衰退するNFL、人気上昇のNBA 明暗を分けたのは何か?【第4回】

Michael McCarthy

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#MeToo(ミートゥー)運動の衝動も忘れてはいけないとラトガース大学のミラー教授は警告した。マンジールやハーディーといった新旧のNFLのスター選手が、妻や彼女に暴力を振るったり脅迫したことが明らかとなり、NFLはうんざりした女性ファンをさらに失っているという。

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「女性たちはNFLの内部にこうした犯罪で告発された人々がいることを知っており、彼女たちはそういったことを一切を望んでいません」。ミラー教授はそう話した。

メディアの言うことを常に真に受ける人々は、プロフットボールの楽しさを失ってしまった。脳震とうによる訴訟や慢性外傷性脳症の脅威は、これからもフットボール界を死神のようにさまよい続ける。現役および元NFL選手の家庭内暴力やその他の事件による逮捕に関しては言うまでもない。また、新しいヘルメットルールやキャッチを規定するルールに関する退屈で馬鹿げた議論も多く存在する。

グリーンバーグもESPN「ゲット・アップ!」にて今夏、以下のように述べている。「実際、我々が交わしたフットボールに関する会話はすべて容赦なくどんよりとしたものだった。NFLから出てくる悪いニュースには終わりがない」。

それには一理ある。しかし、NFLやNFLの選手に関しても良いニュースはたくさんある。もしもメディアがそれを取り上げればの話だが。しかし、現状ではNFLは良いことをせず、NBAは悪いことをしないと見られているようだ。

NFLの支持者もこのダブルスタンダードの存在に気付いている。エレガントなNBAを称賛しNFLの「Toxic Masculinity(有害な男らしさ)」を見下すことが流行となっているのだ。

国歌斉唱中に抗議しないようにとNFLが臆しながら選手たちに要請したとき、批評家たちはこれが米憲法修正第1条で保障された権利を犯しているのではないかとしてリーグを苦しませた。一方、NBAは長年に渡って厳しい国歌斉唱ポリシーを採用してきた。NBAは全選手、コーチ、トレーナーに対して「国歌斉唱中はサイドラインまたはファウルライン上にて威厳ある態度で起立し、整列する」ことを要請している。

では、NBAが批判を浴びない一方で、なぜNFLは国歌に関する議論の中で悪者になっているのだろうか? ESPN「マンデー・ナイト・フットボール」の新アナウンサー、ジョー・テシートアもそれを疑問に思っている。

「数週間前、私はNFのオフィスにいた。私はリーグの重役に会って『ちょっと説明してほしいことがあるんですけど、NBAの方が厳しいルールを採用しているのにどうしてあなたたちばかりが批判の的になるのですか?』と話したよ」

アダム・シルバーがコミッショナーを務めるNBAは、NFLのプレーブックに記載されている「1年間を通して楽しめるスポーツになる方法」を参考にして必見のテレビ番組を作り出した。そこでは選手の動向やドラフト、FA、コート外でのコマーシャル、広告キャンペーンなど、四六時中放送が続けられている。

NBAのレギュラーシーズンの観客動員数は2017-2018シーズンはわずかに上昇し22,124,559人を記録した。これによって4年連続での動員数増加となり、リーグ初の2200万の大台を突破した。一方、NFLの2017シーズンの動員数は3.9パーセント減の16,423,853人だった。この数字は衝撃的なものだったが、チャージャーズがサンディエゴの6万人収容のスタジアムから、ロサンゼルス郊外にある収容人数3万人のスタジアムに一時的に本拠地を移したことによる影響も受けている。

熱烈なメディアの報道を基に判断するとNBAがNFLを浸食しているように見えるが、それは正しいのだろうか? もしテレビ視聴率で比較しようとするならば、両リーグはまだ戦いにもならない。NFLはアメリカのスポーツ界においては300パウンド級のゴリラであり、それはまだこの先何年も続くだろう。テレビ業界においてもNFLの試合の生放送は最も価値のある番組である。「ビッグバン・セオリー」のような台本のあるコメディーや「ウォーキング・デッド」のようなドラマでも太刀打ちできない。

FOXスポーツのリサーチ部門エグゼクティブ副プレジデントのマイケル・マルビヒルのツイートによると、NFLは2017年の全放送局の最も視聴された番組100選のうち71番組を占めていたという。全放送局の上位20番組のうち13番組はNFLの試合だった。NBC「サンデー・ナイト・フットボール」はプライムタイムの視聴率で7年連続1位に輝いた。また、FOXの日曜午後遅くの試合は全テレビ番組の中で9年連続1位を記録している。

広い視野から物事を見てみると、FOXの日曜午後遅くの試合の放送枠は平均してNBAファイナルよりも多くの視聴者数を記録しているのだ。FOXにて全米放送されるこうした試合は、昨年、平均で2270万人の視聴者を引き付けた。一方、スポーツ・メディア・ウォッチによると、ウォリアーズが4戦でキャバリアーズを片付けたNBAファイナルはABCで放送され、平均1770万人に視聴された。

よって、NFLにはテレビからの収益という大きなアドバンテージがある。NFLはCBS、NBC、FOX、ESPN、DirecTVといった提携テレビ局から放映権料として年間70憶ドルを手にしている。対するNBAは、ESPN、ABC、TNTからの26憶ドルだ。

「我々はNBAの視聴率を提示していないし、彼らもNFLの視聴率を提示していない。完全に明らかになっており、我々は人々に現実がどうなっているのかを誤解させないようにしている」。CBSアナウンサーのジム・ナンツはそう話した。「昨シーズンのスーパーボウルは視聴率が落ちた。新聞の見出しは『空が落ちてきた』だった。視聴率は43パーセント(43.1)もあった。どんなスポーツであれ、この43パーセントという数字を羨ましがる人は大勢いるだろう」。

確かにスーパーボウルはテレビ的に落ち込んだが、NBAも2018NBAファイナル期間中に独自の問題を抱えていた。

支配的なウォリアーズが4年間で3度目のNBAタイトルを獲得した(しかも4年連続でカリーのウォリアーズとジェームズのキャバリアーズが対戦した)ことによって、視聴者は倦怠感を抱き始めてしまったのだ。ウォリアーズがキャバリアーズを負かしシリーズを制した第4戦は11.2パーセントの視聴率記録し、昨年の第4戦から11パーセントも数字を落とした。

タイトルとは縁のないチームのファンたちがこれからも引き続きウォリアーズ王朝の試合にチャンネルを合わせるだろうか? その答えはいずれ分かる。

それでも、2018-19シーズンの開幕を10月16日に控えたNBAがうまくいっていることは間違いない。

北米、ヨーロッパ、アジア、アフリカの42の国と地域から集まった108人の外国人選手が所属するNBAは、アメリカ中心のNFLよりも今やはるかに「グローバル」なスポーツだ。そう話すのはTNTのケニー・「ザ・ジェット」・スミスだ。ソーシャルメディアを通じて世界が小さくなるにつれてNBAの到達範囲は大きくなっているという。

「ソーシャルメディアによって中国からブダペスト、ビバリーヒルズまで世界中の人々が自分のいる地域から選手たちを追うことができる。NBAのグローバル化が、今日のNBAを作ったんだ」とスミスはそう言った。「レブロン・ジェームズがスペインに行けば、ファンにもみくちゃにされる。トム・ブレイディがスペインでもみくちゃにされるかは分からない」。

NBAにはNFLより“もっと広い”文化があると彼は付け加えた。「人生は懐中電灯か投光器で見ることができる。それらは両方とも明かりだが、NBAは投光器を使って見ることを選んでいると思う」。

しかし自身がハーバード大の元バスケットボールプレーヤーであるCBSのブラウンは、NBAのマジック/バードの時代以前を覚えている年齢である。その頃、苦戦していたNBAは決勝戦の録画放送を余儀なくされていた。

「(NBAは)ミレニアル世代、つまり18から35歳へのマーケティングと流行の先取りに成功していると思う。彼らはそれにおいて称賛されるべきだよ、確実にね」とブラウンは語った。「だがNFLがいまだ優勢なスポーツであり続けているんだ」。

ESPNの番組制作の取締役副社長であるバーク・マグナスは、ネットワークの10億ドルの権利の契約を両リーグと交わし運営している。この2つのリーグは彼ら独自の道を構築していると彼は話した。

NFLは何十年間も“信じられないほどの”テレビの上昇気流に乗っていたと彼は話す。だが、2015年の絶頂期にすでに観客離れの要素があった。昨シーズン、NFLはロジャースやワット、デショーン・ワトソンのような視聴率を上げる選手をケガで欠いていた。今その波に乗るのはNBAの番だとマグナスは語った。

「NBAは世界規模のゲームだ。国際的な関心があるし、盛り上がってきているように感じる」と彼は言う。「試合が実にいい。選手たちはおもしろく、興味をそそる素晴らしい人物たちだ。だからこの先の10年は同様のものを見られるだろう。彼らの話は、彼らならではのものだしね」。

しかし2年の不調のあとNFLから手を引こうとしている人たちは、現実を把握する必要がある、とマグナスは言う。新社長のジミー・ピタロ氏の下、ESPNはNFLとのぎくしゃくした関係を改善するためにできることは何でもしている。NFLの試合の権利なしで荒野をさまようのはどうだったかをCBSとNBCの昔の幹部たちに聞いてみるといい。

「NFLはいまだ圧倒的に頂点に君臨している」とマグナスは言った。

(完)

原文:Hearing footsteps? How the NBA is up and NFL is down

翻訳:日本映像翻訳アカデミー


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Michael McCarthy is an award-winning journalist who covers Sports Meda, Business and Marketing for Sporting News. McCarthy’s work has appeared in The New York Times, Sports Illustrated, The Wall Street Journal, CNBC.com, Newsday, USA TODAY and Adweek.