣が選手たちを観察評価するための時間は十分に与えられている。近年はプレシーズン中に先発メンバーをプレシーズン期間中にまったく起用しないコーチまでいるくらいだ。2021年もロサンゼルス・チャージャーズの新ヘッドコーチ、ブランドン・ステイリーはクォーターバックのジャスティン・ハーバートや何人かの主力選手を、故障をさけるためにベンチに下げた。
先発メンバーの出場機会を減らすことは、NFLのコーチ陣が控え選手を観察評価する機会を増やすことに繋がる。従って、プレシーズンが短縮されたことは、各チームにとってさほどの大事ではない。むしろ主力選手がプレシーズン中に故障するリスクを減らすことができ、プラスに働くこともあるだろう。
レギュラーシーズン
言うまでもなく、レギュラーシーズンは従来に比べて1週間分長くなる。シーズン開幕時期は変わらないので、プレーオフの各シリーズがそれぞれ1週間ずつ後ろにずれることになる。その結果、今シーズンのスーパーボウルは2022年2月6日ではなく、2022年2月13日に行われる。
さらに、各チームのシーズン試合数が奇数になるため、ホーム試合とアウェー試合の均整が失われる。あるチームはホームで9試合、アウェーで8試合を戦い、別のチームはホームで8試合、アウェーで9試合になる。ホーム試合数が多いチームがそのシーズンはやや有利になるが、この試合比率は毎年調整される。
勝率が5割ちょうどになるチームも少なくなる。引き分けの試合が必ず必要で、シーズン戦績を8勝8敗1分けとしないといけないからだ。理論的には、それ以外の戦績でも勝率5割ちょうどは実現できるが、それには引き分けが3試合以上なければいけない。計算上なら、0勝0敗17分けでも勝率は5割ちょうどにはなる。
上に挙げたこと以外に、スケジュールそのものには大きな変化はない。ただ1試合多くなるだけだ。
NFLはバイウィーク(試合がない週)を増やすか?
答えはノーである。各チームは17試合制シーズン中に1回だけバイウィーク(試合がない週)を与えられる。
プレーオフは17試合制シーズンの影響を受けるか?
NFLのレギュラーシーズンは以前と同じ時期に開幕し、1週が追加される。そのためNFLプレーオフの各シリーズは1週間ずつ後ろにずれる。2月の第1日曜日に行われてきたスーパーボウルは、今後は2月の第2日曜日に行われる。
17試合制シーズンでNFL各チームは選手をより多く休養させることを選択できるか?
そのことは十分に予想できる。NFL選手らは多くの故障や疲労に見舞われる。シーズンが進むにつれ、各チームは選手たちの健康管理により慎重にならざるを得ない。プレーオフ進出の望みが消えたチームはなおさらだ。NFLは試合数が少ないので、あからさまな手抜きは考えにくい。だがシーズン終盤に入って、プレーオフ進出の望みが消えたチームが、従来より早い時期か長い時間、主力選手たちを休ませることはあるかもしれない。
NFLシーズン17週目の対戦組み合わせはどのように決められたか?
NFLシーズン17週目の対戦組み合わせを決める形式は比較的シンプルだ。AFC、NFCの両カンファレンスから地区を選んで組み合わせ、昨シーズン順位が同じチームを対戦させる、というものだ。第1位チームは別の第1位チームと、第2位チームは別の第2位チームと、という具合に。
2021年シーズンの地区は以下のように組み合わせが行われる。
- AFC 東地区 対 NFC東地区
- NFC 北地区 対 AFC 西地区
- NFC 南地区 対 AFC 南地区
- NFC 西地区 対 AFC 北地区
例えば、AFC 東地区1位だったバファロー・ビルズはNFC東地区で1位だったワシントン・フットボール・チームと対戦し、それぞれの地区で2位だったマイアミ・ドルフィンズとニューヨーク・ジャイアンツが対戦する。3位チームはニューイングランド・ペイトリオッツとダラス・カウボーイズの組み合わせだ。17週目の対戦組み合わせはこの方式で決定された。
NFLシーズンの他の16週の対戦組み合わせはどのように決められるか?
NFLは16週の各対戦カードを決定するために以下の形式を長い間採用している。
- 同カンファレンス、同地区内の対戦相手と6試合(ホーム&アウェー)
- 別カンファレンスのある地区の対戦相手と計4試合。対戦する地区は1シーズンごとにローテーションする
- 同カンファレンスの別地区の対戦相手と計4試合。対戦する地区は1シーズンごとにローテーションする
- 同カンファレンス内の別地区で前シーズンの地区順位が同じ対戦相手と計2試合(例:AFC東地区第3位チームがAFC北地区第3位チームと対戦する)
NFLは将来18試合制に拡張するか?
あるいはそうかもしれないが、少なくとも2030年シーズン終了までには起きないだろう。NFL団体労働協約はオーナーたちに17試合制へ拡張する権利を与えたが、それ以上の拡張は選手会との交渉が必要になる。現在でもすべての選手たちが17試合制に賛成しているわけではないことを考えると、18試合制への更なる拡張が今後10年のうちに実現することは現実的ではないように思える。
もっともNFL機構は18試合制のアイデアを好むかもしれない。各チームのシーズン試合数が偶数に戻ることで、ホームとアウェーの試合比率をまた9試合ずつの等分にすることができるからだ。さらに、18試合目を追加することによって、シーズンをもう1週間延ばすと、ほとんどの年でスーパーボウルを米国の祝日である「大統領誕生日」の前日に行うこともできる。
NFL機構はこれまでにもスーパーボウルを2月の第3月曜日である大統領誕生日の前日に行いたい希望を明らかにしていた。現行の団体労働協約期間においては、それは2027年には実現し、その年のスーパーボウルは2月14日に行われる。だがもしNFLが1週間を追加すれば、それはほぼ毎年のように実現できることになる。
(翻訳:角谷剛)
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