衰退するNFL、人気上昇のNBA 明暗を分けたのは何か?【第2回】

Michael McCarthy

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スポーツビジネスの専門家であるラトガース大学のスティーブ・ミラー教授によると、NBAの強みは、その視聴者層にあるという。

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スポーツ・ビジネス・ジャーナルによると、2016年のNBA TVの視聴者の平均年齢は42歳であり、これに対してNFLは50歳、MLBは57歳だった。メディアコンサルタントのブラッド・アドゲイト氏曰く、18-34歳と18-49歳という広告主が求める年齢層の視聴率は、昨年それぞれ14パーセントと15パーセントずつ上昇したという。

「NBAとNFLの視聴者の平均年齢を見てください」。ミラー教授はそう話した。「NBAはマジック・ジョンソンとラリー・バード以来秘伝のソースを持ち続けています。彼らは自リーグを中産階級向けの横柄なリーグとして売り出していません。NBAはすべての人のためのリーグということを売りにしているのです」

激しいタックルをするフットボールから、子供たちを遠ざけようとする親も多い。11人制フットボールをする高校生の割合は2年連続で下がっている。トロイ・エイクマン、テリー・ブラッドショー、ブレット・ファーヴといった元NFLのスター選手たちでさえ、自分の息子たちにフットボールをプレーさせることにためらいを感じると話している。

NFLとNBAの両リーグは、自リーグを他のプロリーグと比較することを好まないとして今回のスポーティングニュースの記事に対するコメントを拒否した。そこで、スポーティングニュースはNBAの好調とNFLの不調の理由を探るべく、テレビ局関係者とスポーツビジネスの専門家に回答を求めた。

その中で最も多く語られた説となったのが以下の5つだ。

1.NFL選手たちによる抗議行動

キャパニックが49ersのサイドライン際で無言の抗議を始めてから2年がたった。しかし、先週起きたナイキとキャパニックの契約を巡る論争は、この問題がファンの間では未だに炎上中であることを示していた。SNSで「#BoycottNFL (ボイコットNFL)」を拡散させているファンたちは国歌斉唱中にすべての選手が起立するまで試合観戦をしないことを誓っており、その批判の矛先をナイキ社へと向けている。

長年ナイキの広告塔を務めてきたジェームズは、「毎日四六時中」ナイキと共に立ち向かうと話した。同じくナイキの広告塔であるテニス界のスーパースター、セリーナ・ウィリアムズも態度を明確にしたナイキ社を称賛した。「彼らは恐れていない。私はそれを多くの企業に対するとても力強い主張のように感じたわ」。彼女はそう話した。

NFLの選手たちは、この抗議行動はアメリカ国旗や警察官、米軍、退役軍人を侮辱するものではないと話しているが、その発言は何度話しても聞き入れられることはない。「#BoycottNFL」のファンたちは選手たちを駄々をこねる大富豪だと見なしており、この抗議を今は亡き英雄たちと彼らを愛する家族たちへの侮辱だと捉えている。巨大な国旗と上空を飛ぶ戦闘機と共に、超愛国的なNFLはこれまでの数十年間、自らを米軍の第六軍に近い存在として売り込んできた。抗議者を厳しく取り締まらなかったことによって、一部のファンはリーグに裏切られたように感じている。

ファンである彼らの中の誰かが「星条旗」の演奏中にビールを買いに行ってもトイレに行っても問題にはならない。トランプ大統領と同じく、彼らも選手たちがフットボールのユニフォームを着て気を付けの姿勢を取ることを望んでいるのだ。

NFL選手たちは過去2年間、国歌斉唱中に抗議をした。NBA選手はしていない。

この一点こそが、この期間における両リーグの最大の違いではないだろうか。そう話すのは元カウボーイズのタイトエンドであり現在は「マンデー・ナイト・フットボール」の新試合解説者を務めるジェイソン・ウィッテンだ。「その理由は国歌斉唱の感じ方にある思うよ。すべてはそこに結論付けられるだろう」。彼はそう話した。

ESPNのウィル・ケインもその意見に同意した。スポーツ番組「ファースト・テイク」に出演している彼は、NFLとNBA選手の社会的行動主義に対するファンたちの態度は彼らなりの「抗議方法」を要約したものだと考えている。

ケインは以下のように話した。「もしもレブロン・ジェームズや他のNBA選手が国歌斉唱の前に膝をついたら、同レベルの暴動が起こるに違いない。私はESPNでこのことを1年以上言い続けてきた。コリン・キャパニックの発言の中には同意できないものがいくつかある。また、中には私も同意でき、説明に値する発言もある。だが、(国歌斉唱の前に膝をつくという)抗議の方法は、多くの人に聞く耳を持たなくさせる行為だった」。

クイニピアック大学が行った全米世論調査は、抗議に対するファンたちの印象に人種間で大きな差があることを明らかにした。成人の白人で賛成しないと答えた割合は63パーセントで賛成が30パーセントなのに対し、成人の黒人は賛成すると答えた割合が74パーセントで賛成しない人々が17パーセントだった。「米国内の警察官の働き方」を認めるかについての全米調査においても、これと似た人種間の食い違いが見られた。白人アメリカ人は70パーセントが認め、17パーセントが認めなかったのに対して、黒人アメリカ人は67パーセントが認めず、24パーセントのみが認めた。

2.NBAは多くのスター選手の力を手に入れた。

スポーツはスターがいなければ成り立たない。現在、NBA以上に魅力的なスーパースターたちがいるリーグは存在しない。レブロン、ステフィン、ラス(ラッセル・ウェストブルック)といった選手が揃うなんて話がうま過ぎると言ってもいい。彼らはワールドクラスのアスリートであり、ファッションアイコンであり、製品の広告塔だ。また、彼らは非の打ちどころがない夫であり、父親だ。そして、マイケル・ジョーダンのような以前のNBAのスーパースターたちとは違って、彼らは政治的主張にも積極的だ。

「今のNBAは“熱い”。NBAには多くの偉人と偉大なストーリーラインが存在する」。そう話すのはESPNのマイク・グリーンバーグだ。「注目を浴びる選手はほぼ毎年所属チームを変えている。以前の私はそれを嫌っていただろう。でも、実際にはそれによってリーグがかなり魅力的になることが分かったんだ」。

NFLにも、社会的活動を勢力的に行うなど模範的な選手が多数所属している。テキサンズのJ.J.ワットはハリケーン・ハービーの被災地救済のために単独で数百万ドルの寄付金を募り、「ウォルター・ペイトンNFLマン・オブ・ザ・イヤー賞」を受賞した。同賞の前年度受賞者であるラリー・フィッツジェラルドのファーストダウン基金は、幼稚園児から12年生(高校3年生)までの読書効率を向上させている。また、フィッツジェラルドはジョン・マケイン上院議員の追悼式での弔辞でも称賛を集めた。しかし、メディアの報道はジョニー・マンジール、グレッグ・ハーディ、リッチー・インコグニートといったNFLの悪党たちに焦点を当てる傾向がある。

NFL最大のスター、トム・ブレイディは現在41歳。NFLは一番の人気選手だったマニングを2016年3月の引退で失ったことを忘れてはいけない。Yahooスポーツのダン・ウェズゼルは、18シーズンで5度のMVP受賞者が引退した直後にNFLのテレビ視聴率が低下したことは偶然ではないと述べていた。

フォーチュン誌いわく、「レブロンのみならず、ヒューストン・ロケッツのジェームス・ハーデンや、ゴールデンステイト・ウォリアーズのステフィン・カリーといったカリスマ的メガスターたちによってNBAは活気づいている。議論の余地はあるかもしれないが、NFLのビッグネームたちは歳を取りすぎている、または若すぎると言えるだろう。そして、NBAは人気の高い文化との結びつきをますます強くしている。特にヒップホップとの関係は密接だ」。

ブレイディとマニングの両者がNFLを去るとなると、ニュートン、アーロン・ロジャース、ダック・プレスコット、アンドリュー・ラックといった若きスター選手たちが彼らの穴を埋めなくてはいけなくなる。オデル・ベッカム・ジュニアはしびれるほどの才能で、若いファンを興奮させる選手だ。そう話すのはCBS「ザ・NFL・トゥデイ」のプレゲームショーで司会を務めるジェームス・ブラウンだ。

チーフスから目を離してはいけない。CBSでNFLのメインアナウンサーを務めるジム・ナンツはシーズン開幕前にそう予言していた。彼らはNFLでも最もエキサイティングな若手選手2名を有している。ナンツはクォーターバックのパトリック・マホームズと俊足のワイドアウト、タイリーク・ヒルについてそう話した。そして実際に、ヒルは1試合で2本のタッチダウンパスを受け、パントリターンを成功させ、リーグの話題の中心となった。

多くのスポーツリーグは繁栄と衰退を繰り返している。NBAは、ジョーダンの引退と審判ティム・ドナヒーのスキャンダルを受けて終わったかと思われた。しかし、今のNBAは今後10年間はリーグを牽引するであろう若手スター選手を擁しており、ワクワクさせてくれている。NFLの破滅は1970年代から繰り返し予言されてきたが、彼らはいまだにナンバー1だ。

グリーンバーグは以下のように述べている。「NBAは今や様々な方法で非常に魅力的な商品だ。私が思うに、NFLはここ数年で少し価値を落としたように感じられる。ただの周期的なものかもしれないがね。今から3、4年後には『今のNFLは本当に上り調子だ。すばらしいストーリーラインが無数にあり、数多くの偉大な選手などすべてが揃っている』と言っている可能性もある。だから、現状も何とも言えない。私にとっては、NBAが他のどのリーグよりも熱いということを言いたいね」。

第3回へ続く)


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Michael McCarthy is an award-winning journalist who covers Sports Meda, Business and Marketing for Sporting News. McCarthy’s work has appeared in The New York Times, Sports Illustrated, The Wall Street Journal, CNBC.com, Newsday, USA TODAY and Adweek.